逃げ上手の若君

 「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」とコンスタントにスマッシュヒットを飛ばす松井優征先生の最新作は南北朝時代、北条時行を主役に持ってきた「逃げ上手の若君」です。

 天狗衆。恐るべき情報収集能力と情報伝達能力を誇る諜報集団。足利尊氏が京を落としたタイミングに合わせて挙兵し、鎌倉を挟撃できたのは彼等の暗躍のお蔭だとか。

 玄蕃は、自分を襲ったのはこの天狗衆であろうと推測します。彼等にかかれば長寿丸(時行)の正体も見抜いてしまうだろう、と。

 大戦は中止すべきだ、と進言する玄蕃。

 頼重も、時行がこのまま諏訪に留まれば死ぬ、と言う未来を見ていました。なるべく遠くへ逃げるが吉、と。

 そこで頼重は、前回諏訪に到着した(すぐ顔に出る)叔父さん、泰家と共に京の都へ向かうよう告げます。泰家はこの後、京の協力者と大戦の算段の打ち合わせを行う予定なのだそうで。敵もまさか北条の生き残り二人がお膝元の京にいるとは思わないだろう、人も多く紛れるのも容易いだろう、と泰家も賛成します。

 文化の最先端、人材も豊富な京の空気に触れる事で得るものは多いはず、と言う頼重の言葉に時行も乗り気です。

 そのまま出ていけば天狗衆に嗅ぎ付けられます。そこで頼重一計を案じます。偶然を装って館に火を放ち、延焼を防ぐ為に各地に使いを出して人手を募る、その使いにまぎれて逃者党のメンツと泰家がバラけて信濃を脱出。乱のアシがつく書類も一緒に焼却できる、一挙両得です。諏訪大社を見張っていた天狗衆の男も驚いています。

「意図的とすれば凄まじく打つ手が早い」

 で、逃者党が再集結していざ京へ、と馬を進めるのを見守る頼重…すぐ後ろで。

 いやあんた着いて来るなよwそれこそ天狗に見つかるw。最後までネタ振りを忘れない現人神でした。

 次回から京都です。ここから一月程で起きる大乱と言うのが中先代の乱でしょう。ついに時行が表舞台に出る秒読みが始まりました。松井先生が、この歴史を紐解いてもホントに逃げてばっかりの人物をどう描いて行くか、興味深いです。

 元々松井先生はすごくロジカルに作品を作る方のようで、「暗殺教室」の時も

「当時のジャンプに足りない要素を盛り込んだ」

と言うようなコメントをされていました。もちろんそれだけでヒットするマンガが描けるわけではありませんが、緻密に構成を考えるタイプである事は間違いないと思います。

 そんな松井先生なら、歴史に題材を取ってストーリーに落とし込んで行くのは得意技に違いありません。長寿丸くんの行く末を一緒になって見て行こうじゃありませんか。

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