最初の戦国武将、北条早雲の生涯を描く「新九郎奔る！」ゆうきまさみ先生の画力と構成力ですごい説得力で展開して行ってます。

　新九郎の姉、伊都が嫁いだ駿河守護、今川義忠が遠江を取るべく仕掛けた戦で討ち死に…しかも遠江守護はついこの間幕府側に寝返ったばかり、と言う非常にヤバい状況。伊都とその子龍王丸、亀は微妙な立場に置かれます。世継ぎをめぐって龍王丸派と義忠の従弟、麌新五郎範満派の二つにわかれ、駿河は権力抗争の真っ只中。伊都を助けるべく、幕府側交渉役として新九郎は駿河へ向かいます。小鹿側にはあの太田道灌がつき、交渉のテーブルには新九郎と道灌がつく事になります。まさに海千山千の道灌に四苦八苦しながら渡り合う新九郎。道灌の地元上杉家のゴタゴタを察知して引き延ばし策なども取って見ますが、ほぼ道灌の手の内。

　最終的に小鹿を当主代行、伊都とその家族は当主の館から退去して蟄居…などで収まったのですが、道灌はその場で懐から寸分違わぬ条件の書き付けを取り出します。

「落とし所はその辺りにしかござらぬでな」

　道灌最初から交渉の展開を見切っていました。新九郎は掌の上で踊っていただけですね。駿河御家騒動は収まりましたが、道灌と新九郎の格の違いが見せつけられた形です。

　最初の頃と比べると、荏原でのすったもんだも経験し、大分成長した新九郎ですが、トップクラスの人材に比べればまだまだのようですね。ここから室町幕府は加速度的に崩壊し、新九郎には負担がどんどんかかっていく事になると思います。彼がぶちギレ…もとい覚醒するのはいつになるのでしょうw。

　ゆうき先生の力量故か、各キャラクターの思惑が整理され、元来ややこしい関係が大分分かりやすくなっているのはありがたいですね。諡名の風習もあって似たような名前が多く、何となく読んでいると分からなくなってくるのは頂けませんが、こればっかりは固有名詞なので、なんともならないでしょうねw。