怪獣8号 6巻

 怪獣の力で怪獣に立ち向かう、ギリギリバトルの連続がアツい「怪獣8号」です。

 怪獣9号による品川襲撃。蟻型怪獣を操って、自身を2体に増やしてまで攻める目的は

「人間の手に墜ちた怪獣の力を怪獣の元に取戻ス」

 9号に出くわしたのは変身出来ないカフカ。すんでのところでキコルが割って入ってなんとか核を取られずに済みました。

 カフカが8号に変身できないのは9号の妨害だろうと予測したキコルは、9号を大破まで追い込む事で再生までの一瞬、妨害に隙が出来る、その瞬間に賭ける、と言う作戦を取ります。9号を倒すには8号のパワーがどうしても必要だ、と言う判断ですね。

 9号にボロボロにされながらも突っ込んで行くキコル。キコルの過去がここにオーバーラップします。キコルの母、四ノ宮ヒカリもまた防衛隊の隊員でした。ナンバーズ4を駈る第2部隊長。ですが帰宅した彼女がケガを負っていたのを見たキコルは、自分が防衛隊に入ってママを助ける、と約束します。

 が、それから然程間を置かずヒカリは命を落としてしまいます。怪獣6号との相討ちだったようですね。葬式の場でキコルは呟きます。

「ウソつき、ウソつき、私のウソつき…!!」

 キコルの基本はここなんですね。他人を責めるでなく、己の無力を怒り、ただただ積み重ねてきた。自分にも他人にも厳しいのは誰も犠牲にしたくないが故なのですね。

 宣言通り9号を切り刻むキコル。このチャンスにカフカは変身…出来ませんでした。

 功隊長と戦ったときに暴走した事、怪獣に取り込まれる事への怖れが変身を止めさせたのです。

 これを打開したのは、またもキコル。

「私を舐めるな」

「亜白隊長を、保科副隊長を、レノや同期のみんなを、何よりあんた自身を、防衛隊を舐めるな!!」

 「こんなすごい奴らを俺なんかが殺せるわけねーじゃねーか」立ち直ったカフカは8号に変身。一度乗っ取られた事で身体の使い方が前より分かるようになった、とパワーアップして9号を圧倒。そして分離したもう一体の9号も鳴海隊長とその専用装備、ナンバーズ1、相手の電気信号を読み取る機能で完封!

 …品川討伐戦終了かと思った瞬間、本部司令室に現れる3体目の9号!

「見つけタぞ、適合者と怪獣2号」

 9号の目的「強大な怪獣の力」とは、8号ではなくナンバーズ2とその適合者、功隊長だったのです。9号はさらに強くなっており、対して功隊長はカフカと一戦交えた後で消耗しており、何より戦士としてのピークは過ぎており、不利は否めません。

 ですが際限なく強くなる9号は逃がすわけにはいかない、何より防衛隊には素晴らしい次世代が育っている。

 功隊長は全てをかけて9号を殲滅する覚悟を決めます。それは妻ヒカリが6号に対してしたように。娘の前に9号を立たせないように。

 2号の最強攻撃、指向性エネルギー攻撃を連射して9号を焼き尽くさんとする功隊長。しかしギリギリで生き残った9号は功隊長をナンバーズ2ごと取り込もうと襲いかかります。

 カフカと鳴海隊長が司令室にたどり着いたとき、立っていたのは功隊長の方でしたが…こんな怖いコマはなかなか無いですね。

 6巻を通して見ると、四ノ宮一家の凄まじいまでの愛と献身を感じさせられます。功隊長の死戦に臨んでの覚悟。決して自暴自棄故ではないと思わせられるのは、次に連なる者達がいる、と言う確信からでしょうか。ヒカリの時は描写されていませんが、ほぼ同様の事があったんだろうな、と想像できます。それらを真っ直ぐ受け取ったキコルは新世代を背負って立つ人物になるに違いありません。

 …が、最後のコマでこれが全部反転する可能性が出てきました…。松本先生うますぎです。

 その時キコルを支えられるのはカフカだけですね。ガンバレおっさん!

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