紛争でしたら八田まで 9巻

 Dモーニングに移っても百合さんの実力と食欲は変わりません。「紛争でしたら八田まで」9巻ではアフリカ、マリからフランスへ向かいます。

 その前に提携しているS·P·Aの定例会に参加するためイギリスに立ち寄った百合。サヴィル·ロウの老舗の跡継ぎ娘、パトリシア·デジャルダンの依頼で彼氏のザックの浮気性調査をするハメに。

 …なんか「島を買って」とか頼まれて躊躇したから嫌われた、とか言ってます。普通はそんなもんホイホイ買ったりしませんねw。で、情報を総合した結果、ザックは「シーランド公国」を作ろうとしている事が分かります。その為にシーランドのパスポートを売り捌いているとか。つまり現状既成事実のない空手形。立派な偽造パスポートです。しかも買っているのはほぼ密入国者w。どう考えてもヤバい事をザックに納得させ、依頼は解決。報酬として百合はケブラー織り込みの、サヴィル·ロウデザイン防弾ジャケットと言うレア装備を手に入れます。これ後で役に立ちますw。

 百合の次の任地はマリ共和国。フランスでサッカー選手として活躍し、マリ現政権の官僚を父に持つバカリ·ケイタ。父が亡くなり、マリに戻って政治に参加しようとする彼の政策補佐が百合の仕事です。フランスで白人と結婚し、一子ジョンケを設けたバカリは人種的軋轢から別居、また終わりの見えないマリの民族対立に絶望し、政治に対する積極性を失っていました。

 バカリを政治家として御披露目するイベントにマリ出身で世界的な評価を受けるバンド「ザヘル·ターマンデン」が招待されていました。北部で独立闘争を起こしているトゥアレグ人のバンド。百合はバンドの中にテロ組織のメンバーが入り込んでいる事に気付きます。首都に入り込んでバカリを誘拐するプランは百合とフランス人傭兵のマチュによって阻止されましたが、息子ジョンケが拉致されてしまいます。

 バンドリーダーで穏健派であるアビディンは自身の村を人質に取られ協力を強制されていましたが、秘かに百合たちを手引きし、ジョンケの元まで誘導する役を駆って出てくれました。テロ組織のリーダー、メリクがいるトゥアレグ村までの道中、アビディンとの語らいで政治家として為すべき事を付かんで行くバカリ。

 テントを破壊したドサクサでジョンケを救出するバカリ。メリクは確保に迫ってきた百合を銃撃して逃亡を計ります。が、百合が着ていたのは件のケブラー入りジャケット!復活してメリクにエルボー落として確保!リーダーを失ったテロ組織は空中分解です。

 バカリはアビディンを北部とのパイプとして首都と繋ぎ、マリを変えて行く決意を持って記念式典に臨むのでした。

 百合はバカリから更に依頼を受けて、パリに向かいます。目的はバカリの妻、エロディとの離婚交渉。有名ワインメーカーの一人娘でワガママ放題のおバカセレブ…と言う評判でしたが、少々誤解があった様で。父親の移民嫌いや過保護のせいで外からは派手に見えていましたが、本人は大変リベラルで面倒見のいい人物でした。

 偶然知り合った移民3世のユセフがソフトターゲットテロ…無差別に自動車を突っ込ませる様なテロ…に共犯で巻き込まれそうになり、エロディは百合たちと共に身体を張って阻止に回ります。ユセフを誘った少年たちを糾弾しようとして彼等の腕を掴み、その細さに愕然とするエロディ。

「バカリを助けたんでしょ?その力を貸して!」

「何でもする!社交界も行かない!ブラッサンズ家を捨てろと言われたら捨てるから!」

 彼女の善性がよく分かりますね。これを受けて百合が知恵を出し始めるところで9巻は終わります。

「八田のチセイにおまかせを」

 今までになくエピソードの前後が繋がってましたね。国ごとの問題が単独で終わっておらず、遠い別の国まで影響を与えているのがリアルに感じられる、隙のない構成になっていると思います。

 百合さんウクライナにも行ってましたね。現実にも百合さんみたいな人がいれば昨今の戦争状態も少しは変わったのでしょうか…。

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