夢枕獏先生の「陰陽師」を伊藤勢先生がコミカライズ、という「荒野に獣、慟哭す」を力業で完結させた布陣で臨む「瀧夜叉姫」。もう安心感しかないです。
京の貴人たちの受ける呪詛払いを続けてきた安倍晴明。いつもつるんでいる(というか絡んでくる)源博雅中将の紹介で六孫王 源経基(源頼光のお祖父さん)の憑き物落としをする事に。大変強力な呪詛で、毎夜夢枕に女性が現れて違う部位を釘で貫いて帰って行くとか…。このジャパニーズホラーっぷりに伊藤先生の緻密な絵がマッチしてすげぇ怖いw。
話を聞いた段階で晴明にはアタリがついたようですが、
「憶測を安易に言の葉に乗せて自身にかけてしまう呪が最も厄介なのです」
博雅にも自分で考えてみろ、と促します。
博雅が他の怪事も繋げて考え始めた頃、賀茂保憲から知らせが入ります。右大臣藤原師輔が襲われた、と。しかも相手は蛇の怪!とりあえず命はありましたが容態はかなり悪い…。
保憲はここでこの件に対する晴明の意見を聞きたい、と話を振って来ます。博雅にも事態を理解してもらった方がいい、と。ちなみに博雅は醍醐天皇の第一皇子、克明親王の長子。何かあれば皇位が転がり込んで来る可能性がある、いわゆるやんごとなき身分です。
右大臣 藤原師輔
俵藤太 藤原秀郷
野大弐 小野好古
常平太 平貞盛
雲古寺の浄蔵法師
六孫王 源経基
この6人は20年前のある事件に関わっていました。
「皇族のかたがたにはとりわけ衝撃的だったかも知れませんね」
「新皇という称号は」
博雅は気づきます。
「平将門の事か…」
関東に土着していた桓武平氏のひとり、平将門は父、良持の遺産争いに端を発する様々な行き違いで坂東八州を支配下に置くに至り、新皇を名乗りました。日本の中に帝のものではない国を作ってしまった事になり、国の在り方を変える、いわゆるパラダイムシフトの瞬間であったと思われます。
呪われているのは20年前の将門の乱にいろいろな形で関わった人達でした。
経基宅を訪ねる博雅と晴明。六孫王は相当参っています。
晴明は呪詛の依代を探し出し、確実に無力化していきます。並みの陰陽師では気付きもしなかったものを易々と見つけ出していく、安倍晴明の名に恥じない実力ですね。
「何者が…なんのためにそのようなことを…」
「経基様にお心当たりがないのであれば それはわかりませんが」
「呪詛の技術力と組織力を持った相手ですね」
ちなみにタイトル「瀧夜叉姫」とは平将門の娘の名だそうです。
20年前に「化物たちを使って人体のパーツを集めて回る怪人物と少女」というシーンもありまして、この辺考え合わせると
「当時の関係者を生け贄にして平将門の復活」
…が瀧夜叉姫の目的?かな?(「陰陽師」読んでなくて…)
いちいちクリーチャーデザインがキレッキレで(将門公もw)読んでて気持ちいいですね。キャラクターも小物も一切手を抜いていないのも感じられて素晴らしいです。
調べてみると、クライマックスは怪獣バトルになるっぽいので期待大ですね。伊藤先生本領発揮だw。
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