角栄に花束を 6巻

 まだまだ活躍していた時代が近く、賛否両論あって難しい昭和の政治家の話を描く、その勇気にまずは賞賛を送ります。「疾風の勇人」の池田勇人に続いて大和田秀樹先生が選んだ題材は田中角栄!

 国会議員になってすぐ吉田茂に見出だされ、法務政務次官に抜擢された角さん。ですが恨みを買ったGHQのケーディス大佐の差し金で炭管疑獄…簡単に言うと収賄の疑いをかけられ、議員のまま収監されてしまいます。

 拘置所内で衆議院解散の報を聞く事になった角さん。ですが「最高のタイミングだ」と笑います。

「次の選挙 俺も打って出る!!!」

前代未聞の獄中立候補です。保釈請求が通り、拘置所から出る事は出来ましたが、民自党の公認は取れず、母体の田中土建は経営不振…要するに金がありません。まさにドブ板選挙で新潟を駆けずり回る角さん。辻演説の中で後の「日本列島改造論」のヒントを掴んだりしながら何とか当選。池田、佐藤等吉田学校メンバーも危なげなく当選しました。

 池田は不祥事で空いていた大蔵大臣のポストに大抜擢。ちょうど赴任してきたGHQの経済顧問、ジョセフ·ドッジと丁々発止のやり取りを繰り広げました。ドッジ·ラインとも呼ばれる超緊縮財政をまとめた予算案は党内で大ブーイング。

「よおし、わかった!!だったら今からマッカーサーにカチ込むぞ」

「長ドスでもハジキでも持ってこい あっちはバズーカ持っとろうがの」

 …何でもいいですが、広島弁のせいかこの人インテリヤクザにしか見えないんですよね。

 この胆力で池田は大蔵大臣を務め上げ、後に講和条約の事前交渉までも任される事になります。

 当選はした角さんでしたが、結局裁判は有罪…。控訴はしましたが、師匠幣原喜重郎からは「しばらく大人しくしとれ」と。

 その間に法律を作る勉強をするように、と幣原は勧めます。

「議員立法をせぇ 角栄!!」

「法律を作らん議員など 石のタヌキの置物と同じや」

 「法律いうんは“国の設計図”や いつまでもその国が三流国やったら」

「法律を作った政治家がボンクラっちゅう事や!!心せえ!」

 いちいち絵になる言葉を吐く爺さんです。幣原の元で勉強を続け、ついに「建築士法」を成立させます。この後も角さんは法律を作り続け、生涯で33本の法案を成立させた、とのことです。

 そんな盛り上がっている中、北朝鮮が38度線を越えて韓国へ侵攻。朝鮮戦争の勃発です。隣の国の事で心配な事ではありますが、韓国のバックはアメリカです。講和は一体どうなるんだ?!

 政治家のドラマなので登場人物の平均年齢が高いのですが、大和田先生の描く年寄りは非常にカッコいいので良い相乗効果が表れていますね。学校で教えてくれない歴史「昭和」を分かりやすくまとめてくれるシリーズとしても期待しています。巻末見ると資料も真面目にあたっておられる様だし。

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