超音速の魔女 1巻

 科学知識としては正しいんだけど独特の感性で捻って来る、あさり流としか言い様のない作品を出してくる無二の漫画家、あさりよしとお先生の新作「超音速の魔女」です。

 海には大型船が往来し、電気の機関車による鉄道網が発達。内燃機関の自動車が出回り始めた、要するに19世紀末くらいの科学技術の世界。空を飛ぶには気球ぐらいしかなく、人類は未だ翼を手に入れてはいません。

 ”新興国“の少年発明家オガルの元に“帝国”科学アカデミーの英才ツッペカルが飛行船で現れます。表敬訪問…てか自分の設計した飛行船を自慢に来た様でw。オガルはグライダー迄は作れているようですがエンジンの開発に手間取っている模様。ツッペカルの後塵を拝している感じですね。

 ツッペカルは首都へ向かいます。航空戦力の重要性を理解していない政府の中で、ヤバチーと言う人だけが危機感を持っていました。飛行船を首都上空に入れる事自体を避けたいと考えたヤバチーはオガルに依頼を出します。「何とかしろ」…ざっくりしてるなオイw。

 オガルはグライダーで空へ上がります。え、エンジンは?…魔女の箒w。

 オガルくんちのメイド、ワヤが魔女でグライダーの中に箒抱えて入り込んでエンジン代わりになる、という…何これ、魔女機関…でいいの?

 ただ、このワヤさん結構考えてます。オガルのグライダーが飛ばない理由を「鳥の姿を真似ているだけで鳥が飛べる理由を解っていない」からだと看破し、じゃあ自分はどうやって飛んでるのか説明してみろ、と聞かれると

「私は常に合理的にものごとを考えます いずれ自分が飛べる理由も解明するでしょう」

「逆に形にとらわれている坊っちゃんの方が非合理的ではないでしょうか」

 自分が何を知らないかを把握するのは科学の第一歩です。魔女が科学的な視点を持っているのは変な気もしますが、魔法も法則のあるものならそれを研究する魔女が合理的考えをするのもおかしくはないのかも知れません。

 飛行船に追い付いたはいいがノープランのオガルに代わり、ワヤは飛行船内部の骨組み…竜骨部分に取りつきます。空を飛ぶ時の足場の条件が

·ある程度の大きさがあって

·しっかりした材質で

·体重を支えられる物

 考えてみれば当たり前の条件ですが(手近なところで使えるのが箒の柄なワケですね)、竜骨の一部を箒の代わりに見立てて浮く事でぶっちぎり、飛行船を不時着させる事に成功。オガルくんは発明家の面目を保ったのでした。

 その後もワヤをエンジン代わりに気球の最高到達高度更新に挑戦してみたり、謎の巨大飛行船の情報を掴んだのに魔女が絡んでるので公表できなかったり。

 少年自動車王マーカスのところで知り合った職工の女の子ボッコが実は魔女だったり。そうそう居るものでも無さそうなんですけどねぇ、魔女。

 世界最新鋭の帝国製飛行船よりはるかに進歩した飛行船を運用する謎の組織があったり、ヤバチーの存在等、裏で面倒な事態が進行している感じがあります。

「宇宙家族カールビンソン」「ワッハマン」など一見コメディで実はガチダークなメインストーリーがある、というのはあさり先生の得意とするパターンです。昨今の魔法少女モノの祖先…は言い過ぎですが、ギャグとシリアスのギャップを利用する系譜のかなり最初の方に存在する方であろうと思います。作品ごとでその比重は変わって行きますので「魔女」がどうなるかはまだわかりませんが、様子を見ていこうと思います。

 …少なくとも単純に「ストライク·ウィッチーズ」やるとは思えないんだよなぁ。

コメントを残す