めんへら侍 1巻

 原作者あかほりさとる先生ですよ。かつてアニメ、ラノベ業界で猛威を奮った外道(言い方!)ですが現在は漫画原作や時代小説が主戦場ですね。作画がハンガリーの国賓w松本救助先生。キャラが無駄に濃い二人のタッグで描くのはやっぱりちょっとおかしい時代劇「めんへら侍」です。

 元禄の世でメンヘラって…と思いましたが、このお話の主人公鷹松左衛門尉伊綱…通称”左門“は、長屋に引き籠って茶屋の看板娘お蜜ちゃんのグッズ(あるのかそういうの…)を買い集めたり触れ手会(握手会?)に興奮する…ただのオタクだこれ。

 コミュニケーション障害のケがありマトモな社会生活が営めていない感じですが、キレると(具体的には「ヘッポコ侍」と罵られると)無役流と呼ばれる剣術を振るう達人!

 かぶき者に絡まれているお蜜ちゃんをキレた勢いで助け、そのままオトせそうなところで龍姫なる女性にぶん殴られて屋敷に連れ戻される左門。彼の家は筆頭旗本と呼ばれる名家。余人の目のないところでは将軍·徳川綱吉とマブダチの間柄…しかも超美人の龍姫は左門の婚約者!なにこのチート野郎?!

 まぁその旗本のお父さんが時代遅れの武断派で(綱吉の治世は文治偏重に振れて行った時代)性格が曲がる程鍛えられたのと、子供時代に綱吉に引きずり回され過ぎて引っ込み思案になってしまったのが左門のメンヘラの主な原因らしいのですが。

 「某の存在はどれだけ罪が深いんだーー」

 とことんネガティブな左門ですが女性にはなぜかモテます。前述のお蜜ちゃん殿しかり、龍姫も政略結婚狙いではなくガチ惚れ。更に元茶屋の看板娘で吉原の太夫にまでなった蝴蝶。この人に至っては左門を拉致って自分の廓に引っ張り込むと言う…やってる事が龍姫とあんまり変わらないな…。

 人によっては天国みたいなハーレム環境なのですが、肝心の左門自身が受け止められなければどうにもなりませんね。龍姫は左門に怖がられており、お蜜ちゃん殿は神聖視してて、向こうはまんざらでもないのにろくに言葉も交わせていない。

「あの菩薩のような乙女に対し こんな世俗や打ち水やホコリにまみれた薄汚れた某が手を握るなんて言語道断」

 蝴蝶なんかは跡継ぎを産んでもいいとまで言っているのに、「実は性的な事に興味しんしんで進んで吉原に入った」事が知れると

 「某は純情なお前が好きだったんだ こんなお前を見たくは無かった」

 「だからお前とは二度と会うまいと心に誓った お前は俺の記憶の中だけに生きる女!!」

 …めんどくせw。

 歯車が噛み合わなくて泣いたり叫んだりする左門と周りの人々の関係を描いて1巻は終わります。能力高い系男子に複数女子がハードアタック、はあかほり脚本でよく見た展開で、この情報量をスルスル読ませる構成力は流石の一言です。浅野内匠頭と吉良上野介もさらっと出して来て、「忠臣蔵」をからめるつもりの様ですね。「生類憐れみの令」も左門が言い出しっぺにされている様だし使う気満々です。

 最後の「徳川の御世は滅びに向かっておる」は反乱の兆しでしょうか。綱吉の代でそんな事件あったっけ?左門の弟の甲斐が一枚噛んでいるのが不安要素ですが…。

 

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