ゴールデンカムイ 31巻

 ついに来ました最終巻。黄金のカムイの猛威は次々と生贄を欲します。

 函館行き暴走列車。中は殺し合いの真っ最中です。牛山対月島。銃剣で突き掛かる月島。多少刺されるのも気にせず人間ヌンチャクwを振り回す牛山。

「どうだ 強いだろ?」

 土方に対するは鯉登。兵士を切り刻む土方に蜻蛉の構えで静かに迫ります。

「うわさの薩摩隼人か」

 アシリパと白石、杉元は先頭、機関車を目指します。

 列車の天井には鶴見と尾形がいました。これだけ被害を出した鶴見には、例え権利書が手に入っても責任が問われる。

「あなたはこのまま表舞台から消えて 私の出世のために全力で働くしかない」

 「百之助 つまりお前は『第七師団長なんぞ偽物でも成り上がれる』と証明したいのだろう?」

 母を捨てた男の恥がやっていた第七師団長など「欠けた人間」である自分でもなれる程度のものだ、と納得したい…ひどい話です。尾形、ここで作中初めて笑います。屈託のない笑顔が却って怖い…。

 土方相手にいまひとつ攻めきれない鯉登。

「『迷い』があるなら今すぐ降りろ 死人になれていない」

 覚悟の足りなさを見抜かれてます。初太刀に全てを賭けるから薩摩の剣士は強かった。だが自分の命を賭けたとて土方に勝てるとは思えない。

「オイは皆んために…もっと沢山の誰かんため 勝たないかん」

 大きな覚悟で踏み込む鯉登。顔に銃剣がめり込むのも気にせず押し込みます。まさに裂帛の気合。受けた土方の兼定にサーベルを折られつつも折れた半分でそのまま土方の頭を割りに!

 牛山を止められない月島は手榴弾を抱えた自爆攻撃を画策します。牛山を鶴見に会わせない為に。

「俺の命は このために使ってもいい」

 牛山に飛び掛かり、手榴弾を叩きつけようとする月島。しかしそこに土方を下した鯉登が!

「月島ッ」「!? 来るなッ」「よせ月島ッ」「…なんで いつも聞かないんだ!!」

 一瞬の躊躇で手榴弾をあらぬ方向になげる月島。しかしそこにいたのはアシリパと白石!飛び込み手榴弾を抱え込む牛山!爆発!

「お嬢…怪我ないか?」

 身体半分吹き飛ばされ、それでもアシリパを気遣う牛山。かつて家永に問われた言葉が頭をよぎります。

「あなたの完璧はいつだった?」

「いまだよ…いま」

 非常に牛山らしい最期でした。

 更に機関車に取りついていた熊が車内に侵入しており、兵士たちはパニックです。アシリパは矢をつがえようとして矢筒…権利書がない事に気づきます。矢筒は月島から鶴見の手に。熊への対抗手段がなくなったかと思われたとき、現れたのは…土方でした。朦朧とした状態のまま熊と切り結び、ついに追い返し…力尽きます。

「やっとこれから もっと面白くなってくるはずだったのに…あの頃より暴れてやろうと…我が人生の春はこれからだと…悔しいなぁ…」

 天井に逃れた熊を落とそうと撃ち続けた尾形。その後ろから突き刺す杉元。三つどもえを打破したのは毒矢を拾ったアシリパでした。

「あれから誰か殺せたか?」

 問いかける尾形と同じ瞳でアシリパは答えます。

「私は杉元佐一と一緒に地獄へ落ちる覚悟だ」

 毒矢は尾形の腹に深々と。毒が回り、幻覚を見始める尾形。自分の中の罪悪感を認め、自分が欠けた人間ではない事を認められない尾形は自分で自分を撃って落ちていきます。

「兄様は祝福されて生まれた子供です」

 弟、勇作の幻が吐いた祝福の言葉は呪いにしか聞こえなくて、二人は絡み合いながら消えていきました。

 熊も毒矢で処理し、鶴見が待つ先頭機関車に一人で向かおうとするアシリパ。五稜郭の黄金の井戸は埋めたままにしてほしい、と杉元と白石に頼みます。

「あの大量の金塊を手に入れたからめでたしめでたし、とは絶対にならない」

「持っている限り 殺し合いが延々と続く…!! みんな死んでしまった」

「黄金のカムイの呪いを断ち切らないと!!」

 いちばん大切なひとまで失いたくない、と涙を流すアシリパに「わかったよ」と受ける杉元。

「ただ…行かせない」

ふたりで機関車へ飛び移ります。

「ひとりでは行かせるかよ!!相棒だろ」

 足場の悪い機関車の上で戦う3人。鶴見は満州進出の足掛かりを作るのに権利書が必要なだけで、「金塊は忘れてやる」と提案してきます。

「悪いが鶴見中尉 俺にそんな取引は意味がないんだよ 俺の分け前はもう貰ってるから」

 握り込んだ砂金を投げて鶴見の目潰しに使う杉元。

 体勢を崩し、矢筒が鶴見の体を離れます。同時に鶴見の懐からまろび出る…人骨。咄嗟に手を伸ばしたのは矢筒の方。砕け散る骨を見つめる鶴見の表情…。

 鬼気迫る鶴見は二人を圧倒。杉元を刀で刺し、アシリパを叩き落とそうとします。

「愛するものは ゴールデンカムイにみんな殺される」

「全部お前の責任だぞ ウィルク!!」

 その青い瞳に話しかけるかのように「ウィルク」を呼ぶ鶴見。矢筒の紐を切って取り返し、そのアシリパを投げる杉元。その先では谷垣がキャッチ。

「俺は不死身の杉元だ…」

 二人と機関車はもみ合いながら函館駅に突入、ストッパーを越えて函館湾へ…。

 半年後、東京に杉元、アシリパ、白石の姿がありました。杉元は当初の目標通り、梅ちゃんに分け前分の砂金(片手一掴み分)を渡し、アシリパは榎本武揚との会談に成功し、権利書の力を認めてもらえるように。結局杉元はアシリパと共に北海道で暮らす事に。

「故郷へ帰ろう アシリパさん」

 そして

 「湿っぽいサヨナラは嫌いだぜ」

 とうそぶいて二人と別れ(て吉原にしけこんだ)白石ですが、3年後に偉いことに!

 …てかアレ、読者プレゼントになるの?!いかん応募しないとw。

 黄金に惑わされた沢山の人間が死に、取り返しのつかない事も多く起こりました。ですが少なくとも、生き残った人々が黄金に囚われない生き方が出来ているのはこの事件の収穫であると言っていいのかもしれません。ひとは金だけで生きるものではないのです。

 野田先生、次回作は「スピナマラタ」リブートだとか。こちらも期待しております。

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