藤田和日郞先生の黒博物館シリーズ、現実に現れたフランケンシュタインの怪物の物語、ついに1巻発売です。
小説家メアリー·シェリーが黒博物館にて閲覧を希望したのは赤い革靴。1842年、ヴィクトリア女王の「舞踏会」の現場に残されていたもの。事件の詳細は伝わっていませんが、可能な限りの情報を提供する学芸員。それもそのはず、学芸員さんはメアリーの小説「フランケンシュタイン―あるいは現代のプロメテウス」の大ファンw。メアリーは逆に赤い革靴の事件を語り始めます。
「存じておりますのよ 私」
「当事者ですもの」
ロシアからヨーロッパにかけて舞踏会に紛れ込んで要人を暗殺する女性たち「7人の姉妹」。コサック兵の流れを汲む彼女たちは躍りながら対象に近づき、斬り殺す。
彼女たちが英国に入り込もうとしている、と言う情報を掴んだ近衛軍のアレックス·ダンヴァーズ大尉はドーヴァーにて「姉妹」の捕捉に成功。しかし「姉妹」はあまりに強く、大尉の部隊の半数は死亡、「姉妹」の一人を斬り殺す事には成功しましたが6人の逃亡を許してしまいます。崖から転落して頭がつぶされていた死体…赤い靴を履いたそれを研究の為に引き取ったコンラッド·ディッペル博士は、同時期に死亡した村娘の頭部を移植し、「姉妹」の死体を甦らせてしまいます。…技術もヤベーけど法的にも大分アウトだろ博士。マッドサイエンティストそのままですね。
大尉は「姉妹」の目的が4ヶ月後に開かれる「プランタジネット舞踏会」主催者のヴィクトリア女王の暗殺であろう、と予想。同じ能力を持つ甦った死体…「怪物」に女王の護衛をさせる事を考えます。ぶっ飛んでるなぁw。
「怪物」に舞踏会に出してもおかしくないだけの常識と教養を教え込む役として大尉が目をつけたのがメアリーでした。…どちらかと言えば、他のご婦人は「怪物」と出会ったとたんに気絶してしまっており、「フランケンシュタイン」を書いたメアリーなら気絶もせずに「怪物」と相対する事ができるだろう、と予想されたに過ぎないのですが。
息子の学費が必要なメアリーは報酬の1000ポンドに目がくらみ、依頼を受けようとしますが…。
「ア…アタシ…みにくい…から…キライか…?奥サマ…」
すがりつく「怪物」、しかし自作の怪物と同一視し、自身にまつわる「死」の影とも同一視してしまった「怪物」をメアリーは突飛ばし、窓から落としてしまいます。見捨てられたと勘違いした「怪物」は闇雲に邸内を迷走。
「仕事…くだせえ…」
「怪物」はその姿から恐れられ、使用人から銃で撃たれてしまいます。巻き込まれたメイドを庇い、銃弾を避ける「怪物」。使用人たちとの一触即発の事態に。
「どうしよう!?今この場であの《怪物》を怪しくなく!怖くなく!日常にあってもいい普通の存在にするには…!?」
「《怪物》!お前はなぜ《怪物》になったの!?」
土壇場でメアリーが思いついたのは…
「お馬鹿さんね エルシィ!」
Little ChildのLC…エルシィ。「怪物」に名前をつける事がメアリーの策でした。名前があれば正体不明ではない…。
フランケンシュタインの演劇をやることになり、エルシィがその主演女優である。舞台で女怪物がお屋敷で働く場面があり、その経験の為にお屋敷で働かせてほしい…。厨房のケリーさんから仕事をもらうため、彼女の妹の旦那を懲らしめる事に。妹さんを殴る旦那をぶっ飛ばし(得意技だw)、言い聞かせます。
「…女を…なぐったら…また…来る…」
仕事をもらえるようになったエルシィ。失敗も多いですが…。
「トリさばいた…ちょっと…ほめてもらった…」
徐々に仕事になじんで行くエルシィ。メアリーは戸惑いながらもエルシィに言葉遣いやマナーを教え込んでいきます。腕っぷしの立つエルシィに恐怖を覚えながらも。
男性上位で、女性が権利を制限されている事を苦々しく思っているメアリーにとって、男を実力で黙らせられるエルシィはある意味突破口になると思われるのですが、彼女は直接的暴力は認めづらいようです。エルシィがメアリーの理想の姿に近付いている事にまだ気付いていないのですね。この辺と舞踏会を合わせて終盤のテーマになって行く気がしますね。
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