ウェルベルム-言葉の戦争- 1巻

 はじめに言葉があった。聖書にもそうあります。「光あれ」神がそう言うと光が生まれ、世界が始まったそうです。その言葉の力を集めて望みを叶えよう、というのが「ウェルベルム―言葉の戦争―」のストーリーです。

 小銭が体に無数に刺さって死ぬ、通称お賽銭事件。被害者のスマホには「あくせんみにつかず」とも読める文字列が…。

 主人公、入間ケイジはこのニュースを聞いて

「いっそ俺の家の前で起こらねーかな…」

 …クズ思考ですねー。つまらない日常をどうにかする為に「シナリオ大賞」等に応募してみますが、「人間観察が足りない。もっと人生経験を積め」…門前払いより多少まし、程度の扱いですね。

 そんな悶々とした日々を送っていたケイジにいとこの花里真紀が声をかけます。ラーメン屋に誘われて…

「人生つまんない?」

「日常をぶっ壊せるなら、壊したい?」

 穏やかじゃない言葉を吐きながら真紀はドンブリを割り、

「ドンブリよ…『直れ』」

 破片が見る間に集まり、ドンブリは元通り。

 「動詞の力」と真紀は呼びました。主語や目的語を入れ替えて呪文を作ればなんでも「直せる」。アプリをダウンロードして「ガチャ」を回して動詞を手に入れれば参加できる。

「きっと君のつまらない日常をぶっ壊してくれるよ」

 そう言い残して真紀は去ります。

 アプリには「『言葉の戦士』になってそれぞれの持っているパスワードを全て集めれば、何でも一つ願いが叶う」とありました。

 さすがに躊躇するケイジでしたが、翌日自分の「妄想ノート」がクラスメートに見つかってバカにされた事でゲーム参加を決意。

「何が起きても、この退屈よりはマシだ…!!」

 えーと、ツッコミどころだらけなんですが、高校生くらいだと決断の動機なんてこんなもんかも知れません。

 ケイジが引いた動詞は「開く」。パスワードは「ノウガキを垂れる」。どうやらこのパスワードを守って戦わなければいけないらしい。

 真紀に相談しようと考えていた翌朝、いきなり真紀が死んでしまいます。しかも「お賽銭事件」であるらしい。

 真紀の通夜に参列したケイジは「飛ぶ」の能力者と出会い、行き違いから戦闘になりますが彼女…吾妻梨々花と共同戦線を張る事になります。梨々花は真紀と仲間だったようで、お賽銭事件の犯人…おそらく能力者…を探し出したいと思っていました(ちなみに梨々花の能力では小銭を人体にめり込む勢いで飛ばすのは無理)。

 ケイジには小銭を高速で飛ばす動詞に一つだけ心当たりがありました。

 それは「止める」。被害者がバイクやバスに乗っていた事から、犯人は小銭を空中に「止めて」そこに被害者が突っ込んで来る形にしていたのです。

 そして二人は電車の中で犯人に遭遇!「止める」の能力者は警察官、天地ミトスでした。警察の情報力を利用して能力者を特定していたようです。飛んで来る小銭を「飛ばす」事で軌道を変えたり、インクを詰めたカプセルをミトスの近くで「開いた」りして列車の緊急停止までの時間を稼ごうとしていますが、ミトスは列車の壁自体を「止め」てまとめて破壊にかかります。

「ここで決める!!」

 他の人間はほぼ強制でガチャを引かされているのに、ケイジだけ始め方が違いますね。作中でも指摘されていますが、原因があるとしたら真紀でしょうね。よくわかってないやつを能力者に仕立て上げて楽にパスワードをゲットしようとした?しっくり来ないな…。

 そしてケイジの願いって何でしょう?見る限りそんなに強い願いはなさそうですが。まさか本当に「つまらない日常をぶっ壊す」だけ?多分その辺のヌルさを突きつけられる展開になるんでしょうね。

 非常に応用範囲の広い能力で、いくらでも面白い事が考えられそうですね。先が楽しみな作品です。

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