福地翼先生のポスト·アポカリプスファンタジー「GOLDEN SPIRAL」2ヶ月連続刊行の第1巻です。
かつて栄華を極めた人類文明はある日突如襲来した“天使”により崩壊、更に海面上昇によって土地を追われた人類は世界最高峰プラフォンの火口に逃げ込み、そこに最期の国ベルソー王国を築いた。別名「すりばちの国」。
海面上昇は止まらず、この国は遠からず海に沈む運命にあります。父王が殺されて逃亡した元王子ザビは護衛班(エスコート)に身をやつし、それでも国を救う方法を探していました。外の世界”ユートピー“。
「ユートピーは実在する」
「鍵は“天使”が握っている…希望の星は必ず降る 信じ続けた者の眼前に…」
父王の最期の言葉を信じ、ユートピーへ行く方法を探すザビ。
「この世界に”他人“なんていねぇ」
自身の体を刀と化する能力者…マグユーザーであるザビはその力を振るい、人々を助けていきます。正にお人好しレベルで。
貧民街“壁町”で強盗に遭っていた親子を助けてみれば元自分の教育係のムサシで、しかも彼は不治の病”永眠痘“にかかっていて…。
仲間が増える、という希望が与えられた直後に奪われたザビ。教会の天使像の前で、長く流したことのない涙を流して慟哭します。
「希望の星よ!!!オレの命などくれてやる!!!だからお願いだ!!もう一度…もう一度だけ…!!!」
その瞬間、教会内に落ちてきたカプセルから出てきたのは…少年?
「父さん…星が降ってきたよ」
「オレはガロ!くるくるするのが好きです!!あとは忘れた あはは」
いやあははじゃないよ…。ここまでのシリアスな雰囲気がぶち壊しw。ザビからマシマロもらって喜んで食べてるし。
どうやって空から降ってきたのか尋ねるザビにガロ
「飛行機かヘリコプターから落とされたんじゃない?知らんけど」
「何だそれは?“ひこうき”?”へりこぷたあ“?それは何だと聞いている」
すりばちの国にも古代の文献は残っており、記録も読めるのですが、「空を飛ぶ物」は存在した痕跡すら残っていない!
ザビはガロを問い詰めます。
「思い出してくれ!!お前はどこから来た!?“ひこうき”はどうすれば作れる!?”船“じゃあだめなんだ!!この国から…みんなを救い出すには…!!!」
…なんかひっかかる言い方ですが、その理由はすぐわかりました。すりばちの国の縁、通称“アンジュの輪”には天使が住み着いていました。人間をこの国に閉じ込めている厄災。カナヅチの化物のようなそれの頭上を越えなければ国を出る事は出来なかったのです。
救難信号を見て”輪“に駆けつけたザビ(となんとなく着いてきてしまったガロw)、カナヅチの天使に対して刀を抜きます。エスコートとはアンジュの輪に水やその他希少な物資を採取する整備班を天使から“護衛”するのが任務だったのです。
「お前はこの国を救う”希望“なんだ!!ここで死なせるわけにはいかねぇ!!」
ガロを逃がそうと身体を張るザビ。ですが不利は否めません。刀も折られ、崖から放り出されるザビ…の腕に残された刀を掴んだらのは…ガロ!
「まだ生きてる!!! お前の“刀”まだ生きてる!!!」
ガロもまた辛かったのです。記憶もなくカプセルに詰め込まれて不安だったところに現れたザビ。ただひとりになりたくなくてザビの後を追いかけて…。
「独りぼっちは辛いよな でも…だからさ…」
「マシマロ またおくれよ」
ザビを一気に引き上げるガロ。しかしその後ろには天使。横薙ぎのハンマーでガロの首が飛ぶ…!!
「おおおおおお!!!」
…叫びましたガロ!首だけでw
「思い出したぁ!!!」
首を胴体にネジ込む!
「ゴールデン…」
腕をねじる!胴体をねじる!
「スパイラル!!!」
回転で勢いをつけて天使を殴る!崖から落とす!
「あはは 一個だけ思い出した オレのマグ”ネジ化“だった」
落ち着いたところで自身の身分(元王子)を明かし、ガロに協力を頼むザビ。
「オレが必ずお前の記憶を取り戻す だからこの国を救ってくれないか」
ザビを抱き締めるガロ。
「だからずっと独りぼっちで頑張ってたんだね 気付けなくてごめんね でももうオレがいるからね」
…それは子に癒される父親の気持ちに似ていたという…。
珍しい関係ができましたね。疑似父子w。カッ飛んで行くガロをおろおろ心配するザビ…大抵こう言うのって被保護者側が娘だったりするので…w。
この後、ガロの記憶を取り戻す為リリー隊長に会いに行く事になります。流れるような展開は流石のベテランの貫禄。ファンタジーだけに世界設定クラスの大仕掛けも見え隠れしており、福地先生がどう料理して来るか楽しみなところです。お手並み拝見、と言ったところでしょうか。
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