作家メアリー·シェリーの内面まで切り込む黒博物館長編「三日月よ、怪物と踊れ」2巻です。義父ティモシー·シェリー準男爵とついに面会…したんですが何だか雲行きが怪しくて。
「やはり礼儀もわきまえぬ薄汚い下流の小娘だな メアリー·ウルストンクラフト」
いきなりの圧迫面接w。彼からしたらメアリーは息子パーシー·ビッシュと駆け落ちした挙げ句死なせてしまった、憎んでも憎みきれない女な訳ですから仕方ない面もありますが…。
「ビッシュの前妻が自殺してお前は本妻になり…前妻の息子が早死にしたお蔭でお前の息子が相続人だ…。まったくお前は他人が『死んだこと』でうまく生きていっているようだな」
またです。他人の死に彩られたメアリーの人生。先人の屍の上に人が生きるのは当たり前と言えば当たり前なんですが、何でしょうねこの巡り合わせは。
息子パーシーJr.への財産相続を認めさせる為、メアリーは寄宿学校ドゥ·ザ·ガールズ学院への潜入調査をする事になります。女子への教育を名目にしていますが、金だけ受け取ってろくな教育はしていない。役人か調べてもうまくごまかされてしまうので内部から調べて来い、と。
エルシィを屋敷に置いて学院に講師として潜り込むメアリー。噂に違わず学院はひどいところでした。授業内容は単語の綴りから間違っている、親からの手紙と仕送りを隠匿、食事に硫黄を混ぜて生徒の食欲を無くさせて食費を浮かせる…生徒が熱を出してもろくに治療もしない…。
「金がかかるじゃないか」
死んだ子は逃げた事にされ、死体はただ埋められてしまう。薬を手に入れる為にと外出しようとしたメアリーを校長の3人の息子が暴力を振るって止め、そのまま乱暴しようと襲いかかって来たその時…!男たちを弾き飛ばしたのはエルシィ!
「アタシ…毎晩ごあいさつ…したい…」
「奥サマ 『また明日』」
その言葉を言いたいが為に屋敷を抜け出して来たエルシィは、メアリーが殴られているのを見て思わず割って入ったのでした。月下に踊るような動きであっという間に3人を叩きのめすエルシィ。さすがめっちゃ強い!
法廷に告発する、と宣言するメアリーに校長は、この男性上位社会で女性が生きていくためには男をつかまえてその庇護下で暮らしていくしかない、自分はその為に必要な事を教えているのだ、と開き直ります。
…それと金をくすねたり生徒を虐待の末死なせたりするのは関係ないと思いますが、普段薄々思っている事を図星刺されたメアリーは止まってしまいます。しかしエルシィは怯みません。
「アタシがアンタにはんだんされるすじあいはねえ」
人はやはり誰かに認められる事が必要なのでしょうね。メアリーは確かにこの一言で救われました。
ドゥ·ザ·ガールズ学院は取り潰しとなりましたが結局後日似たような学校が作られた、とのこと…簡単には世の中は変わりません。
とにもかくにも使命を果たしたメアリー。その息子パーシー·フローレンスとティモシーが引き合わされる事になります。物乞いの母子を蹴飛ばした、とウォルター·ストレイド侯爵(バネ足ジャック!)と殴り合いやらかす変わり者パーシー(その後二人は親友になってしまうのですが)ですが、屋敷に向かう途中で暴れ馬を静めていたエルシィと出会います。エルシィの面にまるで退きもせず普通に会話するパーシー。なかなか胆が座ってますw。
メアリー、かなり複雑な感情を内に秘めてます。母から受け継いだ女性の自立を目指す思想と、現実にその実現は難しく、自身の著作も夫の名を借りて世に出さねばならないという矛盾。回りの人の死を代償にしてしか生きられないのではないか、という恐怖。
「死人から創造られたおれでも 存在を認めてくれ!!」
怪物の叫びはメアリー本人の心の悲鳴でもあるのでしょう。
おそらくは彼女の外にいる怪物エルシィと呼応して、メアリーの怪物にもなんらかの変化があるものと思われます。
舞踏会へ繋がるパーツが出揃いつつありますね。あとはコサックの女たちが絡んでくるはずですが…。
コメントを残す