銃夢火星戦記 9巻

 ガリィがズタボロになってクズ鉄町に落ちてくる前…「陽子」として機甲術者として戦う…更に前、陽子が小さな子供の頃まで戻った超サイバーパンク「銃夢」。相当お久しぶりの新刊9巻です。

 陽子は子供のボディで既に全身義体というなかなか闇深い状態ですが、まだ戦う術を持たない身。ヤレコワに拐われてしまいます。

 その時同行していた傭兵ジャポロと機甲術者クアンには因縁がありました。11年前の第四次北伐での軌道上戦闘。その途上で二人は宇宙船外壁上での格闘戦を繰り広げ…いやサイバーボディ上等な世界観なんでこれはまあ判るとして…大気圏突入カプセルの外壁にとりついてそのまま戦闘継続w。銃夢世界ではままある事かと思ったらやっぱり正気の沙汰ではなかったようで…。

「…ちょっと待て お前もハッチを開けて外に出たってのか?」

「今考えるとゾッとするがな」

 この戦闘でクアンは脳にダメージを受けて睡眠発作症(ナルコレプシー)を発症、現役引退する事になります。ジャポロも大きなダメージを受け、カプセルから蹴り出されたのですが生きていたようです。全身を改造しメカニズモとしてクアンの前に立ち塞がったのでした。

 ジャポロを追う車中、クアンはエーリカに聞きます。陽子はお前にとって何なのか。あの子には私がついていないとダメだ、と呟くエーリカ。

「だがあの子もすぐに大きくなる」

「陽子は大きくならないっ!!陽子はずっと小さくて可愛いままなのっ 陽子は私のモノっ…!! 絶対に…絶対に誰にも渡さないっ!!」

 異常な執着です。陽子が自立しようものならエーリカの精神はバランスを欠く事になるのではないでしょうか。

 そしてヤレコワとジャポロが待ち構える砦。陽子とユニエが捕らわれています。ヤレコワにチップを埋め込まれて命令を聞かされているミカたち。

「サイボーグって体撃たれても痛がらねーのかな!?」

 子供の一人が陽子に銃を撃ちますが、陽子なんと至近で放たれた銃弾を避けます。

 普段はエーリカが助けてくれるから弱虫の振りをしていた。その方がエーリカが喜ぶから。だが今エーリカはいない。

「どうしよう やっちゃっていいのかな」

 銃の引き金が引き絞られる最中にこんなこと考えています。目が良いと言うか、脳のクロック数が上がっている感じ。

 手首を外して戒めを抜け、ゲルダを真似た動きで少年の身体を絡め取って一瞬で逃亡しました。

 …陽子、成長のきっかけを掴んでしまいました。エーリカとの関係崩壊のカウントダウンが始まりました…。

 ヤレコワはゾノヘドロン中枢へ手帳とそこにはさまれた葉のようなものを手に入れた報告。これが「アウフ文庫」へ入る為の鍵だと。切頂官トリケファリの興味を引く内容でしたが、そこに機甲術の長老の一人、アンドロ·オースタッドからの連絡が入ります。

 本来敵同士の二人はその究極の目的が近い事を知り、一時停戦の合意に達します。

 曰くゾノヘドロンの目的とはメルキゼデクを初め各惑星国家に配置されているスーパーAIの破壊!人類を制御するそれらスーパーAIをアルコーン(偽神)と呼び、人類の手に霊長の座を取り戻し進化を促す為にその排除を行う!

 アンドロの目的はバラバラの機甲術者を纏め上げる「道」を示す事。すなわち

「火星を統一し、大火星帝国マウォルスを復興する!!」

 ゆくゆくは太陽系の統一まで射程に入れる!

 支配者の打倒、という一点で合意した彼らは手を結ぶ事にします。

 …その裏でトリケファリは機甲術の秘奥たる「アウフ文庫」の確保をヤレコワに命じます。まさに右手で握手しながら左手にナイフを握る、謀略外交の基本です。

 停戦合意なんか知らないジャポロは偵察と称してクアンたちを叩きに出てしまいます。

 クアン側には合流した助っ人アルベによってジャポロの隠し球の情報がもたらされます。

 マルチ·レーザー·アレイ…近付くものをセンサーで捕捉しレーザーで自動迎撃する…CIWSの進化版でしょうか。相手に触れる事前提の機甲術とは相性最悪です。

 ですがクアンには策かあるようです。

「相手の鼻っ柱をつまんで金玉を蹴り上げろ!!これが機甲術のコツだ!!」

「でもクアン!あいつどこが鼻でどこが金玉か分からないんだよ!!」

「つまむべき鼻がどこで蹴り上げる金玉がどこにあるか…それがわかれば機甲術はもう成ったも同然!!」

 わかったようなわからないような…そんな話をしているうちにジャポロとの遭遇戦となります。機銃を撃ちまくる両者ですがMLAもあってろくにダメージが通りません。痺れを切らしたジャポロは止めを刺そうとクアンの装甲車に肉薄…。

「遠距離戦に耐えられなくなって飛び込んで来ると信じていたぜ!!」

 格闘でクアンと決着をつけたかったジャポロ、思考を完全に読まれてますw。装甲車にワイヤーでくくりつけられ、隧道へ。突っ込んだ隧道ではアルベとエーリカが小麦粉をばら蒔いていました。拘束を解こうとMLAを起動するジャポロ。もうもうと小麦粉が舞う中に火種…そう、粉塵爆発です!

 燃える隧道から飛び出てきた装甲車の扉を蹴破って脱出するクアン。

「…まぁそうだろうな これくらいでくたばるタマじゃないよなぁ!? 俺もお前も!!」

 振り返れば燃え上がりながらも立ち上がるジャポロ!ほとんど不死身の二人の第2ラウンド開始です。

 いちいち良いSFガジェットを持ち込んでくれる木城先生。サイコメトリーとかナノマシンとか作中に取り込んだのは日本ではこの人が最初だったんじゃないでしょうか。ノヴァ教授の思想とか現代でもまだ追い付かれていない気がw。これでもうちょっと掲載ペースが上がってくれたら…w。

 

コメントを残す