逃げ上手の若君 9巻

 高らかに名乗りを上げた北条時行。盛り上がる諏訪神党の面々の間を縫って小笠原貞宗、なんと単騎で時行を討ち取ろうと迫ります。

「儂の目は節穴だった 最大の大物が我が眼前に潜んでいたとは!」

 当然逃げる時行。またえらく楽しそうにw。あらゆる技術を尽くして追いかける貞宗。手管を尽くして逃げる時行。その姿は成長した姿を見せる弟子とその様を喜ぶ師のようで。

 一撃食らわせて怯んだ貞宗に時行は声をかけます。

「未熟な私にはこの先の事など予測がつかない だから貴方には信濃を出る前に挨拶しておきたかった」

「もしかすると何も出来ずに死ぬかもしれない…でも 行ってきます 天下に挑みに!」

 ここで静かに見送ればカッコいいのですが

「何が天下だ 十年早いわ!」

 散々ぶちギレる貞宗w。後を追って来た市河に宥められて退散する事に。

「せいぜい天下を逃げ回れい 北条時行 翔ぶを止めるなよ この儂が射ち落とすその日まで!」

 頼重は決起した軍で帝と尊氏がいる京を攻める…と見せかけて手薄な鎌倉を攻めるルートを取ります。帝に反感を持つ関東武士を糾合しながらかつての本拠であった鎌倉を奪還しようというのです。

 尊氏の弟で鎌倉将軍府執権 足利直義は頼重の策を全て読み切り、進路上…上野の武士に迎撃を命じ、旗下の庇番衆にも出撃を命じます。ちなみに軍資金集めは「庇番衆牛車旅」。イケメン庇番衆と江ノ島を回る…アイドル?w

 道中の迎撃は集まって来た勢力の数で押しきり、足利本軍…庇番衆との対戦です。

 最初に進み出て来たのは渋川義季。

「どうかそのまま川に馬を進められよ 武士らしく正々堂々 一騎討ちにて決着をつけん!」

「…マジかよ 大人の大将が十歳児に一騎討ち申し込むか?」

 完全に本気だそうです。「武士たるもの忠義を尽くして正々堂々」これしか頭にない…。

 弧次郎が代わりに飛び出しますが、これに渋川怒ります。

「大将同士で戦う機会を与えたのに これが貴様の返答か北条時行 我が賞賛を裏切りおって」

 長い刀で弧次郎をはじき飛ばし、そのまま諏訪軍をちぎっては投げ…。

「勝手に武士の理想像を敵に求め ちょっとでも理想と違うと勝手にキレて自己強化する」

 うわめんどくさいw。

 女性に免疫がなくてソッチ系の妄想で自己強化できるw海野幸康が相手になりますが、斯波孫二郎の策で諏訪軍に扮した手下に渋川に向かって矢を射たせ、渋川の「正義の怒り」を超強化。海野を打ち破った渋川は戦線を一気に押し上げます。やっぱりめんどくさいw。

 庇番衆は曲者ばかり。裏方の陣地を回り込んで攻め込み、雫も含めた女衆をかっ拐おうとする岩松経家。

「女女女ァ!一人残らず俺のモンだ!!」

 石塔範家は「白拍子天女鶴子ちゃん」なるキャラクター(?)を胴に描き込んで亜也子に斬りかかる!…痛鎧? こちらは脳内の女を育てる事で自分も強くなる、というややこしい変た…紳士。

 この頭おかし…個性的な面々を斯波孫二郎がうまく配置する事で磐石の軍を作り出しています。

 石塔は「鶴子ちゃん」の参考にしたい、という意味で亜也子にこだわり、一騎討ち状態に。

 岩松は「怪しい動きの集団がいたらなんとなく独断で追おう」で結果的に対応できた望月重信が抑えに。…それ一軍の将としてどうなの?w

 渋川は「弧次郎に手柄を立てさせてやりたい」という時行が二人がかりで。

「遅っそい太刀だなぁ渋川 二対一だと震えてまともに振れないらしい だから一対一しか出来ないんだぁ 臆病者」

 煽りつつ嬉しそうに太刀を避ける時行と弧次郎。いつもの事ですがやっぱりおかしいとしか言いようのない絵面w。

 渋川を怒らせ、無駄に大きく動かして疲労を誘うのが時行の狙いでした。

「渋川 今までの非礼を詫びる ここからは正真正銘の一騎討ちだ 我が自慢の郎党祢津弧次郎 彼に勝てたら私の首を差し出そう!」

 構える弧次郎。正座して見守る時行。君臣の絶大な信頼を感じさせます。

 この女影原の戦い、庇番衆はまだまだクセの強いのが出て来ます。直義の言う通り「庇番衆の武器は狂気」ですね。一番ヤバいのはやっぱり尊氏なんですが。

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