銀河英雄伝説 25巻

 イゼルローン要塞主砲「雷神の槌(トゥール·ハンマー)」が味方のはずのルッツ艦隊を貫きます。ユリアンによって乗っ取られた要塞は容赦なく護衛艦隊に牙を剥き、帝国軍は戦意を喪失しました。無血とは行きませんがかなり少ない戦死者数での要塞奪還です。

 余録として潜入していたバグダッシュ中佐とユリアンの関係がちょっと改善したりw。

 独立政府の初めての軍事的勝利に沸き立つエル·ファシル市民とロムスキー議長。それと時を同じくして自由惑星同盟軍最後の戦いが始まっていました。

 ビュコック提督がハイネセンの同盟軍司令部に戻って来ました。元副官ファイフェル少佐は一緒に戦える、と大喜びですが…。

「ん?貴官は何歳だ?」

「は?27歳ですが…」

「ふむ…残念じゃが30歳以下の未成年は今回同行することはできんよ これはおとなだけの宴会なのでな」

 そしてヤンに伝言を頼みます。自分の仇をとろうなどと考えるな、貴官には貴官にしかなしえぬ課題があるはずだ…と。また自分の秘蔵の2本のブランデーのうち1本をヤンへの土産として持って行ってほしい、とも。

 さて、ビュコックとチェン·ウー·チュン(38歳でめでたく大人の仲間入りですw)は辺境に飛ばされていたムライ、フィッシャー、パトリチェフの元ヤン艦隊幕僚3人を呼び寄せ、ある書類をヤンに渡してほしい、と切り出します。同盟軍宇宙艦隊から5560隻の船舶をヤン·ウェンリー氏に譲渡する、という契約書…。

「貴官らには書類とともに商品そのものを運搬してもらいたい 法令上の手続きは完了しているから心配いらない」

 そんな形式いらんだろ、ともっともなツッコミを入れるムライ。

「わからないかね?…むろんジョークだよ」

 茶化していますが、同盟崩壊後を見据えた措置に間違いありません。

 ヤンに後事を託すと共に軍人の最後の意地を見せるべく、ビュコックは戦場に向かいます。

「帝国のひよっこどもに同盟軍人の戦い方がいかなるものか教えてやろうではないか!」

 皇帝ラインハルト親政軍は帝国軍の元帥、上級大将のほとんどを動員した13万隻の大軍。対するビュコック提督率いる同盟軍は2万2000隻…ほぼ6∶1、正面からぶつかって普通にすりつぶされる戦力差です。

 同盟軍はまずありったけの妨害電波発生装置をばらまいて先行するビッテンフェルト艦隊を情報的に断絶。本陣の前衛ミッターマイヤー艦隊の前に現れて帝国軍を誘い出します。誘導する先はマル·アデッタ星系。二連の恒星が複雑に重力を掛け合い、不定期にスーパーフレアを吹き上げる危険な宙域です。

 小惑星帯に出来た回廊に引きこもり待ち受ける形を取る同盟軍。大軍の利を潰すビュコックの妙手です。

 無視して首都星ハイネセンを突くべき、という意見も出ますが

「だが歴戦の老提督がおそらくは死を賭しての挑戦 受けねば非礼にあたろう 他にも理由がないわけではないが予と予の軍隊にとってはそれで充分のはずだ」

 無視した結果後背からの不意打ちを受ける可能性などもありますが、やはり「皇帝ラインハルトは決して戦いを避けず、戦場には先頭を切って臨む」という矜持ゆえではないでしょうか。

 気象データからスーパーフレアのタイミングを見切り、戦術に組み込んだ同盟軍は着実に帝国軍に出血を強いて行きます。小惑星帯を大きく回って回廊出口を押さえようとしたファーレンハイト艦隊を伏兵·カールセン艦隊との十字砲火で退け、手薄になった帝国本陣を返す刀で襲う!

 鉄壁ミュラー艦隊が防御に割り込み、戻ってきたファーレンハイト艦隊と挟み込まれる形になるカールセン艦隊。しかしその隙にビュコック艦隊がラインハルト本陣へ向かう!が、まだミッターマイヤー、アイゼナッハ両艦隊が本陣前に立ちふさがる。

「同盟軍も善戦しましたがここまでのようですな」

 幕僚としてラインハルトの隣に控えるロイエンタールが呟きます。暫く考え込むラインハルト。

「敵はマル·アデッタの宇宙気象データを持っているのであったな?」

 まさか?

「全艦隊に緊急通信!!スーパーフレアにそなえよ!!」

 しかし一瞬遅く、スーパーフレアは戦場を直撃!両軍とも陣形が崩れ、組織だった行動が出来ない中、準備をしていた同盟軍は早期に復帰。陣形を整える間も惜しんで皇帝座乗艦ブリュンヒルトに殺到!

「心配はいらぬ伯爵令嬢 敵の攻勢はすでに限界点を越えている」

 その通り、帝国軍は統制を取り戻し、勢いの落ちた同盟軍を包囲殲滅し始めます。カールセン提督も艦ごと爆散。更にビッテンフェルトも戻って来て味方もぶち抜く勢いで突っ込んで来てw。

 勝敗は決しました。降伏勧告に応え、ビュコックからラインハルトに通信が繋がります。

「皇帝の御前じゃが酒を飲みながらで失礼する なにせわしらは自由の国の人間なのでのう」

 1本をヤンに渡し、残った1本のブランデー。

「皇帝ラインハルト陛下 わしはあなたの才能と器量を高く評価しているつもりじゃ」

「じゃがあなたの臣下にはなれん」

「ヤン·ウェンリーもあなたの友人にはなれるがやはり臣下にはなれん」

「なぜなら…えらそうに言わせてもらえば 民主主義とは対等の友人をつくる思想であって主従をつくる思想ではないからじゃ」

「わしはよい友人がほしいし誰かにとってよい友人でありたいと思う じゃがよい主君もよい臣下も持ちたいとは思わない」

「じゃからこそあなたとわしは同じ旗をあおぐことはできなかったのじゃ」

 民主主義に乾杯!と大見得を切ってビュコックとチュンの通信は切れました。

 野望の為に友を喪い、至高の道を孤独に進む男は何を思うのか。

 皇帝は残敵の掃討を命じ…。

 全てが終わった戦場。離脱する帝国軍将兵全員が起立、敬礼を捧げる姿がありました。

 自由惑星同盟軍はこれで事実上壊滅。ジョアン·レベロ議長は皇帝の歓心を買おうとした同盟軍人によって射殺。(こんな事した奴をラインハルトがタダで済ます訳ありませんが…)

 同盟は国家の体を成さなくなっていきます。

 イゼルローン奪還に沸くヤンたちの元にビュコック提督とレベロ議長の訃報が届く事になります。これでラインハルトに対抗できるのは名実ともにヤンだけ、という事になりました。

 あとは銀河帝国最大最後の敵、ヤン·ウェンリーを残すのみ。…その後は?文字どおり「戦わなければ生きていけない」ラインハルトはその後どうするのか?ほぼヒルデにのみ見せている勘気も以前より少しだけ強くなっているような気がしますし…。

 いやまあ原作読破してるんで知ってるんですけどね?オリジナルエピソードがちょくちょく挿入されてるので印象が変わって来そうw。

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