天幕のジャードゥーガル 2巻

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 シタラ…ファーティマが魔女となるまであと少し。「天幕のジャードゥーガル」2巻です。

 モンゴル帝国大カン チンギス·カン崩御から2年。次代の皇帝、大カアンを決める「総会議(クリルタイ)」。かつてない大帝国を継いだのは末子相続で遺産の大部分を継承したトルイ…ではなく、三男オゴタイ。

 チンギス·ハンの遺言はトルイを軍の頭とし、賢いオゴタイを全体の頭に…兄弟協力してモンゴルを統治せよ、というものでした。

 兄弟はこれで納得している模様です。とくに一番勢力が大きいトルイが賛同している事が大きい。

 ですがソルコクタニはこの体制は遠からず破綻すると予測しました。

「トルイも私も納得はしているの それでうまくいくのなら…だけど もろいものよ兄弟の絆なんて」

 具体的には次男チャガタイがオゴタイとトルイの間に割って入ると考えているようです。

「チャガタイ義兄さんの宮廷(オルド)にこっそり入り込んで義兄さんの動向をこれから逐一伝えてちょうだい」

「私の密偵になってちょうだい」

 …ファーティマにとんでもない事を頼みます。これバレたらそれこそ帝国を割る内紛の原因になると思うのですが、おそらくバレそうになったら闇に葬られるんでしょうね…謀略こえぇ。

 潜入の算段を整えている内に、ファーティマが持っていたジャダ石(動物の体内から取れる石…たぶん内臓の結石)を巡っての誤解からオゴタイの第六皇后ドレゲネと出会います。彼女も腹に一物あるようで…。

 ファーティマが次男チャガタイに拘束され、モンゴルの法を犯すな、なぜイスラムの習慣をいまだ捨てず強者(モンゴル)の法を無視するのか…と文句を言うチャガタイに

「あなた様にはおわかりにならないでしょうね」

 と返すファーティマ。チャガタイにしてみれば女や奴隷などの弱者を守る為、モンゴルの法を強く推し進めたい、という考えなのでしょうが、ファーティマのような人にとってイスラムの習慣はアイデンティティであって手放してはそれこそ立ち行かないもの。その辺の複雑な想いをファーティマの微笑から感じ取ったドレゲネはファーティマを助け、二人きりの場所で聞きます。

「モンゴルが憎い?」

 ドレゲネは別の騎馬民族の出身。その民族がモンゴルに降伏した事で奴隷として連れて来られていました。男たちは最終的にモンゴルに反逆して鏖殺。和平の印としてチンギス·ハンに嫁いだドレゲネの義娘クランが父の死の報を聞いたときの表情とおなじ顔をファーティマがしていた…それが彼女がファーティマを助けた理由でした。

「今ならもう解る 本当はどれほど悲しくて悔しかったか知れない けれどあの娘は自分の役目をちゃんと知っていたんだわ」

 オゴタイの后とされ、穏やかな日々に全てを許しそうになりながらも「帝国をめちゃくちゃにするような嵐を待って」いた!

 ソルコクタニとドレゲネの間で板挟みになり、ふと気付く。

「待って 私あの人の奴隷じゃない」

 全てを話すファーティマ…シタラ。

「きっと私もこの時を待っていたのです」

「しかし…私たちに何ができると…?」

「知恵がごさいます」

「どうか力をお貸しください 二人でなら嵐も起こせましょう」

 ようやく史実通りのタッグが出来ました。以後ファーティマ·ハトゥンはドレゲネの元で権謀術数の限りを尽くして行く事になります。

 総会議の最後、モンゴルは宿敵、金国を攻める決定を下します。首都開封に国民を追い込み、兵糧攻めにするつもり。

 ファーティマはトルイとチャガタイの間に不和を起こす事を考えます。

「そのためにはトルイ様の作戦が成功しなければなりません」

 しかしオゴタイ側で同じ事に気づいている者がいました。病身の第一后妃ボクラチン。仲の良い第二后妃モゲを通して総会議の内容を把握し、問題点を正確に指摘します。

「「トルイ家は強すぎる」」

 二人の賢者は同じ言葉を発します。片や帝国内に火種を撒く為に。片や隙を埋めて帝国の支配を盤石なものとする為に。

 モンゴルの支配の元でも幸せな人々はたくさんいます。またモンゴルを潰す為とはいえ多くの犠牲を強いる事になるのをファーティマはわかってしまいます。何も感じずに進むには彼女は聡明に過ぎ、それでも失ったものを想えばもう止まる訳には行かない。ファーティマは精神のバランスを保てるのか心配です。歴史をざっと見ても彼女これからいい事ないんだよなぁ…。

 

 

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