紛争でしたら八田まで 12巻

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 「自殺幇助ホテル」の噂の調査を頼まれた百合。別方面から依頼を受けた探偵ディディエと合同で調査する事に。

 宿泊客の中に診断書の偽造疑惑のある医師や自殺幇助団体の職員の顔があるのをディディエが確認、さらにホテル内に監視カメラの死角から出入り出来る部屋が…。

 結論として、ホテル·シュミッドは裏取引のレンタルルームとして機能していました。自殺幇助団体だけでなく、スイスに隣接するイタリア、フランス、ドイツのマフィアが参集し、利益調整を行う…やはり監視カメラの死角から回れる核シェルターが国際会議場と化していました。オーナー·ロルフの知らないうちに…。トラブルシューターとして雇ったマルコがロルフの妻カミーユの弱みを握り、企てた事でした。

「このホテルでは裏取引の秘密が守られる」

 ロルフの「顧客の情報を守る」矜持が完全に裏目に出てしまいました。奇妙な中立地帯としてバランスが保たれてきたホテル。

 百合たちがカミーユを説得する事でマフィアは一網打尽!…百合はマルコにスイス·デス(リフティングからのアッパーカット)決めたりしてましたがw。

「私は…娼婦だったの ホテルを仕事で利用してたからあなたに出会ったの」

 カミーユの秘密がこれでした。ですがロルフのホテルの信頼を取り戻す為、彼女は自ら身を引く事を選びます。

「短い間でも誠実なあなたと過ごせて誇らしかったわ」

「過去のキミが何者であれ 僕と一緒の時間を過ごしたキミはいつも最高に誠実だった」

「もう一度やり直したい 二人で一緒に自分たちに誇りを持てるように」

 ロルフはホテルを廃業、ゼロからの出発で罪に服するカミーユを待つ事に。

 スイスらしい覚悟に溢れた二人は必ず再起できるに違いありません。

 次の百合の任地は台湾。百合のルームメイト、ゲイのアレちゃんことアレックスの実家絡みの依頼です。

 アレックスの阿公…おじいさん危篤の報せ受けて実家へ顔を出すアレックスと百合。

「恥じるなんて…お前にはただ普通の幸せを…」

「“普通”?」

 アレックスはお母さんとの折り合いはあまり良くないようです。LGBTの抱える深い闇ですね…。

「父は長く昏睡状態ですが…稀に目を開いて言う言葉があるのです…『人形を捜してくれ』…と」

 お爺さんは台湾伝統の人形劇、布袋劇をやっていて、おそらく人形とはそれのこと。父母の家よりお爺さんの家で過ごす事の方が多かったアレックスなら探し出せるのではないか?と。

 アルバムや当時の新聞記事から情報を拾い出す二人。お爺さんが立ち上げた布袋劇団を特定します。さすが情報のプロ。

 ただ、座長の名前がお爺さん…ホアン·チェンホンではなくスー·ウェイ。初代座長がスー·ウェイでお爺さんは二代目らしい。

 劇団立ち上げは学生時代。二人の写真には台湾の英雄、鄭成功の人形が一緒に写り込んでいた。おそらく捜すべきはこの人形。

 二人が通っていた高校に手がかりがある、と睨んだ百合とアレックスは既に閉鎖された高校に侵入…。で出くわしたのがキョンシー!…のコスプレした学生たちw。

 心霊スポットとして有名なこの廃校でホラー動画を撮ろうと集まったそうで。…徴兵前の思い出作りに。

 あぁ、中国台湾の緊張状態。戦争の危機がここにリアルにあります。

「台湾は台湾人の国 何処の国にも領有されない独自文化を持つ一つの国家です」

 学生たちからこの廃校が取り壊される事を聞き、対策を講じなければならなくなります。建物の構造を見た百合には何か閃きがあったようで…。

「だから後は八田のチセイにおまかせを」

 台湾の複雑な民族構成や歴史観を、さらに複雑な背景を持つアレックスというキャラクターを通して浮き彫りにしようとしています。実際に国際情勢を研究しているブレインがいるのは強いですね。

 ウクライナ戦争とか習近平政権の挙動とか、時勢のネタを提供してくれるのはありがたいのですが、これドラマ化アニメ化には相性悪いよなぁw。面白いんだけど。

 いろんなところで取り上げられているみたいだし、わざわざ不得手な方に行く必要もないかな?

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