ツアコンエルフの常識をはるかに超えた旅行プランを文字通り体を張って実現させられる元社畜…なストーリーも残念ながら2巻で完結となりました。もうちょっと見たかったんですけどね…。
サラマンダーの出産…体内の火種石を引き継ぐ為、子が一人前になると親は死ぬ…、ドルイドの森でアルラウネ狩り…理想の女性の姿になるが種を植えられると苗床にされる…、サイクロプスの葬儀に参加…慣習に従わないとぶち殺される…等通常では絶対に入れない場所へのツアーを敢行してきたミュシカ·トラベル一行。
次のツアー先は「魔王島」。かつて魔王ノスフェラトが人類滅殺を目的に軍を挙げ、勇者に阻止された「人魔大戦」。その終焉の地です。
現在伝わっている歴史では人間軍と魔王軍は互角の戦いを繰り広げた事になっていますが、実は人間軍は壊滅寸前まで追い詰められており、勇者が魔王を封印する事で辛くも勝利を得た、とミュシカは語ります。
「だって私は勇者と一緒に旅をしてたから ある意味『勇者のガイド』だったの」
そもそも勇者の名前はヒデ…佐山英雄といい、日本から「神隠し」に会ってこっちの世界に連れてこられた…やったのはやはりミュトス。だからこの神誰かどうにかしろw。
転生特典でスキルをやる、と言われヒデは
「…話がよくわかりませんが自分はあくまでレスキュー隊員です ですから困っている人を助けられる力を下さい!!」
つくづく勇者気質です。そのまま行く先々で困っている人を助けて回り、いつしか誰からも認められる「勇者」となるヒデ。
そのヒデが魔王との決戦を行った場所…魔王の間がツアーの終点。
「…ああ、それともう一つ 魔王はまだ生きてるよ」
…魔族は人を食うのですが、人間側はどうせ襲われるのならその命を金にしよう、と魔族側に贄を売り渡すようになりました。魔族はそれで満足していたのですが、人間側は贄に魔族にだけ効く毒を仕込み、魔族抹殺を図ったのです。愛する者達を失った魔王は怒りのあまり人間制圧を開始…これが「人魔大戦」の真相でした。金に目が眩んだ人間のクソっぷりと魔王の怒りの正当性にグウの音も出ないですが、ヒデは「助けを求める人を見過ごす訳にはいかないんです」と魔王に戦いを挑み…勝利しました。このまま魔王が死ねば魔族は統率が取れなくなり、人間の勝利に終わる…。
「…あの ミュシカさん 自分が殴っておいてなんなんですけど…やっぱりこの人助けられないですか?」
「自分はレスキュー隊として苦しむ人を見捨てる訳にはいかないんです 相手がたとえ魔王でも」
ミュシカは魔力を注ぎ続ける事で仮死状態を維持する秘法を魔王に施し、その魔力源としてヒデを共に封印しました。
魔王の間には現在も勇者と魔王がその当時のまま、座り続けています…。
「今回のツアーの目的は三つあるの」
一つは魔力の補充。人と魔族がわかり合う世界にはまだ遠い。魔王が目覚めるにはまだ早い。
一つはこの真実を広める為。実際に見せないととても信じられないだろう。
「…最後の一つは?」
「もちろんヒデに会いに」
ミュシカの旅は世界を変える為の長い、永い旅の途中でした。本当に世界を変えるのは派手な戦いではなく、こういう地道な努力であるのかも知れませんね。ヒデが解放され、ミュシカと再び旅をする日はいつか必ず来るに違いありません。
まぁその陰でゴローがヒドい目にあっているのも間違いないのですがw。
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