medium 霊媒探偵 城塚翡翠 1巻

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 小説原作、ドラマも放送。「城塚翡翠」シリーズのコミカライズです。推理に霊能力使用とかノックスの十戒に正面からケンカ売ってますw

「ー先輩にちょっと奇妙なお願いがしたいんです」

「あたしと一緒に霊能者の人と会ってほしいんですよ」

 ミステリー作家香月史郎は大学時代の後輩倉持結花からおかしな電話を受けます。

 結花が酒の勢いで占い師に観てもらったところ、

「…女性があなたを見て泣いている」

 とだけ言われ。その霊がよい霊なのか悪い霊なのかは判断がつかない、とも。

 そこから彼女に怪現象が起きるようになります。寝ているときにふと目が覚めて…

「女の人がベッドの傍らに立っていて洟を啜るみたいに…泣いてるんです」

 …言われた事に脳が勝手に反応して幻覚作ってるだけでは?と思わないでもないですが、結花は占い師に相談し、「霊媒」と呼ばれる人物を紹介されました。

 …カモ認定されて毟る専門家に回されただけでは?とか汚れた大人は勘繰ってしまいますが、一人では不安な結花は先輩の香月を頼った、ということのようです。

 やたら高そうなタワマンの一室に案内された二人。

「倉持結花さんですね ーー私のことは翡翠とお呼びください」

 二十歳くらいの女性が応対します。ものすごい美人。「北欧系の血が混ざっているのかもしれない」とは香月の見立てです。

 翡翠は結花の職業(デパートの受付)を当てたり「最近 心当たりのない水滴が床に落ちていたりしませんでしたか?」とか言い当てて結花の家に行く約束をします。

 香月を別に呼んで、結花のために必要になるかもしれないから、と香月の信用を得ようとするなど、何か見えているのは間違いないですね。

 1週間後、香月と翡翠が待ち合わせて結花の家を訪ねると…呼び鈴を鳴らしても出ない。

「香月先生 ーー扉を開けてください 開かないなら管理人さんを呼んだ方がいいです」

 ーー結花は死んでいました。部屋には争った跡があり…。突然翡翠が倒れます。

「なにを探してるのーー?」

 という謎の言葉と共に。更に意識を取り戻した翡翠は

「犯人は…女の人です」

「泣き女ーー…」

 床には水が落ちていて。

 捜査担当の鐘場警部と知り合いで捜査協力の実績もある香月は操作の状況も知らされました。容疑者は空き巣の常習犯とストーカー。

「ーー捜査線上に女性は浮かんでいませんか…?」

 香月、翡翠の言うことを信じ始めていますね。現状、容疑のかかっている女性はいないようですが。

 翡翠はこれまでに何度か泣き女の霊障に出会ったことがありました。

「その依頼者は全員がその話をした1年以内に亡くなっているんです」

 それらの現場には心当たりのない水滴が落ちていた…。

「想像ではなく…泣き女が実在する?」

 泣き女を見ながら結花の死を防げなかった事を翡翠は後悔していました。

「ーー香月先生…お願いします “私の力”を使って誰が倉持さんを殺したのか その犯人を突き止めてほしいのです」

 香月は考え始めます。

「最初から疑問なことがありまして 泣き女という怪異が存在するとして 結花ちゃんは泣き女に泣かれたから死んだのでしょうか? それとも彼女が死ぬことがわかっていたから泣き女が泣いたのでしょうか?」

 僅かな事実から仮説を組み立てていく香月。泣き女は「その人が死ぬとわかっているのに見ていることしかてきないから泣く」のでは、と予想し、現状の二人の容疑者は殺意を抱くタイミングが合わない、と考えます。

 そして霊媒としての能力で翡翠が結花の霊を呼び出し…。

「あの子…ずっとなにかを探してる…なにか落ちちゃったみたい…」

 さすがに犯人に直接繋がる証言は取れませんでしたが、香月は犯人の目星がついたようです。

 犯人は結花の友人小林舞衣。

 結花のストーカー化した男が好きだった舞衣は、彼を悪し様に言う結花に腹を立て、衝動的に殺してしまっていたのでした。

 揉み合っている内に舞衣が眼鏡を壊してしまい、破片を探す姿を死にかけていた結花か見ていた…という状況だったようです。

 翡翠は香月に感謝します。

「これまでも助けられなかった一人が大勢いるんです ただ悩んで苦しんで後悔するだけで… けれど今日先生のおかげで少しだけ救われた気がするのです」

「…翡翠さん 翡翠さんは霊媒です 霊媒というのは生者と死者を媒介する存在です だとしたら僕はあなたの力を論理を用いて現実へと媒介すらお手伝いをしましょう」

 霊から情報を得る霊媒と、その情報を解釈する探偵のコンビ、めでたく成立です。

 死んだ本人から話が聞けるなら即犯人がわかってしまうんですが、そこは直接犯人を見ていない、とか話す前に霊媒時間切れとかうまいこと誤魔化すようですねw

 あとは霊から得た情報を警察にどう説明するか?オカルトと公的機関の齟齬を埋めようと四苦八苦するのは「虚構推理」でも取り扱っている問題ですね。あちらだと怪異がやらかした事態を怪異抜きで説明する、という「medium」とはちょうど逆のアプローチになりますが。

 翡翠がみる霊視も必ずしも正しいものではない(霊からの視点でしかない)のもうまく情報を制限していますね。

 死者の情念を背負うにはあまりにメンタルが弱いように見える翡翠。ここまでどうやって折り合いを着けてきたのか疑問ですが、おそらくどこかで限界を迎える事ど思います。そのとき支えるのは…香月かな?

 その辺がひとつのクライマックスになる気はします。原作小説は寡聞にして読んでいませんので、後の展開を楽しみにしたいと思います。

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