黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ 4巻

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 舞踏会当日。エルシィをどうにか格好つけようと必死のメアリー。とりあえず顔に白粉塗りたくってますw

「ホントは米粉や澱粉がいいのだけと乗りが悪いし黒ずんだりするから…パール·パウダー!真珠を酸で溶かした高価な白粉よ!」

 あ、良かった。鉛白じゃないんですねw

 エルシィはエルシィで舞踏会用のドレス着たまま台所仕事しようとするし…。

「こんなカオ塗ったアタシはアタシじゃねえだ〜〜お仕事させてくだせええ!!」

「そんなキレーなドレスこれから一生着れないよ!」

「汚したら地獄に落っこちるよ!」

 いつの間にかメイドたちの希望の星にまでなっています。

「あたい…カオ真っ白でもエルシィは見間違わないよ きれいな服着ててもエルシィはいつものエルシィだよ…」

 メイの説得でなんとか舞踏会に行く気になったエルシィ。

「『また明日』だ…」

 舞踏会にしっかり潜り込んでいる渇き…〈ジャージダ〉。

 エルシィ…〈アトカース〉に教育係としてメアリーがついている事も調査済です。ただ剣を振るうだけではない、暗殺者として必要な事は一通り出来るようですね。

「前もって集めた情報からして今の〈アトカース〉は私が呼び出してもおとなしく応じるとは思えない でもそのメアリーという女を餌にすれば…」

 メアリー、エルシィ、パーシーの3人で訪れた舞踏会ですが、舞踏会のホストはケンブリッジボート部OB、ダッジモント卿…。ボート部エースのパーシーはお気に入りで、しかも令嬢ペネロペもパーシーにご執心で…3人まとめて夕食に招待されました。エルシィに食事のマナーを教えている暇はなかった!パニクるメアリーw エイダがサポートとしてメアリーの代わりに食卓につき、パーシーと二人でエルシィの粗相を必死にフォローw

 …この様子を見て〈ジャージダ〉はエイダをメアリーだと勘違い。写真なんかそうそう撮れない時代ですからね〜。顔がわからなくても仕方ない。

「私の何が欲しいのだ?」

「別に…ただ『餌』になってほしいだけ」

「今までいろいろと災難に遭ったが…剣を突きつけられたのは初めてだ」

 「メアリー」を人質にエルシィを呼び出そうとしますが…。

「私がエルシィなら一度や二度会っただけの知り合いを助けるためにここへは来ない」

「私はメアリー·シェリーではない エイダ·ラヴレス 君はどこかで人違いをしてしまった」

 知りすぎたエイダの口封じをしようと剣を振るうジャージダ。しかしそのとき扉が開く。

「お呼びですだか…? エイダ様をお返しクダサイ」

 来ました、エルシィ。

「は…ははは どうだい?こいつ来たよ…人違いで連れてきたお前を助けるために… ここに来たよアトカースが!!」

 膝で地面を回転する〈月動〉で襲いかかるジャージダ! 飾ってあった剣を取り、同じ〈月動〉で対抗するエルシィ!

「エイダ様 ご無事ですだか!?」

「メアリーと間違えて連れてこられた!」

「知っとりマス 奥様は近くにいらっしゃったカラ」

「じゃ…本当に君は私を助けるためにここへ…」

 真っ直ぐですね、エルシィは。

 戦いつつ調べ上げた事を話すジャージダ。

アトカースの首を村娘のものとすげ替えた事まで…ディッペル博士、全部喋ってるじゃないですか!名誉欲の塊だあのおっさん。

「アタシが死体…」

 動揺するエルシィ。その隙に斬りつけるジャージダ!

 エルシィ宛のメッセージを読んだメアリーが部屋を探し当てた時にはエルシィは虫の息でした…。

「その女もアンタも死ぬ 死ぬのは怖いだろう?叫んでもいいよ」

「私は死ぬのは怖くないの…『死』とはあんまりにも長くつきあってきたから…」

 最期に、とエルシィと話すメアリー。

「…奥サマ 靴紐を…結んじゃ…くれねえだか…」

 ディッペル博士から、血の巡りが悪くなるから絶対に結ぶな、と言われていた靴紐を最期だから結んでほしい、と。

 靴紐を結ぶと…スッと立ち上がるエルシィ。全身の出血が止まっている?

「…誰…? アナタ…」

 まるで別人のような目つき、足取り。まるで踊るような。

 迎え撃つべく〈月動〉に入るジャージダ。

 エルシィも回転に入る!

「落ち着け よく見ろ」

「剣先を観察して軌道を読め」

「去なせ 空振りさせろ」

「相手より速く回るんだ」

「そうすれば斬撃を多く放てる」

「お前は勝てるのだ!」

 かつてジャージダが教わった言葉。しかしエルシィはジャージダより速く回り…一旦止められた回転は再始動することなく。

 その言葉を教えた相手は…アトカース!

「おまえはもう剣を握れない 二度と回るな もし回るなら脚も斬る」

「なんだよう…なんだかわかんなくなっちゃったよ… アトカース姉さぁん…私…大好きだったんだよォ…教えとくれよゥ… アンタは違うヒトなのォ…?」

 すっかり心折れたジャージダ。エルシィ、止めは刺さずにその場を去ります。

 別人のようにシャッキリしていたエルシィですが、舞踏会が終わってパーシーが靴紐を緩めてやると…

「アタシ ハラが減っただよ奥サマ」

 のん気な事言っているエルシィw

 謎が深まったエルシィについて、創造者のディッペル博士に問い質そうとするメアリーですが、その日から博士は不在…。プランタジネット舞踏会の期日は迫ってきます。

 そんな中、エルシィとパーシーの距離が縮んでいくのを感じたメアリー。

「今度の舞踏会で…パーシー様と踊れたら…嬉しいなって…」

「いい加減にしなさい!エルシィ!本も読めない怪物がパーシーと踊れるわけがないでしょう!?」

「アナタがパーシーと踊ってどうするつもり!? 怪物のくせに!」

 激昂するメアリー。…言ってはいけない事を…。

「お…奥サマ 怒らないでくだせえ… アタシはすぐにいなくなるで…」

 ジャージダがディッペル博士から聞いたそうです。エルシィの体は夏になって気温が上がれば腐敗が進み、ひと月ほどで死体に還る…と。

「パーシー様にも奥サマにも…なんのごめいわくも…かけねえだよ…」

 悲しげに笑って部屋を出るエルシィ。

 メアリーは衝撃を受けていました。今まで何度も助けてくれたエルシィに酷い事を言った自分に。

 そして更に衝撃を受けたのは

「そんなエルシィが死んでしまうと聞いたとき…私はね…私は ホッとしたのよ! ああ私の息子はこの怪物とどうにもなりはしないんだって」

 醜いのはどっち エルシィと私の心 おぞましいのはどっち 私だ!!

 藤田先生は「月光条例」にて「マッチ売りの少女」の作者アンデルセンにも似たような事を言わせています。苦労をかけ通しだった母が亡くなった時、ホッとした、と。

 「これで母が苦しい目に会うことはもう無い」とか言っていましたが、アンデルセンが心に負っていた重みが無くなった事を喜んでいた事は絵から明らかでした。(もちろん実際にアンデルセンが母の死をどう思っていたかは知る由もありません) 人はそのようなどうしょうもなく勝手な心を持っているものなのだ、という事なのでしょう。

 しかしメアリーはここから変わります。パーシーの事でホッとはしたけれど、エルシィが自分の中で大きな存在となっている事は間違いない。

 エルシィが本当に寿命で死ぬのか、確かめなくては!

「私は〈怪物〉だもの ひるまない!」

 枷がなくなったメアリーは自由に動き始めます。ディッペル博士がその理論を実証できず、大学をクビになっている事。独力で研究を続け、相当な借金もある様子である事。何よりエルシィがディッペルの城に担ぎ込まれた時にちょうど死んだ若い娘、というのがとこを探しても見つからなかった事…。

 疑問を持ったメアリーはディッペルの城に入り込み、実験室に入ろうとします。

 同じ頃にエルシィは一人で包帯を換えようとしていました。首の傷跡を見ないように…。

 さあ説明のつかない事に説明が付き始めました。

 「全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる」でしょうか。

 「怪物」である事がよい方に向かい、メアリーの精神の爆発力となっています。こういう事があるから、ネガティブなものを全部取り除くというのもベストではないのかも知れないと思えます。良いも悪いもひっくるめて人間なのかなぁ、と。深いなぁ。

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