BEAT&MOTION 1巻

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 新人発掘オーディション番組「MILLION TAG」優勝者、藤田直樹先生と編集者林士平氏の作です。藤田先生はこれが連載デビューの新人ですが、林氏は「SPY×FAMILY」「チェンソーマン」等人気作を多数輩出している名伯楽。これは行けるか?

 小学生の頃、アニメーション制作に目覚めた竜彦。絵を動かす事に夢中になっていましたが、同級生に気持ち悪がられた事で封印…。

 その心の穴をバンド活動で埋めようとしましたがまるで上手くならず。

「初めて才能の無さを痛感したのは夏祭りだった 身内以外誰も聞いてなかった 子供が耳を塞いでた 後続のコビーバンドが全てをかっさらっていった メンバーの誰もそれらに気付いていなかった」

 …い、痛えw 何かに打ち込んだ事がある人なら刺さるところがあるかと思います。

 大学生になった頃には自分たちはプロにはなれない事が身にしみて分かり始め…。

「目標に続く階段はクリアに見えてくるのだがーー前進すればする程後退している気分になった」

 ステップが見えて、目標への遠さが分かるのはそれだけ上手くなった証拠なんですが…そこで折れてしまうのもよくある話。

 竜彦たちのバンドは解散することになり、そのラストステージはほとんど客のいないホール。呆気ない解散。

「誰も本気じゃ無かった 僕も皆も ただ何か目指してるふりを続けているのが気持ちよかったんだ」

 失意の竜彦か参加した飲み会で「小説家になりたい」と語る友人に

「『何者か』ねぇ…まぁいいか 夢は見るだけならタダだしな」

 いろいろ溜まったものが溢れた竜彦の一言に「だっさ」と反応する女性がひとり。

 飲み会明けに連れ出された竜彦はその女性に車道に蹴り出される!…まぁガードレールあった上に赤信号で車は止まってたんですがw

「自分にもやりたい事がある癖に叶わないからって…腹いせに他人の夢踏みにじってからかって過ごしてんだろ あーだっせえだっせえ!! ダサすぎて笑えてくるわ!! お前みたいな屈折した嫉妬心持ってるだっせぇ男見てるとさ〜〜!! 殺したくなってくんだよなあ〜〜!?」

 …言いたい放題です。

「お前はラッキーだな!! 何せ今日一回死ねたんだから!! 本当に死んだと思ってやりたい事の一つでもやってみろよ!!私に感謝しながらな!!」

 ホントに言いたい放題だな!?

 ただこれで竜彦は踏ん切りがつきました。他人に何と思われようが好きな事を貫けばいい。アニメーションをもう一度やってみよう!

「もう誰かのせいにしたり出来ない これからは全部僕の責任だ わくわくする」

 ずっと好きだったアマチュアミュージシャン“ニコ”の曲を聞きながら描き続ける。

「…何?竜彦 絵とか描くの!?」

 大学で問いかけられて

「…うん 描くよ」

 こう返せたのは竜彦の成長でしょうか。

 こうして出来た自主制作アニメーションをネットに公開すると…バズった!

 しかもニコからDM。ミュージックビデオを一緒に制作して欲しい、と。

「ニコと会える!?」

 で、会ってみるとそのニコが件の暴力女!

「初めまして!!柏木ニコです!! ヒコタツさんのアニメーション本当に素敵でした!!」

 竜彦のこと忘れてるしw

 最初は適当に話して切り上げようと思っていた竜彦ですが、ニコとの会話は本当に楽しくて。

「私 人が一生懸命取り組んでる事をからかう人って大ッッ嫌い!!」

 昔、からかわれて絵を描くことを辞めた話に題する反応で、ニコはまるで変わっていない、一本筋の通った人間であると気づく竜彦。

「ニコとは対等かそれ以上の存在にならなければ 天才の邪魔をする人間には絶対なりたくない ただ凄い人に闇雲に近づくような人間にもなりたくない!!」

 全力を傾けてMVを制作する竜彦。

 絵コンテ完成祝いの飲み会の席。

「酔っ払う前に言っておきたい事があるんだけど良いかな」

 …蹴られた事話す気ですね。

「…あ 生2つ追加で あっ やっぱ3つで」

 …なんか勘違いしてますね。

 前置きを竜彦が話す間にガンガンピッチが上がるニコw

「ありがとうニコ!! あの時『死んだ気になってやってみろ』って言ってくれたお陰だよ!!」

「…ん? あ〜〜〜!? お前あん時の糞野郎か!!」

 今度は正拳突き!?

 どうも相当飲んでたニコは、この辺りの記憶をすっかり飛ばしているようですがw

 そんなニコについにレコード会社からのオファーが!

 しかしそれはMVも全てレコード会社の管理下で作る事を意味し、つまり竜彦のような素人が入り込む余地は無くなる…。

 絶対竜彦と作る、と頑張るニコですが、ニコが自分に気を使って喜べない方が悲しくなる、と返す竜彦。

「僕も頑張って有名になって必ず追いついて…主題歌だって劇伴だって全部頼むから!! それまで待っててよ!!ニコ…!!」

 ニコの新曲「東京UMA」のMV制作は一旦中断。彼女はレコード会社「マホロバレコーズ」の高嶋のオファーを受ける事になります。

 この高嶋もなかなかヒットを生み出せない、鳴かず飛ばずが長い人材のようです。

 竜彦が紆余曲折あるのはもちろんですが、実はニコも中学時代から音楽活動を続けて来た事が示唆されており、天才的とは言っても平坦な道では無かった事が伺えます。

 本作は、これら真っ直ぐ進めない者たちの進む様を描いていく事になるかと思います。

 さて、本作はなんとNetflixでのアニメ化配信が決定しています。えらいビッグプロジェクトですね。コケる事が許されませんが、特に「B&M」の場合、音楽とともにMVにも気合入れなくてはなりません。「ぼっち·ざ·ろっく!」は曲を作り込んだのも人気の理由でしたから。

 藤田先生も気合が入っている事は感じられます。最初の方では少々線に迷いが見られたのが1巻終盤では大分イイ線になってます。成長がひと目で見られるのはいいですねw

 さあこれであっさりデビューできる訳もなく、まだまだ障害が立ちはだかると思います。ニコみたいな喜怒哀楽ハッキリした娘は見てて楽しいので、襲いかかる困難に負けずに頑張って欲しいですね。

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