明日の敵と今日の握手を 3巻

 すやすやと眠っているアメリア。隣でジェーンが新聞を読んでいて、アメリアのモーニングコールは…地響きの如き弾着音。

 前巻の宣告どおり、アメリアは協商と皇帝同盟の最前線に観戦武官としてぶち込ま…もとい派遣。ジェーンはその付き添いw アーノルドも一緒に塹壕暮らしです。

 同盟の凄まじい砲撃が続きますが塹壕はよくその威力に耐え、協商側はその轟音と振動の元での生活が日常化…おかしくない?

 皇帝同盟の国力は落ちているはずなんですが…。物量は勿論、下士官や訓練された兵士…実際に戦場を回す人員の損耗は隠し難く、だが攻撃に衰えは認められない…。

「なんか戦艦の主砲に似てますね」

「戦艦?」

「艦砲射撃といいますか なんかその音に少し似てません?」

 皇帝同盟側は空中戦艦隊を投入。協商側長距離砲陣地を破壊していきます。

「これの どこが 皇帝同盟衰退なんですかね!?」

 さてその頃ハラルドはブレタニケ海軍提督ラッセル男爵と面会。

「朝刊を読みましたが…随分と『苦戦』なさっているようで」

「左様 我が国の新聞には手を焼きますな 指導に悩むところ大ですよ」

 …本当にヤバい戦況ならいくらでも統制が効くはずで、これは軍上層部が率先して苦境を宣伝させているに等しい。

 で、出されたお茶が『ミットル帝室』御用達。ミットルとは同盟構成国であり…要するに皇帝同盟内部のそれなりのところとパイプがあることのアピール。

「分かってる人間同士だと 話ほんと早くて楽だなあ」

 …どす黒いなぁ。

「で? こんな新聞記事が出せるんだ …落として上げる続報は?」

 ハラルドが遠慮なく切り込むとタイミングよくその続報がw

 ブレタニケ空中艦隊が対空部隊が留守にしている間に皇帝同盟砲兵陣地を襲撃、これを撃滅!

 これ狙ってたのか!

 更に次の機会があれば誰か立ち会わせたい…と申し出るハラルド。誰が行くのかはもう決まってますが。

 で、その『誰か』アメリアが同乗したのが巡航戦艦モスバーグ。どうも有名なイノシシ戦艦だったようでジェーンは逃亡w 最前線の狂気をたっぷり堪能したアメリアは、ハラルドに呼び戻される事になります。

「合格おめでとう」

 『国際関係研究院』という学校への国費留学が決定したそうで。試験とか受けてもいないんですが…。

 ちなみにこの学院は官公庁の職員が通学しやすいように、との配慮から『官公庁の定時外』の授業が基本であり…要するに副官の仕事はやりつつ学校に通え、と中将殿は仰っておられる!w 自分はできたからやれ、の精神…ハラルドほど有能な人間はそうそういないんですが…。

 そして大学院の入学式。式というほどのセレモニーは無い(欧米の学校ってそういうものらしい)のですが、

「ドラゴンフライ皇国 豺狼のごとき機会主義者が本学とは 皇帝同盟に公然と秋波を送り続けている連中 こともあろうにその一員を我々の朋友として受け入れよ、と? なぜここにこんな奴が?」

 散々な言われよう。大半は事実(中立国ですから)なのでしょうがないのですが、自己紹介を求められて…

「ええと あまり経験は… つい先日までモスバーグに同乗させていただいたぐらいでして…」

 それで『戦場帰り』として認められたらしい。急に態度が柔らかく…てかモスバーグどんだけ勇名を馳せてるんだw

 おなじ体験をもつ同士で出来るコミュニティ(塹壕のお友達)に受け入れられる事には成功したアメリア。

 ですがこの学校、生徒の交流を奨励するために毎週ディナーの席を設けるそうで、しかもそれは生徒の自主性に任せる…つまり生徒の持ち出し。「ワイン係」と呼ばれるそれは大体各グループの最年少が担当する…はいアメリアドンピシャ。

 当然彼女にそんな金があるわけ無く…。

 悩んでいたらハラルドが「機密費使えばいい」と。駐留武官の機密費使い込みをぶっ叩いた人が…。「10年後も付き合うべき相手と10年付き合える」人脈を作るためなら構わないそうです。

 この国際関係研究院というところは人脈をつくる事…またその作り方、というかその辺のめんどくさいお約束を教え込む…ちょっと違うな、気付かせるチャンスを与える場のようですね。気付かないボンクラはそのまま卒業していって上に上がれずに終わる、と。

 出された料理ひとつ、ワイン一杯に意味があるとかまったく気が休まらない…海原雄山の集団か何かか?

 で、ハラルドはこの辺を全部分かっていて、仕込みを済ませてアメリアを放り込んでいた節がある。最前線に放り出したり、ワイン係にさせられる事も予想できていたでしょうし。 …これは世話焼きの良い上司なのか?悪魔が後ろからいいように操っているようにしか見えない…w

 更にアメリアは、中立国を通して皇帝同盟側に流れている協商の物資の調査(密輸ではないです一応)名目でハラルドと共にミットル帝国へ。

「風見鶏をするにしても品位と狡猾さは欲しいものだ 要は信用だ 信用されること ただそれだけが国家にとって欠くべからず最大の資産なのだから」

 実は機密費関連で物資を回していた役人たちが軒並み切られ、ルートがズタボロになっていたところにハラルドが入り込み、ルートをそっくり乗っ取る算段だったようです。

「祝·皇帝同盟向け密輸企業設立!」

 あああ密輸って言っちゃってるしw

 しかし外交の現場って怖いですね。言ってる事と理解してる内容がまるで違うとか…『コードの理解』大事。

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