ドリフターズ  7巻

 実際にこの手に取るまで存在を全く信用出来なかった「ドリフターズ」7巻。ホントに出ましたw

 サルサデカダン会戦、人類軍大敗走で殿を引き受けた豊久とドワーフたち。エンズ土方歳三に敗れ、止めを刺されようとしていたところ…戦闘機紫電改が吶喊! 胴体着陸どころじゃない、ほぼ墜落です。

「戦闘301空『新選組』隊長 菅野直 見ッ参!!」

 …あー、すごいタイミングですごいバカが飛行機に乗って現れた…。

「…何…新…選…組…?だと…?」

「新選組っつーのはな 近藤勇が率いる幕末の京の都を守ってた なんかすごく強くてかっこいい無敵剣士です」

 なんか警戒して今にも斬りかからんとしていた土方に、知らぬとはいえ新選組ベタ褒めの菅野w …どうにもその内容が「燃えよ剣」に代表される司馬史観バリバリなのはご愛嬌w 大切なのは後の時代に新選組の大ファンがいる、という事実。 ほら隊士の霊も土方さんも何だか対応に困ってる。そりゃ本人たちの視点では、自分たちは負け続けて北海道まで追い詰められた挙げ句に討ち死にしただけですからね。

 更に菅野、黒王兵に対して

「ウルセーッ 何だテメーら 人が話してる所で謎の言葉でギャーギャー 日本語話せなきゃ死ね」

 紫電改に詰め込んで来た(!)獣人軍団、通称のらくろ兵団を出して対抗! いい感じに状況が無茶苦茶になったところ…。

「やっと やっと捨てがまれち…胸ば晴れて死ぬれる思うたに ないごて…邪魔ぁしよる…」

 死に場所を邪魔された事を怒る豊久。そこに菅野はキレます。

「こちとら死にたくなくて死んだ奴 散々見てきてんだぞこの野郎あぁ!? 命を大事にしない奴は全員ブッコロス」

 無茶苦茶ながら無駄死にを否定する菅野。ただし紫電改ぶっ壊しちゃったので脱出手段ないんですがw

 ジリ貧の豊久たちに土方が突如味方して黒王兵を滅多斬り!

「新選組(おれたち)がいつしくじったか そんなの決まってらぁよ 勇さんよぅ 妙な知恵つけてバカをやめた時さ」

 人の都合で使われる状況に疑問を持ったか。

 豊久が乗ってきたドラゴン(たつお)の乱入でどうにか脱出する一行。絶対重量オーバーだと思うけどw

「行くか!?」

「行くわけが無ぇだろ」

「はは んだな!!」

「当たりめぇだ 薩奸」

 ひとり残る土方。いや、みんな一緒か。

「もう新選組(おれたち)が使われるなんざ うんざりだ どこの誰にも」

 歩き出す土方。不敵な笑いと共に。

 

 一方廃城。信長からの一報が童貞ことミルズの元に届きます。

「漂流者軍敗退!! サルサデカダンが…ま原が抜かれた!!」

 動揺する事務方メンバー。

「伝書を…ねっ ま ま まずね 伝書を最後まで読もう!! 信殿が送ったんだよねっ じゃじゃじゃじゃじゃあ続きがあるよねっ!?」

 動揺しながらも的確に情報を取り出していくミルズ。短い文面から信長たちが敗退したとはいえかなりまとまった戦力で廃城に向かっている事、漂流者で生死不明は豊久のみ、など確定し、籠城戦を想定して物資の集積の計画を立て始めます。

「みんなサルサデカダンで戦って負けた 僕らはここで 計算尺と地図と台帳で戦うしかないじゃないか」

 …思うに、ノブはこの洞察力と人の話を聞く力を見て、廃城をミルズに任せたんじゃないでしょうか。

 頼りになることがわかったのか、エルフたちの事務方ドリフに対する当たりが少し柔らかくなったような…いや、メシが豪華になったとか、女エルフに無理矢理寝所に引っ張りこまれそうになってるとか、いまいちコミュニケーションが取れてない感じですがw

 そのノブたち。雨に降られた敗走。心が折れる瞬間。

「ここは危険です 死地です これ程の好餌 あの人が…あいつが 見逃すはずがありません」

 与一が言うあいつ…。

「そぉだよ!!俺だよ!! 与一!!よく判ってるじゃあないかあ!!」

 それは義経。与一の元御大将。漂流者軍が負けると見切って、逃げ帰る軍の動きを予測して待ち受けていた!?恐ろしい程の戦上手。

「うん よし じゃあ 死のか」

 与一、進み出て土下座します。

「どうか お見逃しを 願いたて拝…」

 却って怒りに燃える義経。

「よせよ!! どこに行った どこにやった 平方武者を射堕とし回った那須資隆は 船頭人足も下女も童も問わずに射落とした与一はどこに!?」

 そこに一か八かの賭けに出る信長。

「だから 兄貴(頼朝)に負けたんじゃないのか」

 戦が強いだけの人間には人はついてこない、そういうのは敵がいなくなった時点で仲間に始末される。与一はそれを試している。お前はあの頃のままなのか、それとも違うのか。

 更に与一が言い募る。

「見逃した方が『面白い』ですよ 義経様 変わった方が面白いですよ 義経様」

「『その方が面白いから』そんな理由で裏切りを打つ奴いるかね」

「います 一人だけ知っています」

「俺がおっ死んでて 俺が『廃棄物』になってて そんなもんどうでもよくなっているとは思わんかね」

「あなたが奥州藤原なんかで死ぬわけないでしょ」

「良くわかってるじゃないか」

 …針の穴を通すかのような交渉は上手く行ったようです。「その方が面白いから」というものすごい理由で黒王軍団と手を切ってしまった義経。当然ながら黒王の手下であるモンスターたちは帰ってしまいます。義経は一人になってしまいました。

「ほうず気に入った お前おもろい」

 木いちごじいちゃん…ハンニバルです。

「ノブよ わしはこいつと行く」

 信長は廃城に篭るつもりですが、籠城戦は城外に野戦軍がない限り落城する…。

「ぼうず お前に足りない物をやるよ わしの脳みそをやるよ」

 黒王軍は人間根絶を掲げて進軍しているが、実際そんな事をしようとすれば何十年、何百年もかかる。今の「破竹の快進撃」では取りこぼしがえらいことになっている…。

「ではじいさんは俺と その流民どもを束ねて 黒王の背後をメチャクチャにしてやろうと」

「なあなあ あのさ あのな 坊 おじいちゃんといっしょに国をおっ建てんか」

 …義経の国とか恐怖しかないんですが。

 「飛龍」まで帰還した菅野。豊久も包帯巻かれて眠って回復してます。人間と思えない回復力ですが実際菅野と元気に殴り合いしてますので…。

 腹減った、と言う豊久に

「食事はまだ先だ 今は勉強の時刻だ 大尉逃げるな」

 多聞です。豊久にも菅野にも等しく講義を受けないとメシやらん、と。一応トヨは怪我人ですよ?

 スキピオも交えての講義は関ヶ原の戦況分析。最初の布陣を見せて東軍西軍どっちが勝ったか、という多聞の問いにスキピオはいくつかの質問の後、

「勝ったのは東軍 断言できる 戦の推移も判る」

 小早川の裏切りまで当て、言い切ります。

「雑軍の末路の典型である つまらない戦争だ」

 二千年分の戦の知識を吸収し、更にその先へと行こうとするスキピオ。廃城へ戻ろうとする豊久を止めます。 あ、いや止めるの自体は菅野も多聞もです。トヨに籠城なんかできない、とw

「守城で必要なのは外部軍だよ それが無い籠城は絶対に敗亡するよ」

 奇しくもハンニバルと同じ事を。

「城に戻るよりはるかに有為な事を 君等と私等でしでかさないか 二千年後の戦を」

 黒王軍の弱点とは食い物だ、とスキピオ。

 食料を生み出す黒王のいる最前線から後方へ食料を送らなければならない、文明の裏付けのない黒王軍の矛盾。

「だからそのにわか文明ごっこを しっちゃかめっちゃかのぐっちゃんぐっちゃんにしてやろうと思ってな」

 悪〜い顔のスキピオw

 豊久と菅野と獣人軍団で黒王軍の糧食集積地にゲリラ戦を仕掛ける!

「撃て 撃て どんどん撃て!! 叫べィ 鬨じゃ 鬨ば作れ! 火ばかけい 一陣悉く灰燼とせよ」

 楽しそうに火をかける豊久。菅野は空から爆撃!

「よか!! 逃げっど!!」

 活き活きしてんだよなぁ、トヨw

 ゲリラ戦は成功していますが、スキピオと多聞はあまりいい顔はしていません。

「とにかくわすかでも少しでも寸刻でも一刻でも 時をかせがねば」

「一兵でも釘付けにするのだ でなければ廃城がもたん」

「廃城が落ちればおしまい!! 全ておしまい!!」

 つくづくキレキレのセリフ回しがカッコイイ。読んでいて気持ちイイのは他の追随を許しませんね。

 おそらくネームに凄い時間がかかっているものと思います。火浦功先生…この人も遅筆で有名なんですが、こちらもも原稿を書いては消し、書いては消しを繰り返すそうで。

 ある小説で主人公が石拾ってヘリに取り付いてパイロット殴り倒して落とす、という流れを一通り書いて、その後で主人公が石を拾って「よし」って言った次の行でヘリが落ちている…という風に書き直した、なんて話がありました。平野先生もこれに近い事してるんじゃないかなぁ…と思っています。

 ゲリラ戦と野戦軍の糾合を同時進行している漂流者軍。果たして廃城の防備は間に合うのか?そして8巻が出るのは何年後かw

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