
1970年代大人気を博したアニメ「デビルマン」。その原作…というかアニメとほぼ同時進行のコミカライズ…と言うのも語弊があるな…両方とも企画段階から永井豪先生が関わっていたバージョン違いとでも言うべき存在です。
で、その漫画版。人間とデーモンの血みどろの生存競争を描く本作は圧倒的な熱量でそのストーリーを描き切りました。当時の豪ちゃん先生は「デビルマン」一話上げる度に熱出して倒れていたらしいので、どれだけ力込めて描いていたのか…。
その「デビルマン」、先生自身による外伝スピンオフ、更に他の先生方によるアンソロジーもそれこそ星の数ほど作り出されています。そのひとつがこの令和の世になってから上梓された「デビルマン外伝-人間戦記-」。
描くは古匠の風格、細野不二彦先生。「太郎」「ギャラリーフェイク」から現行連載の「バブル·ザムライ」まで力量に文句なし!更にこの人、クリーチャーデザインもオリジナリティ、完成度共に高く、その意味でもデビルマンを描くのにピッタリと言えましょう!
「人間戦記」の主役は不動明ではなく、その取り巻きの不良たち。主に山田六平ことドス六の視点でストーリーが進みます。
「わが名はゼノン!!悪魔王ゼノン!!」
全人類への悪魔王ゼノンの宣戦布告から物語は始まります。
「頼む!美樹を 牧村家を護ってくれ!オレの代わりに…!」
明のテレパスを受けたドス六。明と長く一緒にいたためか、元からそのような素養があったのか。デーモンとの戦いに赴く明の後顧の憂いを断つべく牧村邸へ向かうドス六とメリケン錠。
牧村邸を襲ったヘビ悪魔を始末するのに不良たちが間に合った時系列の辻褄合わせですね。地味ながら小ワザが効いてます。
その後もドス六の家族を食い荒らした犬型デーモンと明が戦う姿を見せる事で六が明の正体を知ったり(これで六から他の不良たちにも事情が伝わったんでしょうね)、そこからのデビルマン集めで木刀政のお姉さんがデビルマンだったり…。
デーモンたちのゲリラ戦でデビルマンが受け入れられず、また人間同士の疑心暗鬼が膨らんでいく展開が一個人の視点から描かれます。
ドス六がサイモン&ガーファンクルに影響されて「オイラのことは“ロック”と呼んでくんねェスか?」とか言い出した頃、あの決定的な事件が起こります。飛鳥了のTV出演。
「考えてみてください!隣にいる人はほんとうにその人か!悪魔は演技がうまいのです!悪魔はそっくりになりすますのです!見つけてください悪魔どもを!」
デビルマンたちが必死で裏切り者飛鳥を探すなか、錠のツテで飛鳥が匿われているホテルを割り出し、潜入する六と錠。しかしそこにいたのは明の仲間をおびき寄せるためのオトリ!
錠は胴体を貫かれ、六も腕を食われて絶対絶命!…が、そこに現れた“光の玉”がデーモンを排除してしまう!
「…ゲン こた…えよニンゲン! デビル…マン…とはなにか? 悪魔族とは…別種の存在…であるのか?」
気付くと六がいたのは病院。「天使みたいなお兄さん」が運び込んで来たらしい…天使が積極的に干渉してきてる!
六から情報を得た天使は、六の姿も借りてデビルマン軍団を唆し、北海道の悪魔特捜隊本部の襲撃を実現させる!悪魔対デビルマンの最終戦争を引き起こし、そこに天使の攻撃を加える…。巨大な戦略です。
しかし六にはそんな大きな動きは関係なく、退院して牧村邸に行ってみれば…はい、あの事件から数日経っている訳で…。
「牧村邸だったもの」と「美樹だったもの」は六…ロックを絶望させるに充分でした。
20年後、ひとり孤島に引き籠もるロック。突如起きる天変地異は中国大陸での不動明…デビルマン軍団と飛鳥了…サタンのデーモン軍団の最終戦争の余波か。
「ニンゲンよ いや チ…チン…チンケなフリョウ…ロクよ!」
あの天使か。
「オマエは地球で最後のニンゲン ワタシが接触した最初で最後の…そしてまもなく消滅するニンゲン! 最後にオマエの願いを一つ叶えてやろう 神のあわれみをもって…」
「オイラはロック…何があっても泣かねえわめかねえ “岩”になりてえ!!」
「火の鳥」のような…いやクラークの「幼年期の終わり」のような、ダイナミックで、そして切ないお話でした。
人間同士でも信じられず殺し合うしかなかった人々。デビルマンとなった家族を信じられなかった老人。不良とされたハミダシ者と心を通わせるデビルマン…。この差はなんだったのでしょうか。何かがあれば人は滅ばずに済んだのでしょうか。“岩”は何も語りません。
しかし「バイオレンスジャック」や「デビルマンレディー」の世界に繋がった場合、ロックはどう見えるんでしょうね。
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