出禁のモグラ 5巻

「私はただの看守です」

 駄菓子屋店主、浮雲。さらっと爆弾発言です。抽斗通り全部が監獄…いやモグラにとっては現世全部が監獄になるのか。

「彼が下戸なのはもともと神様だからですよ お酒は神様に差し上げるお供え物です 墜ちた神様にはそれを召し上がる権利がごさいません そういうことです」

「元は『オオカムヅミの弓』という名でごさいました 今はそう名乗れません 彼に関わったらダメということは全くございません かといって関わるのを推奨はいたしません」

 この人は聞かれないと何も喋らないけど、一旦話し始めると詳細なところまでよく喋る…ちょっとAIじみてるなぁ。

 それはそうと『オオカムヅミ』とは桃の木の事。古事記において伊邪那岐命が黄泉の軍勢から逃げるとき、この桃の木から採った実を投げたそうで、この故事から桃の木で作った弓矢には魔除けの力が宿るとか。

 伊邪那岐命から「自分のときと同じ様に人々を助けてやってほしい」と頼まれたそうで、モグラが我が身も厭わず人助けをするのはその辺に元があるのか…と。弓矢の達人なのも頷ける話です。

 …じゃあそんな神様が神の資格も失って現世をうろうろしているのは何で?となるんですが、それはまた後の話。

 「夏っぽい事やりてぇ〜」とか思いついてしまった無駄に行動力高いモグラw

 いつものメンツを集めて花火とスイカ割りと百物語をやろう!と。

「とにかく皆で何かしたいんだなこのおっさんは…」

 で、百物語も省力化で動画を流そうか、という話になり、配信者「毒繭アケロンティア」の生配信を見る事に。絶妙に怖くない配信を見ながらわちゃわちゃ無駄話を続けるモグラたち。

「ほいじゃ次の投稿読むね『ブーギークラッシュの怪』」

 八重も好きなこのゲーム。アケさんが人気を得たのもこのゲームの実況からだったのてすが、この「ブーギークラッシュ」でランキング上位に入ると怪現象が起こる…上位で有名になった人が更新しなくなったり実況に変な声が入ったり体調不良や行方不明になったり…。

「あれま ええ〜…何それ 好きなゲームなのに いやーだなぁー」

 そういう話を聞くとやってみたくなるのも人の常…。

「もう入ってますよ」

 駄菓子屋のPCにインストール済みらしいw浮雲さん…得体が知れねぇ…。

 レッサーパンダのキャラを使ったシューティングゲーム。やってみると結構面白く、皆で寝落ち…してみると目を覚ました真木くんの目の前に「START」の文字。

「その『START』に触っちゃだめだぁーーーー!!」

 気付くと真木はレッサーパンダ、モグラは土竜w、八重ちゃんワラビーに詩魚ちゃん犬…の姿で周りはどこかで見たような光景?

 なせか毒繭アケロンティアもいて

「今はそんなのいいから!! オイ アンタらも起きろォ!始まっちまったよ!!」

 結論から言うと、これは霊が作り出した仮想空間。電気信号で各自の脳に干渉して同じ夢を見せている状態らしい。

「俺が知る限り こういう世界を作って生者を引きずり込む霊ってのは子供か または想像力豊かにして激烈繊細 こだわりが強く少々コミュ緑地に問題がある一方で人一倍人に構われることを望む大人だ」

 やたら描写が細かいなw

 とにかくゲームをやるしかない、と進めてみますが二次元シューティングがFPSになってしまって対応できず、全員ゲームオーバー…。

「なーーんだ 全然上手くないじゃん ランキング3位ってあったのに まあでもいいや また遊んでね またねばいばい」

 …全員元の身体で目を覚ます。

「またねと言ってたから次もあるぞ」

 寝ている間はずっとゲームをさせられる状態で何日も保つ訳がない…。

 アケさんがモニターから話しかけます。

「アナタ妙に理解が早いよね 霊能者なのかな? なら説明はシンプル『ますはクリアしろ』 そして霊能者ならお祓いして頂戴な!」

 この時点で驚愕の事実が二つ。一つ、毒繭アケロンティアはすでに亡くなっている。霊の状態でネットに介入している。

 一つ、浮雲さん「ブーギークラッシュ」ランキング3位を取っている。どんだけやり込んだんだw

 梗史郎を巻き込み、霊本体を見つけ次第祓う、という手を使おうとしますが…。

「…すまん…あの…無理 祓えん 今ここにナベシマがいない」

 …憑き物は一緒にゲームに入ってこれない!?

 仕方なくゲームをまともに進める一行。一応ステージごとのボスが霊本体である可能性が高いです。

 ボス戦。グアムで射撃訓練したことがあるw詩魚ちゃんが戦力になったりしましたが、まだイマイチ。

 が、ここでランキング7位の「M·kaname」が人魚島の「森くん」であることが判明。しかも自活を目標に上京してきている!

 やせてイケメン化したw森くん、恩返しということでモグラたちに協力することに。

 攻略情報を得た一行は順調に攻略を進めて行きます。

 中ボスたちを倒していくうちにモグラは疑問を持ちます。ボスをやっている霊たちはただゲームを楽しんでいるだけ。「生者への強い執着」を持つ何者か…中心人物がいるはず。

「…一つね…気になる情報を思い出した…」

 八重ちゃんが話しだします。このゲームの創始者4人のうち一人は既に亡くなっている。その一人が出した独特なアイデアが「ブーギークラッシュ」の基本になっている。

 そのアイデアのひとつ、スタート間近にいるブツブツ言ってるミニゲーム用の虎!

「アハハ 気付いたね 気付いてくれる人いるかな〜?って思ってたんだ」

 アイデアはあってもメンタルが弱く、ひとりではゲームが完成できなかった。結局批判に耐えられずに死んでしまった…。

「アンタ…批判のない夢に浸るために信者(ファン)の霊を集めてこの世界を作ったな…」

 悪気はないんですよね、きっと。好きな人だけ集めて好きなゲームやってるだけだし。ただ生身の人間はこれが続くと死んじゃうだけで…。

 でもそうやって現世の人間を巻き込み続ける霊はあの世の法則に反している訳で、裁かれちゃうのですね。無知は罪…。

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