それは紛れもなく奴さ 寺沢武一先生追悼

 去る9月8日、漫画家寺沢武一先生が逝去されました。68歳、心筋梗塞との事でした。

 あまりにお若い、早すぎる旅立ちであったと思います。

 寺沢先生といえば何と言っても「コブラ」!左腕にサイコガンを持つ宇宙海賊。そのレトロフューチャーな雰囲気は連載開始当時でも既に懐古趣味に属するものでしたが(いわゆるぴっちりスーツw)、そのアメコミ調の緻密な絵柄と洒脱なセリフ回しで少年ジャンプでも独特の立ち位置を確保するに至りました。

 コブラの3枚目顔(元々イケメンだったのをわざわざ整形したものですが)でカッコいいアクションもこなす、2枚目と3枚目を両立するキャラクターも魅力だったのでしょうか。実際いいセリフ吐くんですよね。

「俺がオリンピックに出たら金メダルでオセロができるぜ」

「神か…最初に罪を考え出したつまらん男さ」

 また寺沢先生はコンピュータを積極的に作品に取り込んだ事でも知られています。「BLACK KNIGHT バット」では2次元ですがCGを原稿に取り入れ、92年の段階でフルCGコミック「武 TAKERU」を上梓しました。当時はコンピュータでマンガが描けるなどとは夢にも思っていなかった時代でした。現在ではタブレット1枚あればどこでもマンガが描ける…時代の進歩は凄まじいですね。

 その新しいものを貪欲に取り入れる姿勢は作品にも現れていました。宇宙船タートル号に積み込まれた反加速装置(慣性制御装置!)、無限に進化する兵器、空の鎧を動かす剣型生物、並行世界を飛び回るレースに兵器と同化する改造人間(博物館のメッサーシュミットを乗っ取って空中戦!)。

 まさにセンス・オブ・ワンダーの塊みたいなアイデアの洪水!晩年は脳腫瘍を患っておられたそうですが、それでも作品を発表する意志と根性!

 現在のネタを取り込んだ寺沢先生がどんなコブラを描き出すのか…そんなifも考えてしまうのです。

 惜しい人を亡くしました。ご冥福をお祈りいたします。

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