
天光(あまてらす)に戦いを挑んだ兄哉。
ですが冒頭、いきなり彼の首が転がって…!
ヒルコが泣いています。空には勝ち誇る天光。
「器はふたつ ひとつが割れれば中身は零れる これでようやくこの世界を滅(こわ)せる」
ヒルコを抱え絶望する燕姫。
「うっうっ にいや〜 ひとりはいやだよぅ …お母さん」
ヒルコの言葉は燕姫の幸せだった頃…父母と共にあった思い出と重なって。
「…ふさけるな ここは…私達の世界だ …お前らなぞに…神なぞに運命を委ねてたまるものか」
立ち上がり、剣をかまえる燕。それはただの人間の意地であったかも知れない。しかしその意地に呼応するかのように現れた影。
「ーどうやら 間に合ったようだ」
それは武素戔男神。何だか神殺化したときの兄哉の姿と似ています。
「…燕姫 おぬし達は…まだ生きねばならぬ 我が“時空の扉”を踏み越えるがよい」
「…解せません 貴方は“神”…それなのに人間てある私達を助けると言うのですか!?」
問い詰めようとする燕姫を扉に放り込み、天光の攻撃から庇う。
「…燕姫 もう一度…やり直せ」
気がつけば燕姫は聖国の蔵の中。ヒルコと…五体満足な兄哉と一緒でした。3人は実に1年の時を遡っていたのです。国王たる燕姫の父も、旅の途中で死んだしまった義武も無事。
スサノオといえば、高天原で暴れ過ぎて主神アマテラスの不興を買い、神々の住む土地を追放された…というのが皆が知っている日本神話なんですが、これを拡大解釈して「スサノオは神に対抗する反逆者である」とする作品はときどきあります。「凄ノ王」とかそうでしたね。
少なくとも神にも考え方の違う者がいるのは間違いないようです。
時間を戻った兄哉にはひとつ当てがありました。
「今の俺達の力は完全じゃない」
「…だからますは取り戻しに行く 神々によって砕かれたヒルコの“魂”をな」
ああ、それでヒルコはほぼ幼児のような状態なんですね。
ヒルコは生まれてすぐ閉じ込められ、体内の神殺の力が弱まる七歳の誕生日に肉体と霊をもぎ取られたそうです。
「唯一奴らにとって予想外だったのは俺という力の代行者の存在だ」
兄哉…彼の名前も「呼んではならない物」のようです。仮名「にいや」と呼ぶしかない…彼がヒルコに残った神殺の力を振るう事が出来たからこれまで生きてこれた、と。
所在がわかっている欠片は「儡渦国」にいる「石凝徒幤」という神が持っている。
道中、神に背いた妖の組織“咎組”に捕まってしまう燕姫。
幻影を操る狐「ダフネ」と硬いウロコ…禁鱗をもつ龍族「菫」は食べると妖力を増す貴人の肉を組頭に渡すため、燕をさらったのです。
いずれは神に対抗する為…しかし
「解るんだよ…ヒルコには 奴らのニオイがな」
「お前らが仕えている者の正体…それはーー神だ」
呪いによって蝕まれた組頭に取り入り、組頭に成り代わって咎組を操っていたのは天ツ神、天穗火。貴人の魂はその槍“生魂ノ矛”の強化に使われていました。
「お前達の…御陰で…母上より賜った…この矛…はここまで…力を得た」
ダフネの幻術と菫の鱗で矛を止め、兄哉の神殺で天穗火をバラバラに!
「…さあヒルコ 神は鏖だ」
未来の場面(成長したヒルコと身体欠損した燕)がちょくちょく挟まるので、終盤を逆算している感じはあったのですが、なんと3巻で完結! 打ち切りなのか最初からの計画だったのかw
血と臓物が飛び交うグロ描写と、その戦闘の最中にも遠慮なくぶっ込んでくるギャグw
戦闘中にヒルコがおねむになって刀が消滅してしまい、逃げ惑うしかない兄哉とか。
この独特のバランスは最後まで維持して頂きたいものですw
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