ヘルハウンド  3巻

 ショウを完全に制圧した神無月。

「ここはおとなしく僕達と同行してくれないか? 別に君達を殺すつもりはないし悪いようにはしない むしろ僕達プラントヒューマノイドと仲間になってほしい 僕達の事を知る事も出来るし悪い話じゃないだろ?」

 北川やヘルが奇襲するのもあっさり避ける。幻覚なのか、残像が残るくらいの高速移動なのか…しかし西崎が投げたガラクタは当たったりして。一定範囲の動きは全て把握している、とかそんな感じかな?

 警察やヤジ馬が集まってくるから、と神無月は撤退します。

「君達はこの治平界の事をよく知る事だ この世界の現状 戦乱界との違い それを理解した上で君達がどのような結論を出すのか…それを楽しみにしているよ」

 逃走する車の中で神無月と黒田。

「しかし…僕も予想外でした まさかこの短期間で…戦乱界の人間が治平界でこれだけの仲間を作っているとは」

「我々PHの特性を理解した上で効果的な武器を製造している仲間がいる 奴は使命を帯びずに治平界に送り込まれたと言っていたが…その言葉も眉唾ものだ」

 …いや、ただの理系オカルトマニアなんですけどね…。事情を知らなければそう見えるよなぁw

 一方、ショウたちも今回の接触でいくつかわかったことが。

「監視カメラの映像は警察で管理されている つまり人間擬態植物の仲間は警察の中枢にいる そして大事にならぬよう情報統制している」

 白石刑事は情報漏れした映像を見てここまでたどりついたのだろう。今回、警察は組織としてはあてにならない。

 つまり面が割れたメンバーは相当ヤバい。まだ割れてない南をこの件から降ろそうとする西崎。

「んー 嫌かなぁ」

学者を目指す者が目の前にある未知の扉をくぐらず諦めるなんて勿体ない!

 完全に腹は決まっているようです。

「こんな事に付き合ったらライフがいくつあっても足りません 僕と一緒にすぐにでもフェードアウトしましょう!!」

 最初からいるのにまるで覚悟が決まっていない奴がいました。 東…w

 北川西崎は白石をこちら側に取り込み、警察内部のPHを炙り出す策に出ます。白石も他に手はない…ということで協力するのですが…最初に頼った先輩刑事、堤がPH!引きがいいのか悪いのか…。

 “処理”されようとしていた白石を助けたのは…やはりPHの…中島警部?

「それは擬態した人間の名称 私の本当の名前は香月發美 見ての通りプラントヒューマノイドよ」

 この時点で2つ、事実が判明します。

①PHは元からいる人間に擬態して入れ替わっている。

②PHには殺し合うレベルで対立している派閥がある。

 白石を逃がし、ショウたちにもこの世界の真実を説明する、と約束する香月。

 その頃、TVやネットで治平界の情報を得たショウとヘルはあることに気づきます。

「去年 治平界でR国がU国に侵攻してたけど 戦乱界では国交を結んでた つまりこの治平界と戦乱界って情勢が真逆なんだ まるで鑑に映したみたいに」

 香月の言う真実とはこの事実と関係する事でした。

「治平界と戦乱界 この二つの世界は鏡と一緒 次元は違えど同じ座標で交差する世界 この二つの世界で起こることを意図して変えられるとしたら あなたはどう考える?」

 つまり…治平界で戦争を起こせば戦乱界は平和になる…?

 実際、ヘルの鼻で確かめたところ…

「こ…これは…ここからは奴らの臭いがプンプンする 一体どれだけの数が!?」

 ヘルが驚いたその建物は…国会議事堂!

 総理大臣を始め、大臣クラスもかなりの数が入れ替わっている!

 既に街のヤンキーレベルでどうこうできる話ではなくなってきました。

 国が戦場になるのを見ていられない、と戦う覚悟の北川。家族を説得して国外へ逃げる、という西崎。警官だからどんなシチュエーションだろうと正義を貫かなきゃならない、と白石。

「ショウ君は…どっちを選択したいの?」

 香月の言う事が真実だとするなら、治平界で戦乱を起こせば戦乱界の戦争は治まる。

 ショウの弟妹が地獄から解放され、平和な世界で幸せに暮らせるかも知れない…。

 だがそれは今治平界にいる人々を犠牲にする事。そんな事が許されるのか…?

 各々の護る者のため、戦う事を決めていく。

 ショウはどうする?

 戦乱界を平和にするのか、治平界を守るのか?

「私は人間の持つ無駄な感傷は持ち合わせていない 何度も言うが私のにんむは戦乱界に帰る事だ お前の目的もそれだけだったはずだ」

 ブレないなヘル。

 神無月も現れてショウを説得します。自身の絶望的な境遇を話し、

「治平界の民はもう充分な幸せを味わったんだ 戦乱界の民もそろそろ幸せになってもいいと思わないかい?」

 更に蓮神様はショウたちが治平界に来た頃から行方不明だと。彼らがそのままの姿で来た事によってシステムにバグが生じ、現在システムの復旧と見直しの最中。だからショウ達にも仲間になって捜してほしい…。

 んん?この言い方だと「蓮神様」ってシステムの一部?人間じゃない?

 神無月は来てくれればショウたちは必ず守る、と約束し去っていきます。…はっきり戦乱界に戻る最短ルートですね。

 悩むショウ。

 その夜、ショウは戦乱界にいる弟妹…カイトとケイの夢を見ます。夢なのか実際に戦乱界とショウの意識が繋がって見えているのか…。

 たくましく生きている二人。

「兄ちゃんは喧嘩も弱かったしめちゃくちゃ頼りなかったけどひとつだけすげえとおもってたところがあった 兄ちゃんは絶対人が困る事はしなかった! そして言ってた! 人を悲しい目に遭わせて幸せを手に入れたって心がどんどん不幸になっていくだけだって」

 だから泥棒とか強盗とかは絶対しない!と。

 苦しくても正しく生きている二人。それが本当かどうかはわかりませんが、ショウは覚悟を決めたようです。

 システム説明を聞くに、戦乱界にも平和な国はある様子。…これって治平界、戦乱界の区分と名付けは日本から見て、という事のようです。考えてみれば当たり前で、食料やら兵器やらの物資を生産できる安定したエリアが無ければそうそう戦争を続けられる訳ありません。

 全地球規模で見れば戦乱界でも平和な地域はあり、治平界で戦争してるところも…ありますね。ウクラ…U国とか。

 次元移動なんて事をしなくても戦争を終わらせる、もう少し現実的で楽な手段はいくらでもありそうな気がするんですが…。

 追い詰められていたんですね、PHの皆さん。

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