
ヒーローなんて本当はいない。だけど、ヒーローの中には 人がいるーー
ヒーローをこの世に出現させる職業、スーツアクターを目指す少年少女のお話、「ヒーローは中にいる!」です。
広島に住むスポーツ万能少女、立花かさひ。何でもこなせるが何にも熱中することのなかった彼女は、たまたまやる事になった特撮ヒーローショーの着ぐるみのバイトに衝撃を受けます。
「まともに動けやしないだと…?」
「あっっっつ!&臭い! 汗と埃の濃縮還元 暗い·臭い·きつい·酷暑の4K! テレビかよ馬鹿野郎!」
しかしそんな着ぐるみを着ながらキレのある動きをするヒーロー役(かさひは怪人役)。
マスクを取ったその顔は、少し前に出会った女性でした。電車の中で倒れた病人をテキパキとした指揮で周りの人を巻き込み介抱。
「私の仕事はヒーローです」
その時は何言ってんだ、だったのですがまさか本当にヒーローだったとは。
「よく見ときなよ立花さん あれが現役のプロスーツアクター 迫田みのり」
どうやったらスーツアクターになれるかを迫田に聞くかさひ。危険だし割に合わないからやめた方がいい、と返すみのり。
ならみのりは何故やっているのか。
「なんでだろね この世界に魅せられちゃったから…かな 私にはもう、これしかないから」
かさひはもう止まりませんでした。
「本当に過酷なだけの仕事なら、あんな顔で笑えるはすがない その世界を知りたい 挑戦したい できないことに直面して、初めて悔しくてたまらなくて、それ以上に未知の憧れに、胸の高鳴りに、火がついてしまったらもう止まらなくて」
「ヒーローになりたい」
高校卒業と同時に東京へ出て、そのままスーツアクター養成所「ジャパンアクションファクトリー」通称JAFの門を叩く! 即断即決が過ぎるだろw
かさひはJAFで仲間と共に様々な事を学んでいきます。それこそ殺陣からマット運動、少林寺拳法に演技指導…果てはジャズダンスまで。
インナーマッスルや柔軟性の強化によって怪我しにくい身体を作る効果があるそうです…ジャズダンス。
面白かったのは演技指導です。高慢ちきな石田と既に女優としてデビューしている早見とのセリフ合わせ。石田が気持ちよく演技できたのは早見が自分の演技を抑え、作品として成立するよう石田を引き立てる演技をしたからでした。
「演技とはコミュニケーション 自分本位の熱演では成立しない 熱のこもった演技が名演とは限らない」
プロとは何か、が端的にわかる一場面です。
研修生も問題…クセの強いのが多いですが(オレサマ石田、女優仕事で問題を起こしたらしい早見、大会社の社長令嬢佐倉など)、実はかさひも結構問題があり…。
何でも出来すぎて出来ない者の気持ちがわからない。
元々スポーツ万能で何も本気になれないので「負けて悔しい」気持ちがわからない、という状態でしたが、まったくやったことのなかった演技も苦労していないとは言いませんが割とあっさり上達…。挫折というものを経験していないんですね。
「選ばれないっていうのは相当こたえるものよ あなたが思うよりずっと」
2巻終了時点でこの点はまだ解消されていません。キツい言い方をすれば彼女はまだ精神の剛性が足りないお子様な訳で、何か大きな衝撃があった時にポッキリ折れてしまう可能性があります。
おそらくその辺がひとつのクライマックスになるかと思いますが…。見たいのは挫折を超える成長ですよね! 期待しています!
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