異世界サムライ 2巻

 バジリスクの呪いが解けたルゥ。ギンコとミコを連れて『西の王都』アヴァロンへやって来ます。はしゃぎに来たとかいろいろ言ってますが、ギンコを連れて行く目的地があるらしい。

 が、街に着いた途端にトラブルが…。

「逃げろ逃げろ」「魔物が出たぞ」

「勇者が殺されそうになってるらしい」

「死にたくなきゃにげろおおおお」

 グレムリンの群れに踏みつけられているのはドワーフ「爆斧の勇者」ヴォルス!

「むう…不覚…!雑魚でも数は侮れぬわ…!」

 仲間がやられた仕返しに街の人間を全員殺す、と叫ぶグレムリン。駆けつけたギンコたち3人に勇者を人質として静止を命じます。

「ひとりでも動いたらコイツを殺す おまえたちを守ろうとしたコイツをな!!」

「せ…先生…どうしよう…!? 勇者が…殺されちゃう」

 対応に悩むルゥとミコ…の横をすり抜けてずんずん近付いていくギンコ。しかもなんか嬉しそうだw

「おい お前聞いてたか!? こっちには人質が…」

「殺して結構」

 言い切りました。

「彼も戦士ならば敵に捕虜にされ生き恥を晒すより 潔い討ち死にを望んでいるはすです」

 慌てているグレムリンを殴ってドワーフを振り解き、そのまま重ねて斬る!

 …いわゆる三ツ胴…いや四ツ胴斬りかな。刀の切れ味を試す為に罪人の死体を重ねて斬る試し斬り。もちろん通常は動かない死体相手にやるもので、戦闘中にこなすものではない…ギンコの凄まじい技量を示すものですね。

「こんな平和で豊かな人里ですら ともすれば簡単に人が死にかねぬ合戦場になりえてしまうとは… そうでなくては!そうであろう! 侍が生き侍が死ぬべきは地獄の浮世がふさわしい!」

 血塗れで嗤うギンコ。あくまで戦乱の中で生きるを望むか…。

 ルゥとヴォルスは旧知の仲だったようです。ルゥの元の通り名は「槍の勇者」だったらしい。

「助けられたが…血の匂いがしたぞ」

 しかも魔物を殺す勇者と違う 人の血の匂いが、とヴォルス。

 相容れない魔物の脅威が強いこの世界では、人同士で争うのはあまり現実的ではないようですね。人殺す事ばっかり考えている戦国武士の存在は相当異質なようです。

 無闇な強さを持つギンコがヒトなのか魔物なのか、ルゥはそれを確かめたい、と。

「勇者ギルドに連れて行く ギンちゃんがもし ただの人殺しなら…人類の敵なら…そこで死ぬだろう」

 ルゥはギンコを「法の勇者」なる者に会わせたいようです。

「それよりルゥちゃん殿 魔物とは一度死んでから蘇ったりしまするか?」

 グレムリンの遺体が二つ消えている!

 流石にグレムリンは両断されて生きている程しぶとい魔物ではない…しかしとにかく生きていて、しかも逃げ出した!

 街の中を手分けして探しに行こうとする四人。しかしその場を離れようとしたとき、残ったグレムリンもニヤリと…振り返ったルゥとヴォルス!しかし既にグレムリン2体は粉々に!

「一太刀で死なぬ相手ならば なますにすればよい これが魔物との合戦なのですな!?」

 …ギンコが斬り飛ばしていました。…ええっと…。

 とりあえずこの世界にも治癒魔法はある。ですが時間をかければ治る怪我をすぐ治す程度で、例えば欠損した手足を生やすような再生魔法は魔力消費も大きくなり格段に難しい。ましてや蘇生なんてほぼ理論上だけの魔法で、人間には使えない。

「死んだ人間は蘇らない!これが魔法の常識!!」

 つまりこのグレムリンがやってる事はありえないレベルの事、となります…。

 飛んで逃げるグレムリンを発見したギンコとミコ。ミコの魔法で撃ち落とそうとしますが火力不足…。

 近くの武器屋から弓矢を借りますが、獣人や竜人が扱う弓。人間が引けるものではない…。

「心配無用」

 世界的にも最大級の大弓…和弓を引く鍛錬を積んでいたギンコはこの弓を引き絞ります。

「なぜ逃げる? 死力を尽くした果ての『死』にこそ気高き誉が宿る それが我らの唯一の『信念』ではないのか 来い! その爪を牙を某の首に突き立ててくれ 合戦をしよう!!」

 果たして放った矢はグレムリンに命中、一撃でバラバラにしてしまいます!

 一瞬、「また生き残ってしまった…」的表情をするギンコですが、その矢が空を飛んでいた魔法使いに命中w

 完全にアタマが無くなっています。

 …で、ギンコさん父上から「侍が斬ってよいのは向かってくるものだけ、無関係な人間を殺めたら速やかに腹を斬って詫びろ!」という、また極端な教育を受けており…。

 いきなり切腹の体勢です。

「あぁ痛ってェ なんなんじゃクソめ 死ぬとこじゃったぞ」

 生きてるしw …これ、どう見ても一回死んでます。間違いなく蘇生です! あり得ないはずなのに!

 落とし前をつけねばならない、と己の左腕をぶった斬るギンコ!

「腕一本!! 某の未熟の落とし前です 此度の一件これにてケジメとさせていただきたく候!!」

「アホかー!!! 金じゃろー!! 誠意つったら普通金!!金金金!! 腕なんぞいるかボケェ」

 盛大に突っ込む魔法使いw 申し訳ないけどこれは魔法使いさんに全面同意ですわ。蛮族思考とエコノミックアニマル感覚の決定的断絶w

「貸せ!ウデ!」

 傷口を繋げ、一瞬炎に包まれたかと思った直後、腕は元通りくっついていました。

「…!! 再生魔法…」

 あり得ない魔法2発目です。…思うにこの人、「魔法の勇者」とかじゃないですかね?

 で、ギンコ両手をついて

「そこもとは戦ってもきっとタダモノではない! ぜひ某と 尋常に」

 いきなり決闘のお誘いです。まず礼を言えよw

 ガン無視で去っていく魔法使い。そりゃそうだよなぁ…。

 純粋ながらも根本で決定的に異世界とすれ違っているギンコ。

 「法の勇者」ドラクロと出会い、その能力“ジャッジ”により罪を暴かれます。

「殺人者です!! この者には人を殺めた過去がある!!」

「しかし…私にはこの者を裁けない!『法』が通用しない!!この世の理の外 狂った世界の“怪物” サムライ!!」

 …限りなくヤバい判定が出てしまいました。悪とは言い切れないまでも野放しにはしておけない、とドラクロはギンコを捕獲にかかります。

「名は?」

「名は月鍔ギンコ “侍”に御座候!!」

 時代を遡るごとに人は血の気が多くなり、何かというと力づくで物事を決めていたらしい…それをおとなしくさせようとして信長や秀吉は茶道を広め、少し下って徳川綱吉なんかは「やたらと殺すな」の意味で「生類憐れみの令」を作ったのだ…なんて話も聞きます。

 そういうバーサーカーな思考と少女らしい素直な感性が同居して、月鍔ギンコというキャラクターは出来ているのでしょう。

 「Fate Grand Order」の宮本武蔵ちゃんを思い出しますが、ギンコはあちらより大分危うい。人の世界に受け入れられなかった場合、彼女は寄って立つ場所を失うのではないでしょうか。

 魔物の方もこれまでと違う強さを手に入れ始めているようですし、異世界の変革にギンコも巻き込まれていく形になるのでしょうかね。…ギンコも勇者として認められるとか?

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