僕のヒーローアカデミア 39巻

「お゙どお゙さん み゙でえ゙え゙ぇ゙」

 身体を燃やしながらエンデヴァーに殴りかかる荼毘。既に朦朧とした意識は虚飾を全て剥ぎ取られ、子供の様な最初の欲望だけで動いています。

 ただ父に認められたい。

 エンデヴァーにも耐えられない熱を発する荼毘。

「…俺が灼ける程の熱で何でここまで…保ってこられた」

 …荼毘の身体は冷気を纏っていました。

「ああ… あああ! 冷の“個性”…!!」

 それは焦凍が手にしたのと同じ力。死の淵に立って遂に発現した!

 かつてエンデヴァー…轟炎司が捨てた轟燈矢…荼毘が求めた力を身につけて帰ってきた…最悪のタイミングで!

 丁寧に心を折られた炎司。

「全部背負って償いに生きねばと思っていた でも おまえはずっと俺を見続けてたんだもんな…おまえを見てやれなかった…おまえにも償わなきゃいけなかったんだ」

「…一人で逝かせはしない…だがもう誰も…!巻き込ませはしない」

 最後の力で燈矢を抱えて飛び上がる。せめて上空で爆発するように…!

 温度が下がる。

「冷!何でおまえが…!!」

「お゙ があ゙ さん?」

「燈矢…!! ごめんね…!」

 冷却の個性で二人の熱を下げようと。

 そして駆けつけたのは母だけではなく。

「燈矢兄!! 連れて行かないで!!もう誰もいなくならないで!!」

「これ以上…っ 迷惑かけるなクソ兄貴!」

 冬美と夏雄。

「ああ…みんながみてる こんなものか こんな簡単な事だったなら もっと早くにーー」

 燈矢の火力上昇は止まらず。爆発ーー。

 しかしそこにもう一人。飯田に乗せてもらい、氷結と炎で空気層を作ることで亜音速を達成して群牙から駆けつけた…轟焦凍!

 ぶつけたい事 言いたい事 まだあるんだ!

 大氷海嘯!!

 家族全員の協力で爆発は止まる…。

「…燈矢…!悪かった…瀬古杜岳 行かなくて…ごめんな…!!」

「…大嫌いだ…お父さんなんか…!家族なんか…!」

「ああ…聞かせてくれ…! もっと…!」

「っ…冷…!追いつめてごめんなぁ 冬美…全部おしつけて…ごめんな…! 夏雄…ほったらかしにして…ごめんな…! …焦凍…! ごめんなァ…!」

 どうやらエンデヴァーという男の物語はここで終わりのようです。何でも一人でやってきた男がどうにもならない事に家族の手を借りて解決を見出した。一人じゃ出来なかった…。

 ここからの話は別人の話になるのでしょうね。これまての罪を償い、家族と向き合う当たり前の父親の話。信頼を勝ち得る為の戦いです。

 もう一つの戦い。トゥワイスの血を飲んだ事で「倍加」の個性を得たトガヒミコ。

 哀れな死の行進(サッドマンズデスパレード)

 圧倒的な物量はヒーローたちを飲み込んで行く。 しかしそんな中、お茶子はトガヒミコ本体に肉迫する!

「遅くてごめん! でも…見つけられた!」

「…うるさい」

「あなたは泣いてた…!! きっとーートゥワイスに出来る事が出来なくて なり切れなくて…!!」

「殺意が混ざって 今は純粋な“好き”だけじゃないから…!」

「うるさいんだよ麗日お茶子!!!」

「何一つ不自由なんかなかったくせに ルールに合ってただけのくせに!! 生きやすく産まれただけのくせに!!」

 好きなものの血が欲しくなる、という性癖。個性に引っ張られた故なのか。

 愛を表現するために相手を傷つけてしまう、他者と決定的に相容れない悲劇。

「構造が違う!! おまえ達が言う祝福も喜びも 私は何も感じない!! そっちの尺度で私を可哀想な人間にするな!!」

 受け入れられないのなら

「勝つか負けるか 生きるか死ぬか 生存競争なんだよこれはもう!!」

「それ…は お互いっ “当たり前”だね」

「ーー同情じゃないならただのエゴだ…! 互いにそうならーー死ねよヒーロー」

 分身が飛び散ったヒーローの血を摂取して姿を模する。個性自体はコピーできなくとも「ヒーローそっくりのヴィラン」の存在はヒーロー側の連携を乱す。“哀れなる者の行進”に対抗するのに不可欠なチームワークを!

 それでも追い縋るお茶子。

 最初会ったとき、トガヒミコは怖かった。

「あの状況でなんで…あんなにも純粋に笑えるんだろうって!!」

 それでも

「好きなものを好きと言うあなたの顔は 羨ましいくらいに素敵な笑顔だと思うから」

 その笑顔を見なかった事にはしたくない。

「罪をなかった事にはできない!全てを肯定はしない!! でも! まだ少しでも私と話してくれる気持ちがあるなら」

「血なんて一生くれてやる! あなたと恋バナがしたいの ヒミコちゃん!!」

 トガヒミコを抱きしめる。心の中を話し始める。

「笑うなって言われたもん…!羨ましかったんだもん…!」

 好きになった人に「血ィちょうだい」って言えなかった。

「だって人間じゃないって言われちゃうから…! カァいくないって思われちゃうから」

 だから敵連合に入った。好きに生きられる場所だから。

「敵連合の代わりにはなれないけど…あなたの笑顔が素敵だと伝えなきゃと思ったの」

「私…カァイイ?」

「世界一」

 分倍河原の血の効力が消える。トガの分身が消えていく…。

 しかしお茶子は出血多量で動けない。致死量か…。

「お茶子ちゃん 敵連合は全部ぶっ壊すの 壊れた先にあるのはきっと…私が生きやすい世界」

 お茶子の血を飲む。姿が変化。

「でも お茶子ちゃんが言ってくれた事 嬉しかった 生存競争って私と言ったけど…お茶子ちゃんがいなくなるの“だけ”はやっぱり嫌」

「この気持ちは本当だから 私の血 全部あげる」

 それはトゥワイス…分倍河原仁がトガにしたこと。してもらった事を誰かにしてあげる。血を奪う事しかしてこなかった者が血を分け与える。致死量の血を抜く事になる…。

「もしも もっと早くに識れたなら 血を飲み干したくなるのと同じくらい血をあげたくなるような そんな“好き”に出会えていたら 世界はもっと生きやすかったかな」

 ヴィラン·トガヒミコは「誰かに何かをしてあげる」普通の事をして、普通の女の子·渡我被身子として…死んでいきました。

 個性が違うものであれば?誰か早いうちに寄り添う者がいれば?何か変わったかもしれません。変わらなかったかも知れません。どちらにしても後の祭りです。

 「私が 来た」

 無個性の身体にパワードスーツを纏ってAFOの前に立ち塞がるオールマイト。

 …個性の元締めみたいなの相手に敵う訳もありません。AFOからすれば一蹴どころか無視しても構わない存在のはずですが…。

「何を…笑っている!!」

 若返った身体に精神が引きづられているのか、わざわざ顔が見えるようにデザインされたスーツの…いつものオールマイトの笑顔がよほど癇に障ったのか…AFOは雄英に向かうよりも無能力者を一人捻り潰す方を選んだようです。

 生徒たちの個性を模した機能でAFOを翻弄するオールマイト。

「長い付き合いだ わかるだろ!?親友!! 私は 過去一度たりとも負ける気で戦った事はない!!!」

 一撃ごとにズタボロになっていくオールマイト。しかしAFOがダメージを受けるごとに“巻き戻し”が進行しているのを見て取り、過剰に若返らせる事に勝機を見出す!

「人の役に立てて嬉しい がんばれっ!! がんばろうっ!!」

「なあ!?勝とうぜ! 緑谷少年!!」

 OFAの共鳴か、デクもオールマイトの戦いに気づく。

「オールマイト!!」

 ヴィランまでも救おうとする気概はやはりデクの影響なのでしょうか。業務として見るならそれはただの負担増ですが、何も見捨てまいと足掻くその姿にこそ人はヒーローを見るのかも知れません。

 これこそが新しいヒーロー。AFOを超え、絶望を超える道なのかも。

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