
「ミッターマイヤー元帥 戦死」
回廊の戦いは帝国軍を揺るがす一報で転機を迎えます。あのロイエンタールが膝をつき、皇帝ラインハルトが昏倒…。彼の野望に最初期から付き合ってきた腹心なだけにその衝撃は計り知れません。帝国軍全体が浮足立ち、皇帝本陣への攻撃が激化。
「もう少し…もう少しだけ俺に戦わせてくれ…これが最後だから…キルヒアイス」
立ち上がったラインハルトは攻勢の中、少しづつ本陣に近づいていたミュラー艦隊に守備を任せ、立て直しを図る!
その時、オープン回線で入る通信。
「私は帝国元帥ウォルフガング・ミッターマイヤーである! 小官は悪運強くなお現世に足をとどめたり! 敵の砲火は天上の門扉を撃ち破るあたわず!!」
…「ミッターマイヤー死す」は世紀の誤報だった訳です。
喜び、反転攻勢の指揮を自ら執るラインハルト。しかし地味にここのポイントは友の死に衝撃を受けたロイエンタール。皇帝の強敵を、戦いを求める性は自身の肉体のみならず、臣下の生命をも危険にさらすのではないか?
…この疑問は後に大きな問題に発展します。
「きたか… 私はこの作戦でこられることをもっとも恐れていたんだ…」
ヤンが呟いたその作戦。再編された帝国軍は各提督を順番にヤン艦隊に当たらせる…いわゆる車懸りの陣を敷きました。圧倒的兵力差を最大限に活用する策。面白味はありませんが紛れもない。兵力と物資と士気を削り真っ当に勝つ…。
ミュラーからアイゼナッハ、バイエルライン、ビューロー…。
次々交代してヤン艦隊を追い詰めていく提督たち。確実に勝利に近づくラインハルトをキルヒアイス…の幻が諌めるのは彼の心の何処かにある負い目故か。
「吾が軍の勝利は確実でありこれ以上の戦いは無益です!敵に降伏勧告を!」
「うるさいぞキルヒアイス! あの魔術師ならばこの状況をひっくり返すかもしれないではないか!」
「わたしがいくら申し上げても聞いて下さらないのならばしかたがありません アンネローゼさまをおつれしました」
…いまのグリューネワルト伯爵夫人ではなく少女の頃のアンネローゼ…の幻。
「キルヒアイスおまえ…言ったな!? 姉上にこのことを言ったな!!」
熱を出して倒れるラインハルト…やっぱり調子を落としていたか。再び混乱する帝国軍。
しかしヤン艦隊も致命的な損失を負っていました。
「あれだ あの艦隊の微妙に先行する動き…光学的通信の多様さ…ヤン艦隊を運用する司令塔に違いない!」
まるっきりの勘でフィッシャー艦隊を探り当てるビッテンフェルトw 野生の勘こわ!
黒色槍騎兵の攻勢を一身に受け、フィッシャー提督は戦死。艦隊運用の名人、ヤンの戦術構想を実現してきたヤン艦隊の心臓部がなくなったことになります。
「…まいったな うちの生きた航路図が死んだ航路図になっちまった… これからうっかり森へハイキングにもいけんぞ…」
損害を出しても撤退しようとするヤン艦隊に、なぜか追撃はかかりません。帝国軍も皇帝の不予によって指揮系統が麻痺していたから。
「キルヒアイスが諌めにきたのだ これ以上ヤン・ウェンリーと争うのはおよしください…と あいつは死んでまでおれに意見する…」
目を覚ましたラインハルトは自身の名でヤンに停戦と会談を求める通信を出し、ここに回廊の戦いは終結します。
「…脳細胞がミルク粥になってて考えごとどころじゃない…とにかく少し…やすませてくれ…」
戦闘終結と同時にヤン艦隊のメンツは倒れるように眠りに落ち…帝国軍ならこうはならんのだろうな…からの宇宙インフルエンザの集団感染w ズタボロになっている内にエル・ファシルからロムスキー医師が到着したりして、皇帝ラインハルトとの会談に向かうことに。
「フレデリカ ちょっと宇宙一の美男子に会ってくるよ」
インフルにかかっているフレデリカは留守番。ユリアンもヤン代理としてイゼルローン要塞に居残り。 …この判断を彼らは後々まで悔やむ事になります。
「あなた ちょっと髪が乱れてるわ」
「いいよそんなこと」
「だめです! 宇宙で二番目の美男子にお会いになるんだから!」
フレデリカさん、漫画版では特にヤンに関して事実誤認が甚だしいなw
出発するヤンたちに追いすがる民間船。
それは闇で武装をしこたま買い集めたアンドリュー・フォークの船でした。
「おれからすべてを奪ったヤン・ウェンリー!! いまおれはきさまを超え歴史に名を刻む!!」
ヤンの乗艦レダIIに無茶苦茶な攻撃をかけるフォーク!隙を突かれて武装を破壊され、あわやという時 現れた帝国軍艦。フォークの船を問答無用で破壊!
「なっ…!?あいつらなぜ… なぜだ〜〜〜っっっ!!」
…この帝国軍艦に乗っていたのは地球教徒!
フォークに船と武器を用意する金を渡しヤンの航路情報を流し…襲いかかる彼を退治して油断させてレダIIに乗り込み、ヤンを暗殺する計画。
いいように使われた結果、出汁に使われた…アンドリュー・フォーク、ちょっと可哀想な気も…しないな。こいつに限ってはやらかしが酷すぎて…因果応報もいいところです。
接舷してきた帝国軍艦から移乗してきた帝国兵…の扮装をした地球教徒はロムスキー医師を射殺、護衛に付いてきていたブルームハルトも数の暴力で押し潰し…パトリチェフはヤンを逃がし、その巨体で退路を塞ぐ。
「よせよ 痛いじゃないかね」
異変を察知して追いかけたユリアン、シェーンコップ、ポプランが乗艦したころにはレダII内は阿鼻叫喚でした。
「ヤン提督はどこだ!?」
「もはやこの世のどこにもおらぬ」
…ひとり艦内を彷徨うヤン。地球教徒に足を撃たれ…。
「動脈叢を撃ち抜かれたな」
出血多量で座り込んでしまう。
「私がこれまで流してきた血の量に比べればささやかなものか…」
「ごめんフレデリカ… ごめんユリアン… ごめんみんな…」
魔術師、還らず。ヤン・ウェンリーは帝国に対する戦略的勝利を目前にして倒れる事になりました。結果、収まるべき火種が燻り、未だ戦乱が続く事になります…。
小説全10巻のうち、ヤンが死ぬのが8巻。物語の一方の主役というべきヤンがあっさり死んでしまったのは、当時大きな衝撃でした。戦争というものはいつ、誰が死んでもおかしくない、という当たり前を強烈に印象付けてくれました。
他の作品でも人気のキャラや重要な役どころのキャラをすぐ殺してしまうところから作者田中芳樹先生に「皆殺しの田中」なんて不名誉な渾名が付いたりw
好敵手を失ったラインハルト。行き場を失くしてこの後晩節を穢す方向に行ってもおかしくないのに、そうはならなかったのはラインハルトたる所以でしょうか。
もう終焉を指折り数えられるところまで来ました。コミック化のチャンスは多いのに最後まで行ったことがない「銀英伝」。ここまて来たらラストの星空まで描いて頂きたいと思います。
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