ドッグスレッド 1巻、2巻

 2ヶ月連続刊行だったか…油断していたw

 「ゴールデンカムイ」野田サトル先生最新作はアイスホッケーもののリベンジ、「ドッグスレッド」です。

 走れ!! 走れ!! お前たちは橇をひく犬だ!! 走れ!! もっと速く!! 狂った犬のように走れ!!

 2010年、横浜。フィギュアスケート全日本ジュニア選手権で鬼気迫る演技を魅せ、優勝した白川朗15歳。

 しかしロウは優勝が決まった瞬間に暴れ出し

「スポンサーボードだけはやめなさいッ それたまけは絶対にやめなさいッ」

 …なんか大人の事情が垣間見えますが、このせいでロウは無期限出場禁止…フィギュア界永久追放!

 直前に事故でお母さんを亡くしたせいでしょうか。未来を自分で破壊したその心中を誰に話すことなく、ロウは双子の妹 春名と共に親戚を頼って北海道へ。

 ロウたちのおじいさんが住む街、苫小牧。スケートの盛んな街。リンクも多い…どころか近郊の池や沼津にも分厚い氷が張るので天然のリンクとして使える!

 早速池のリンクで滑り出すロウ。スケート自体は変わらず好きなようで。

「やっばり好きだ ああ…でもこれからどう生きればいい?フィギュアが生活のすべてだった オリンピックへ行くために全てを捧げてきたのに」

 でもそのリンクにはホッケーのゴールが置いてあり…

「そっちの氷に乗ったらぶん殴られるよ 源間弟に」

 アイスホッケーインターハイ優勝校、狼之神高校の主力選手源間浩一の弟、源間慶一。彼が自分たち専用の練習場として(力ずくで)確保していたのです。

 ホッケーみたいな野蛮なスポーツやって威張ってる奴にデカイ面させていられない、とゴール周りを滑るロウ…いきなり撃ち込まれるホッケーパック!

「お前の血でゴールライン引いてやる」

 物騒な事言いながらスティックで殴りかかってくる源間弟!とりあえずスポーツマンシップはあんまりないw

「怖くて逃げる姿は醜い!!」

 フィギュアのターンで華麗に避けるロウ!とりあえずそういう使い方する技術ではないと思うw

「アイスホッケーのスケーティングはそんなものか 美しくない!! 日本一のスケーティングを見せてやる かかって来い!! 田舎の野良犬めが」

 スケーティング対決が昂じて氷を割ってしまい、ゴールが水底へ沈んでしまう!

 怒り狂う弟。居合わせた兄浩一。

「重要な大会のまえにはここで練習するのが俺たち兄弟のルーティンでな… ゴールの周りの氷は弟が毎晩水を撒いて製氷してたんだ ルーティンがどれだけ大事か お前くらいのフィギュア選手ならわかるだろ?」

 喧嘩両成敗という事でゴールの件は不問にしてくれた源間兄ですが、弟は弁償しろ、と騒ぎます。ロウも弁償はしなければと考えていますがあてはなく…。

 中学の裏に放置されているゴールを見つけたロウ。

「その代わりアイスホッケーの試合に出て下さい」

 使ってないなら持っていってもいいか?と聞いたロウに宮森中学ホッケー婦キャプテン土肥は交換条件を出します。試合をするにはあと一人足りないから、と。

 いやいやながら試合に出るロウ。しかし対戦相手、北陵中キャプテンが源間弟と知って俄然燃え始めw

「あの源間弟が悔しむなら勝った方が楽しい」

 結構いい性格してるなw

 選手のレベルの差、そもそも選手数の差でまるで相手にならない宮森中。

 もともと宮森中ホッケー部はかなりの強豪だったのですが、廃校が決まり、監督が北陵中に引き抜かれ有力な選手も次々転校…勝てなくなった宮森中の最後の試合が今日でした。

 北陵中監督に声をかけられても宮森中に残った男、小杉に対して

「小杉…お前はみじめじゃない!! 美しい!!」

 声をかけるロウ。何かが変わりました。

 スティックを使えず、まともにパックを保持できないロウですが、スケーティング技術で場を引っ掻き回すw

 元ホッケー選手だったおじいさんのアドバイスも受けながらどうにかこうにかついていくロウですが、無情にも点差は開いていく…。

 激しい運動量で次々動けなくなる宮森メンバー。

「北陵に一矢報いることが出来たら お前らの時間は無駄にならんのだよな? アイスホッケーが大好きでいられるんだよな? よし…じゃあ息が止まるまで一緒に走ろう」

 おそらく自分の「好き」が貫けなかったロウ。…経済的理由からでしょうか、妹ハルナがフィギュアを諦め、一人だけフィギュアを続けてきた…「後には引けない」と覚悟しつつも、「スケートを楽しんで」という母の言葉が虚しく聞こえる…「子供をフィギュア選手にする」のはお母さんの夢だったんですね。

 ロウの苦しみと破綻が見えた気がします。そりゃ宮森中を見捨てられないよなぁ。

 スティックが使えないロウはパックに乗ってゴール前まで運ぶw

 ゴール前もみくちゃになる中、パックは小杉に渡り…シュート! 待望の一点!!

 試合は北陵の勝利ですが宮森は勝ったかのような騒ぎでした。

 それはまた、ロウにアイスホッケーの楽しさを教える事にもなったのでした。

 4月、狼之神高校に進学したロウ、源間弟、土肥、小杉。アイスホッケー部に入部しますが…狼之神ホッケー部、いやホッケー界どころか日本全国を揺るがす事態がこの間に起こっていました。

 まずはインターハイアイスホッケー決勝。20連覇を目指す苫小牧狼之神高校が八戸鮫王高校に敗北。高校ホッケーの歴史が大きく動きました。

 そしてその八戸で連覇を狙う鮫王高校を、あの災害が襲います。 時に2011年3月11日。東日本大震災。津波に沈む八戸…。

 壊滅的被害を被った鮫王高校は復活なるのか?

 狼之神新入部員はいきなりの陸トレから。

「自己紹介はまだ必要ない」

「一年後も自らの意思でここに来ている奴が真のアイスホッケー部員だ!! もっとも一年後どころか今日の夜までには自分が狼之神にふさわしいか知るだろう だから自己紹介は必要ないのだ!!」

 6キロの重り「ボッコ」を持って監督二瓶利光操る自動車に追いかけ回される!

「なんて危険なことを…昭和かッ」

「走れ走れ!! もっと速く!! お前たちは橇をひく犬だ!! 狂った犬のように走れ!!」

 冒頭の叱咤に繋がります。

 ただのスパルタに見えて意外と細かく選手をケアしている二瓶監督。全員400m50秒を切らなければ終わらない、という要求は、実は助け合う事を禁止していなくて自然にチームワークが出来上がるように仕向けていたり。彼がかなり優れた指導者であることがわかるようになっていますね。

 

 狼之神の首位奪還…だけではなく鮫王の復活も見どころですね。ロウとハルナの関係の変化も見ていきたい。複数のドラマが並行して展開していくと思われますが、あの「ゴールデンカムイ」の複雑な人間関係を描き切った野田先生、そこはもう信頼しかないですねw

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