瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 6巻

「まず聴いておきたいことがあるのですがね 此度のことは初めから法師の差し金だったので?」

 雲居寺の浄蔵法師を訪ねた晴明と博雅。晴明いきなり切り込みますw

「将門様の首を盗んだのは法師ですよね」

「は 晴やん!! なんちゅうこと言いだすねんな!!」

「うん 儂が盗んだ」

 ぶっ込む晴明。慌てる博雅。あっさり認める法師w

 首だけになっても喋るなど生者の法にも死者の法にも背くもの。 法師はその首を焼いて灰にして隠していたのでした。

 焼く、と言ってもかの将門公です。一筋縄ではいかない。護摩壇に焚べても髪は燃えるそばから生えてくる、皮もろくに燃えない。火の中で笑い続けた首がようやくうめき始めたのが五日目。九日目に堪えきれずに暴れ始めた首を法師の法力が抑え込む!

「今 意味を持った…! あの餓えたように修行に明け暮れた日々が…!! 何故儂ほどの天才がこの世に生を浮受け 本領を発揮することもできぬまま今日まで生きてきたのか…すべては今このときのためであったのか…!! 感謝するぞ将門殿!!!」

 いろいろ鬱屈も溜まってたのかな浄蔵法師…。 その全力が明王やら四天王やら召喚する別次元バトルなんで…そりゃ生半可な相手には使えないよなぁ。ほぼ怪獣大決戦ですから。

 首が抵抗力を失い、完全に灰になるのに二ヶ月…。 ようやく気を緩め、法師が意識を失った隙をついて護摩壇に侵入する何者か。最後の力を振り絞っての法師の抵抗で不審者は逃亡。 彼らは首を焼いた灰をかなりの量持ち出した様子。

「なるほど…残された灰をうかつに処分できなくなったというわけですね」

 残った灰を手元に置くしかなくなった法師。

 その後しばらくして、東国のあちこちに他の死体と混ぜて埋められた将門の体が盗まれている、という情報が。

 あぁ、それで鬼たちに屍体を集めてこさせてその中から「当たり」を探し出す…1巻のシーンに繋がる訳ですね。

「さて晴明殿 そなたももう気づいていよう」

 俵藤太の刀、黄金丸。その能力は「斬られれば二十年間その傷は塞がらない」。

 そして将門が黄金丸で斬られて今年で二十年…。 このタイミングで将門の体が集められている。つまり…。

「何者かが将門様の蘇りを企んでいるーー」

 さて、重要性がいや増した残りの灰ですが…法師の手元に置いておいても何かと不用心。

 …で、たまたま相談に来た(何も知らない)小野道風に預けた、とw

 道風は法師作の『尊勝陀羅尼』の札を持っていまして…そのおかげで「鬼の難を逃れた」代わりに陀羅尼の札が焼け切れてしまったとか。 で、もう一筆書いてほしい、と道風が法師の元に来た時に灰も一緒に渡した…。

「これは持つ者を鬼の害から守るものじゃ」

 一応別のお札…『大威徳明王大心咒』を入れてある…嘘は言ってないw

 中身を知れば験力がなくなる、他人に言っても験力がなくなる、だから誰にも見つからぬところに隠せ…酷えな法師w

 で、そもそも道風のお札が焼けた原因が何かというと…

「西ノ京の破れ寺で女と逢うていて鬼の群れに出会ったそうな 可哀想に女は喰われ道風殿のみ助かったというんけだな」

 一巻の屍体集めの時じゃねーか! あのとき喰われかけたのが道風か!

 因果は巡る…。 こちらの打つ手としては道風の身辺警護強化と同時に灰の回収。既に「道風が何か持っている」ことはバレているようで。

 もうひとつ、疱瘡で伏せっている平貞盛が行方不明になった、と。

「先だって“じかん”についてお伺いいたしましたがーー今また同じことを問います 児干について なにかご存じではありませんか」

 児干。胎児の肝臓を取り出して喰らう民間療法。悪瘡治療として貞盛か行っていた…。

 懐妊した女を攫っては腹を割き、児の肝を取り出していた。それを怒るでも泣くでもなく淡々と為すその姿はすでに人とは思えず。

「…なんだな…人の肝というのは…あれで存外美味いものであったな…」

 この児干を薦めた医師祥仙がおそらく興世王。

 この児干も徐々に効きが悪くなり、間隔が狭まっていたところ…。

 俵藤太も巻き込んで貞盛を捜索する博雅と晴明。 屋敷出入りの炭焼きの妻が身籠っている、という話を聞き、その炭焼き小屋へ。

「…いるな」「はい おられますね」

 外には炭焼きの屍体。入口には女房の屍体。囲炉裏端で何かをクラッテいるのは…。

「ち…父上…」

「維時か…? どうじゃ…顔は戻ったか…?」

 あばたの拡がったその顔。

「おああおおぅ…か…痒い…」

 顔を掻きむしる。あばたが千切れて。

「おお…なんじゃこれは…喰われる 喰われる…喰われ…」

「むうう…そこにおるのは…俵藤太ではないか…? 久方ぶりじゃのう…」

 疱瘡頭の下から現れたのは瞳が三つある異形…将門!?

 将門復活の贄に貞盛を使ったのか…。祥仙が持ち込んだ塗り薬が灰か…児干は高潔な武士だった貞盛の精神を貶めるための揺さぶりか。酷い事をします。

 たくさんの人が必死こいて滅した大怪獣、平将門が外法使いまくりとは言え、割と即座に蘇ってきます。あとは右腕と道風の分の灰が手に入ったら完全復活でしょう。 揃えさせないよう立ち回るのか、完全復活させて晴明と怪獣大決戦と洒落込むのか。

 読む方としてはどっちでも面白いなぁw

 

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