新九郎、奔る! 17巻

 丸子方…龍王、新九郎の軍と駿府方…小鹿軍の激突。 丸子方が押されているように見えますが、狼煙でタイミングを合わせた別働隊の襲撃、調略による駿府方の離反(福島家の親族まで!)、更に駿河湾を舟で渡って駿府の後ろを突く新九郎…。

 開戦する前から勝敗が決まっていますね。

「どうやらーー京で生きてきた侍のえげつなさを甘く見ていたようだ」

 手薄になっていた新五郎の居館、駿府館に突入する新九郎!

 離反者福島彦四郎の軍が暴れる館内に攻め込む!

 既に大勢は決した頃…。

「新九郎殿への使いを頼まれてくれ 逃がしてやりたい者らがおるとな」

 新五郎からの提案です。館に滞在していた猿楽師一行と戦に関係ない女中たちを外に出したい、と。

「惜しい これだけの気配りができて何故この事態を招いたのだ…新五郎殿!」

 嫡男孫五郎を逃がすこともなく、ごく全うに戦闘を再開。 …生真面目すぎる。戦の大将なんざスカして騙して誑かして、が普通だろうに…。 器ではなかったのかなぁ…。

 その孫五郎も負傷、新五郎の前まで戻っては来ましたが、そこで事切れ…。

「悔しうございます伯父上… 悔しう…」

 もはやこれまで、と館に火を放つ新五郎。

「よろしうござるな御屋形様」

『最後くらい好きにしろ お主がこの家の主だ』

「頼りない主人でごさった」

『まったくだなぁ 柄にもない夢を見たかと思うとすぐに揺れ動く 行くなら行くでガーっと行かねば』

「私には向いていなかったのでござるよ」

 亡き主君、今川義忠…の幻と仲良く話す新五郎。

 …このおっさんが早逝しなければ駿河の状況は大分マシだったんですが。新五郎も身の丈に合わない野望をもつこともなかったでしょうに。

 焼ける館の中を進む新九郎。

「新五郎殿!こちらか!?」

「おお 新九郎殿! 二度とお目にかからぬまま往くつもりでござったがーーお会いできたらそれはそれで懐かしうござるな いやはやーー思わぬ形での宴になってしまいました」

 …小鹿新五郎は切腹。 同孫五郎は討ち死に。 両者の御印にて今回の騒乱は手打ちとなりました。

 小鹿家は御取り潰しとなりますが…

「お、お、お叔父上! た、た、竹若は儂に従うと申しておる!小鹿家を潰さずとも…」

 丸子に身を寄せていた孫五郎の弟、竹若丸に情が移った龍王が小鹿家の安堵を主張。 新九郎としては後顧の憂いを断つためにも小鹿家は潰しておきたい。 後始末は駿河から居なくなる自分がやって、憎まれ役も引き受けておいた方がいい…。

 …龍王は竹若と泣きじゃくって小鹿家再興の言質を口走ったり、新五郎の奥方むめさんは自害しようとするし、駿府方について不利益を被った国人衆が反乱を起こしたり、次から次へと問題が発生。

 ついに京の伊勢亭に居た伊都さんが丸子入りw

「先主 今川義忠になり替わり、駿河今川家、家長として皆に命じる! 諸将、力を合わせ速やかに謀反を鎮めよ!!」

 強権発動で強引に騒乱を鎮火w

 ようやく京に帰れる、となった新九郎ですが、堀越公方 足利政知に分かれの挨拶に訪れたら…。

「伊勢新九郎盛時ーーそちを我が奉公衆に加えることにした」

 …本人の承諾も何もなく?! 「京に帰る」と断ろうとしても「むしろ京で清晃を将軍位につけるために動いてもらいたい」とか調子のいいことを言われ…。

 断りきれず引き受けて京に戻ってみれば

「今帰ったぞ ぬい」

「はて…どちら様ですか?」

 奥さんからの強烈なカウンターw 

 まぁ、一〜二ヶ月で帰る、とか言いながら一年と二ヶ月も放ったらかしなら、さもありなんw

 新九郎がいない間に新右衛門さんが亡くなったり、将軍義尚は六角攻めにかこつけて近江に陣を張って居着いており…。

「あれは『陣』などという物ではない 『御所』だ」

 でその「御所」で何をしているかと言うとただ飲んだくれてるだけという…大分ダメな人だ。

「御所様は今年に入ってからすでに二度お倒れになられた 先日御子が生まれたがまたも女子だ」

 執事の貞宗からすれば、いつ嫡男もいない状態で義尚が身罷ってもおかしくない…それは避けねばならない!…と考えても無理はなく。

「そのために堀越殿様の御子息を用意すると…」

「他に適任の者がおらぬ そのためにお主も堀越殿様より御恩を蒙ったのではないか」

 …裏できっちり話が通ってた…てか目が怖いよ貞宗様。

 で、御所様もその辺の事情が入ってこない程暗愚ではなく

「伊勢新九郎殿ーー御所様はお会いにならぬとのことだ」

 近江の陣地に報告の為に赴いてもケンモホロロって状態。 大御所と御所と大御台がバラバラで好き勝手やってる…もうこの幕府ダメなのでは?

 勝手やってるといえばまさしく将軍家を諌めるべき立場の吉兆家、細川右京太夫政元が山伏のカッコして陣所に潜り込んでたり…。

「この陣には邪気が満ちておるのでな 我が法力で討ち払って進ぜようと思ってな!」 

 …あんたもっとやるべきことがあるだろうが!?

 それぞれの立場で平和にしよう、幕府をどうにかしよう、と動いているんですがすべて噛み合っていない。 命数が尽きる、というのはこういう事なんですかね。 

 その負債を新九郎が被っていく感じでしょうか…。 真面目な奴ほど貧乏くじを引くのはいつの時代も変わりませんね。

 

 

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