
大暮維人先生最新作は変わってしまった日本でバケモノ退治する少年たち。「灰燼巫覡(カイジンフゲキ)」です。
概要書いちゃうとよくあるバトルマンガなんですが、そこは大暮ギミック満載w 独特の世界観が早くも出来上がっています。
前作「化物語」では原作者西尾維新先生の独特な…何?…との相乗効果で逆に分かりやすくなっていました。 前々作「エア・ギア」では圧倒的な描画とキャラクターの掛け合いは面白かったのですが、メインストーリーに少々分かりづらいところがありましたので…。
ソイツらが顕れるようになったのは昔だ ーーずっと昔
時はおそらく遥か未来。 “天災”が形を成して顕れ、人に害を加えるようになった時代。 台風やら洪水やらが明確に人を襲いにやって来る。 その名を”夜“。
「いいか?ここ大切なとこだぞ 大雨が山に降るからヤロカ様が里に来るんじゃねぇんだよ… 逆だわ 逆 里のモンがヤロカ様をバチクソ怒らせっから雨が降るんだ」
…因果が逆になってますね。災害が起きるからその理由や原因を自分の分かる範囲で規定して無理矢理納得する…という科学発展前のプロトコルを、「それが正しい」として法則がまるごと入れ替わっている。 この辺後でも説明があるんですが…。
この世界において軍とは“夜”に対抗する為の存在。主人公の一人ガオの母は軍を指揮する立場でしたが”颱の夜・キャサリン“との戦闘時に神降ろしを行い死亡。その時彼女はガオに日本へ行け、と言い残します。彼女の故国、日本。
「しょぼくれてんなガオ アンタの未来はきっとすんげーなんかが待ってんよ」
日本に辿り着いたガオ。しかし彼の乗ってきた空中戦艦はキャサリンの追撃を受け墜落…。 キャサリン撃退の後、墜落した戦艦の下を掘り返す少年がいました。
「何をする現地人ッ!!!」
「ここは我が母の墓だ!!!」
「この辺にゃ僕のかーちゃんが埋まってんだよっ!!!」
これがもう一人の主人公、仭(ジン)とガオの出会いでした。
最悪の出会い方であり、そのまま殴り合いになる二人。 ひとしきり殴り合って落ち着いたガオは仭に謝罪します。戦艦の指揮官は自分であり、彼の母は自分が殺したも同然だ、と。
「…僕は母ちゃんが死んだのは僕のこの…理不尽を引き寄せる巫覡魂とかいう霊質のせいじゃないかって思ってる」
“夜”に対抗するため人間は霊の力を再発見し、体系立てて技術としていました。人呼んで”霊磁力学“。強力な霊力を持つ者は“夜”と戦わねばならない状況にも追い込まれるでしょうし…いろいろ当たりも強い事でしょう。
「アンタと殴り合ってたあいだーー夢中だったからさぁ…そん時だけかーちゃんのこと忘れることができた 今はあの日から初めて…今日の晩メシ何にすっか考えてンよ」
自身にわだかまりのある二人がぶつかり合い、無二の友となりました。
「母上…すごいかどうかはまだ判らないが 日本には私が信頼すべき男がいました」
仭は”夜“に対抗する力、“祟り刀”の巫覡(パイロット)。
『懸けまくも畏き畏み畏み御申す』
燠火の神楽兵”祟り刀“起動に必要なのは巫覡二人と…おそらく祝詞を上げる巫女二人。 おそらく、としたのは実際祝詞を上げてるのが御陵ナツとフユという…双頭人の女の子だから。下手するとコンプライアンス案件になりそうなところを破格の可愛さwと圧倒的なクリーチャーデザインセンスで存在を保証されています。さすが大暮先生。
巫覡が舞い、降ろした神が祟り刀を振るい“夜”を断つ。
”夜”とは怒る神。鎮める為に、人が神を纏わんと舞う。
神を喰らうか喰われるか。
大筋とは別に、非常に細かいところまで設定が作り込まれているようですね。
現代の電子工学基礎の時代から霊磁力学主体に移った証拠のように「デジカメ」が時代遅れの遺物として出て来たり。なんでも”写らないもの“がいっぱいあるとか。デジタルは霊的存在に反応しない、ということで。
ここから“夜”に対して電子兵装がまったく意味がない、という事実が類推できます。
他にも失せ物探しの”ハサミさん“の儀式の禹歩が何故か坂道バリのダンスになったりw やはり大暮センス爆発です。
とはいえやはり大事なのはキャラクター。仭の全てを救わんとする大きな優しさ、ガオのあらゆる者を護ろうとする責任感。大分度外れてる特徴はこれからのドラマを想像させます。 …そうは言ってもタンポン盗難疑惑を黙って受け入れるのはちょっと自分を捨てすぎだと思いますよ仭くん…。
早速1巻最後で“夜”の子供とされたメリメリの扱いで二人対立してますが。
「見ろ アレはどう見ても人間に仇なす”夜“だ 日本人(おまえたち)は なぜ庇う」
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