神作家・紫式部のありえない日々 5巻

「神回 まごうことなき神回…ッッ」

 小少将さんお墨付きw

 源氏物語新作「須磨」を読んでの感想です。

 帝と彰子が仲良く…まぁそのなんだ、夜可愛がってもらえるようになって…それが周りにバレバレなのはいろいろどうかと思いますがw

「うおおおおおお キュンキュンするんじゃ〜〜〜!!!」

 押しカプの進展で養分を得た藤式部、驚異的なスピードで原稿が進み、完成した「須磨」をお隣の小少将に一番に読んでもらった…と。

 ただ、これで小少将が萌えたポイントと言うのが…。

 官位を剥奪されて須磨に蟄居した源氏。その源氏をわざわざ訪ねてきた現宰相頭中将。

「君がいないと都がつまらなくてね…」

 この場面を「源氏が恋しくて宰相の仕事おっぼりだして会いに来た」と脳内変換して萌えるw

「来たんですけど!? 来・た・ん・で・す・け・ど!!?」

 書いてないことまで妄想してそりゃもうエラい状態でw

「式部さん 一生のお願いです…!! 写本を…写本を作らせてくださいっ!!!」

 活版印刷が発明されるのも800年近くも未来の話、本を増やそうと思えば全文書き写すしか方法はありません。すげぇ面倒だしそうそう作る慣習でもなかった。 それをどうしても手元に置きたいから、と小少将は頼んできたのですね。

 快く承諾した式部は小少将と二人で写本を作成…「限りなく公式に近い写本」が完成しましたw

 お礼も兼ねて式部の「彰子サロンを作る」という目的に協力したい、と申し出る小少将。

 でも自分に何が出来るのか分からない小少将に式部は

「あっ!! ありますよ! ”褒め“です!!」

 新刊を読むと小少将はとにかく褒めてくれる、それでとても元気づけられる、だから

「『彰子さまを褒める』っていうのはどうでしょう」

 長年、定子と比較されてきた彰子には自信というものが欠けている。小少将が彰子のいいところを見つけて褒めることで彰子に自信を持たせられれば…。

 これが当たり、彰子は少しづつ積極性を出すようになっていきます。

「あ…あのね藤式部 私に漢詩を教えてほしいの 特に白居易の詩を知りたくて」

 源氏物語には漢詩や漢文が散りばめられているので、これを深く知る事で帝の考えている事もより深く知れるようになりたい、と。

 当時、女性が漢籍を読むことはよろしくない、とされていたのですが…それでも学びたい。 藤式部に否やはありません。

 これも積極性の発露…と言えるでしょうか。

 これを機に彰子サロンの更なる充実化を図りたい藤式部。「若くて気概のある歌詠みの女房」が欲しい、という結論に。 最終的に道長に言う事聞かせる為に…寝所に生霊のフリして乗り込む、という斜め上の策が実現w

 なんとこれが上手くいき…まぁ政治と呪術が不可分だった時代ですし…道長が歌詠み探しに本腰入れてくれるようになったのですが、それと反対に赤染衛門のサロン改革は遅々として進まず。

 この時代ではごく普通の「殿方と歌を交わす」ことさえ嫌がる…という、まぁ超お堅い職場。

「確かにあなたの歌は素敵で倫子さまには重宝さらていたようですけど ここにはここの作法というものがあります あなたがこちらに馴染んでいただかないと困るわ」

 …あー、典型的なお局様…。

 小少将による彰子の意識改革等など、サロン完成まではまだまだ道が長いようです。

 さて、そんな中でも政争は進んでいきます。道長側の情報を伊周にそれとなく流しているスパイ…謀略家? 道長の妻、明子の兄権中納言俊賢。これが藤式部に粉かけて来ます。

「お尋ねしたいのだが あなたが書いている『源氏物語』…人によっては光源氏のモデルは伊周様ではないかーーとの噂を聞いて」

「もしや意図的に源氏を貶めて伊周さまを彷彿とさせる話にせよ… そう道長さまから指示されているのでは と思ってね」

 この人、金峯山の件で式部が書いた文も把握していまして、どうも式部が道長陣営の参謀のような役割を果たしているのではないか、と邪推したようです。

 「源氏物語」は帝に彰子の元に通ってもらう為に作ったものでそれ以上でもそれ以下でもない、そもそも道長にそんな思惑があれば源氏ではなく藤原氏を讃える内容にさせるだろう…。

 そう言って俊賢を納得させる藤式部。

 そこで油断した俊賢の身の上話…父が政争に敗れて左遷、共に都落ちして復帰の為、下位の者が通う学校に入らねばならなかった…。

「人の辛かったであろう 悲しかったであろう話を聞いた時『可哀想に』『気の毒に』と思う前に『面白い』と感じてしまう 物語に取り入れたい 早く書きたい早く早く早く」

 …人は幸せだけ感じて生きていく訳にはいかない。悲しい、辛い、悔しい、楽しい…いろんな感情を、刺激を受けないと生を感じることが出来なくなる…のでしょう。だからこそ悲劇やバッドエンドにも存在価値がある。 つまりそういう話を書きたい、という衝動を持つ作家が存在する事になります。 ただそういう衝動を作家本人が好むかどうかはまた別の話な訳で…。

「いずれ 地獄に落ちるのではないかーーと」

 そんな中、ひとつの噂が宮中を密かに包みます。

「彰子さま ご懐妊…」

 道長陣営にとっては待望の世継。しかしこれで定子の子、敦康の立場が危ういものになる…次の政権を待ち構えていた定子の兄、伊周は黙っていないでしょう。 せっかく家族としてまとまった皇家は引き裂かれて政争の道具にされる道が確定しました…。

 そしてこのとびきりの悲劇を作家、藤式部は放置しておけないでしょう。彰子と帝の押しカプが崩れていく様を人間、藤式部は悲しみつつ…。

 悲劇の予感しかしないな。所詮平安貴族なんでぐちゃぐちゃの陰謀劇になってしまうのは仕方ないのですが…コミカルな描写も入れ込んでいってもらいたいなぁ…。難しい?

 

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