あかね噺 14巻

「いやぁ…よくやった よくやったなァ」

 まいける真打昇進決定を喜ぶ志ぐま。それだけなら泣ける場面なんですが…。

「兄さぁん!! すごっ…すっ すごい!!すごい!!兄さん!! 兄さぁん!!!」

 弟弟子3人が涙でぐしゃぐしゃになりながら抱きついて来るw しまらないけど温かい一門の絆。

 まいけるもめでたいですが、あかねも二ツ目昇進がきまってます。昇進の準備で駆けずり回るあかね。…といっても何もわからないので志ぐまが一緒になって駆けずり回って…大変だな師匠。

「来月の俺の独演会 開口一番…任せたぞ」

 今迄頼まれたことのなかった独演会に誘われた。

 認められた?

「うすっ!! 謹んでお受けします」

 その独演会が開かれるのは渋谷。最先端のカルチャーが集まるこの街に古典落語一つで挑み、落語を選ばせた…志ぐまの凄まじさよ。 ガワは友達の多い、多趣味で気のいいおじいちゃんなんですがw

 独演会当日。あかねが開口一番にかけたのは「初天神」。天神さまのお祭りに出かける子供と父親の噺。楽しそうにはしゃぐ子供と面倒くさがりながらも笑顔がこぼれる父親。その関係は弟子入り当初の小学生あかねと志ぐまにも似て。

「踊りも遊びもはしゃぐのも半端にやらない 師匠に教わりました 落語の世界を楽しむことを!!」

 復讐のためだけの落語マシーンにならすに済んだのは志ぐまの功績でしょうか。

 天神さまには寿限無寿限無〜長久命の長助が来ていたり狸賽振って博打やろうとしてたり、あかねの落語ヴァース全開! 習い事の過程は習ったことを反復する“守”から基本を外す”破“へ進む、と言いますがこれは正に“破”。大舞台でその成長ぶりを遺憾無く発揮するあかねでした。

 さて、この会の本番はこの次。志ぐま師匠の高座です。

「この渋谷の会は師匠が”十八番“を演る会 身構えもするね 聞けるのだから 落語界の頂点…其の一人 阿良川志ぐまの“本領”をね」

 かの辛口批評家学問先生をしてこう言わせる、阿良川四天王 人情噺の名手”泣き“の志ぐま。

「ほぉら…死にたいんだろ?教えてやるから 誰って俺ァ…死神だよ…」

 「死神」。何もかも上手くいかない男が死神の力を借りて財を築くが調子に乗りすぎて自分の寿命を縮めてしまう、有名な噺。

 無駄なものを削ぎ落とし、最低限の言葉と仕草で観客の想像を掻き立てる。否が応でも客を引き込む魔性の落語。

 実際「死神」は上手い方がやると本当に怖い噺でして…。 自分の寿命の蝋燭を継ぎ足そうとして震える手を抑えながら替えの蝋燭を伸ばすシーンとか洒落にならない緊張感なんですが。

 そのまま倒れ込む仕草落ちで幕が下りるまで観客が身動き一つ出来なかった…。まさに名人の仕事。

 この高座をあかねに見せた意義とは。

「今年は例年に比べても出色の出来でしたね」

「そうかい じゃあ来年も来ねぇとな もっとすげぇの見せてやるよ」

 “志ぐまの芸”に一番近いと言われる現志ぐま。その力の一端が明らかになりました。

 また”志ぐまの芸“自体も禄郎が探している事でいくつか明らかになってきました。もともと柏家一門に伝わっていた演目で、先代志ぐまが高座にかけてはいたものの未だ未完として名をつけていなかった、とか。 それがなぜいま阿良川一門にあるのか、全ての謎は“先代志ぐま”柏家生禄にしゅうそくするようです。

 …実はその時代の話…若き一生や志ぐま…ついでにうらら師匠wの時代の話をやっていますので次巻あたりはその話になるのではないでしょうか。

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