• 逃げ上手の若君 17巻

     青野原の戦い。ナチュラルボーンモンスター土岐頼遠が北畠顕家軍を蹂躙します。自分の郎党を“ぶん投げる”というちょっと何言ってるか分からない攻撃方法で数十倍の兵力差のある顕家軍を分断していきます。

    「北条にお任せを 突撃の速度を殺し矢の的にしてご覧に入れます」

     雫に策あり。時行と弧次郎が土岐のギリギリ前を逃げ回り、”ぶん投げ“を防ぎながら誘導。

     随伴の桃井は…亜也子が引き離す。

    「私の事捕まえられたら嫁入り考えてもいいかな〜…」

     これであっさり引っかかるのどうなんだw

    「囃せ囃せ皆の衆!! これより北条時行がお逃げだぞ!」

     逃げながら土岐の兵を削る北条。しかし…。

    「うるさい小童共だ もう死ね」

     土岐は精兵数名を一気に斬り飛ばし爆散させ、周り全てを吹き飛ばす!

     美濃骨霰!

     …いや兵士ってそう使うもんじゃないから…。

     効果は絶大。時行と弧次郎は馬を振り落とされ身動きも取れない!

     だがその時 戦場に響き渡る雅楽!

    「奏でよ公家衆! 雅な戦を東夷どもに見せてやれ!!」

     顕家が…伸びる?!

     わざわざ櫓を用意して高い所から睥睨して目立つ! いや剛弓で自ら戦場全体を援護する、という意味もあるのですがw

    「土岐頼遠 自分自身を武だけで語る天晴な武士よ 美しき余を飾り立てて御死に晒せ」

     雅な口調で殺意満々な内容を吐かれる顕家卿…。

     櫓のしなりまで利用した強烈な一射で土岐を射抜き、その隙に玄蕃の爆弾、時行、弧次郎の斬撃でついに巨漢をよろめかせる!

    「…おのれ 憶えたぞ いずれ必ず」

     川に落ちていく土岐。生死は不明ですがこの戦場にはもう復帰できないでしょう。

    「皆の盛り上げ大いに結構! 青野原の祭事 これにて御仕舞!」

     青野原を抜け、次の不破関で待ち構えていたのは足利家執事 高師直!

     あまりに早い展開。顕家軍が傷付いた軍の再編もそこそこに進軍を急いだのにきっちり防備を固められてしまった…。 忍衆…天狗の成果か。

    「一通り指示は済ませた 俺は執事の仕事で京に戻る」

     戦を前にして戦場を離れる?!

    「後の始末は…息子に任せる」

     出て来た仮面の将は高師冬を名乗り…。

     時行に向けて放った技は“逆さ凶”。それは吹雪の技!

    「上へ 少しでも上へ 野心が溢れて止まらない 尊氏様の名の下に 自分が天下に号令する」

     麿…国司清原と同じく、尊氏の悪しき神力に汚染されている様です。尊氏に都合がいいように精神が捻じ曲げられているようで。

     斬りつけられて意識を失う時行。

    「ハイ三途の川へようこそぉ!」

     やたら明るい声w 頼重が助けてくれたのか…。

     一命を取り留めた時行。不破関を突破できず、顕家軍は本拠伊勢から奈良に回って京へ至る道を取ります。

     北進を阻むのは再び現れた高師直と桃井直常!

     京が近いと見て手柄だけ取ろうと後醍醐帝麾下の公家衆が軍に合流…はっきり言って命令系統と連携がガタガタになった顕家軍。陣の奥深くまで師直の軍の侵入を許してしまいます。雫のいる中央部まで…!

     師直の太刀をもろに受けてしまう雫!

    「兄様のお家再興を 顕家卿のお祭りの国を ああ やりたいことが増えていく もっと力を出さなくちゃ いずれ消えてなくなる身なのだから」

     まっぶたつにされても平然とその場に立つ雫。

    「…貴様 人ではないな」

    「諏訪の御左口神(ミシャグジ)雫 今は北条家の執事です」

     ミシャグジと言えば長野方面の土着神。尊氏とか魅摩とかで神力云々の話はありましたので、時行の方でも強烈に神力を振るう人が出るかな〜と思っていましたが、具体名が出ましたか。ちょっとマイナー気味ですが。有名どころの「両面宿儺」は「呪術廻戦」に取られちゃいましたからw

     高師直、「全金属製帝に譲位」とか冗談みたいな事を本気で考えています。「真面目な人間が真面目に善後策を考えた結果、ギャグみたいな挙動をしている」感が満々です。これの恐ろしいところは本人が「上手くいく事を疑っていない」事。躊躇する要素がないんですね。更に言えば師直はこの時点で尊氏のカリスマに少なからずアテられている状態。政務軍務に支障が出ていないのが不思議です。

     尊氏によって人生が歪められた者が既に多くいます。このまま尊氏のやりたい放題だと我々の知っている歴史に繋がらないんじゃないか…という気もします。 転換点はどこになるのでしょうか?

  • あかね噺 13巻

    「…我慢出来てるか?」

    「ーーモチロン 今日なんて落語すらしてませんよ」

     真打昇進試験を前にしてのまいけると志ぐま。

     「落語家として一人前」が通常の真打の基準なんですが、阿良川一門においては意味が違います。

    「”芸を極めし者“を真打と認める」

     それこそ大看板クラスの腕前を求められる…。破門騒動のせいもあってここ数年挑む者すらいなかったその試練に挑むまいける。

     しかしこの大事な時期にまいけるは“落語をやってない”?

     あかねがついていった営業仕事でもカラオケ歌ったり演芸やったり三味線ひいたり…。

    「決めてるんだ ”見せたい“より“見たい”を選ぶってね」

     観客が楽しいのが一番、エンターテインメントに徹する…という話でしょうか?

     そんな状態で迎えた真打昇進試験。

    「全身全霊!! 心から応援しています!!」

    「うん!! 頼むよ」

    「心配なんてしてませんから」

    「声 震えてるよ」

    「兄さん!! 真打の成り方!! 勉強させて頂きます!!」

    「言ってくれるねー しょうがない 範を示そうか」

     享二、こぐま、あかねの激励を受け舞台に上がる。

     審査員は党首一生と、四天王のうち師匠の志ぐまを除いた3人…つまり志ぐま一門を敵視している全生が票を持っていまして…。

    「無理だけどねっ!!」

     この人は陰謀巡らしてる時すげぇ楽しそうなんだよな〜。

     …客に媚びる手合いのやる事は全て読める。何故なら自分もそうだから。まいけるのやること全て潰してやる…!

     わざわざ前説で前回の昇進試験の話題を出し、思うさま場を冷やす全生。

    「勘違いしないでね 私は期待しているんだよ あんな目に遭ったのに懲りもせずに弟子を送り出して結果まで前回と同じだったら師匠としてどうなの!?ーーって感じでしょ!?」

     志ぐま一門の敵愾心を煽る。メンタルから削ってまともに高座をやらせない気か。

    「ーーお前なら楽しめるさ」

    「モチロン 最初からそのつもりですよ」

     高座に座るまいける。羽織を脱ぐ。

    「えー今の時代趣味…”遊び“なんてのは様々でございますが 嘗ては相場が決まっていたようで」

     軽快で流麗な喋りで音として客を乗せる“唄い調子”で場を温めようとしますが…不発。

    「私が味わってきた屈辱!!苦しみ!! その全て。味あわせてあげよう!! どうだ!!楽しいだろ!! 阿良川まいける!!」

     …いわゆる”本格派“に引け目があるんですね。ただそういう芸で登り詰めたのは間違いないのですが。 全生の一生や志ぐまに対する複雑な感情が感じ取れます。

    「随分な言い草だな じゃあ…何かい? 全員…俺が死ねばいいと思ってんのかい?」

     ゾッとするような口調で話し出すまいける。

     この演目はチャランポランな若旦那が蔵に閉じ込められ、心を入れ替えた時には情を交わした芸者が亡くなっていた…という人情噺『たちきり』。

     前半の軽薄さが後半の“泣き”に繋がる”感動”の芸。

    「驚くよね 今の兄さんしか知らなかったら でも昔を知ってる人からすれば寧ろこっちが本来の姿 まいける兄さんは元々バリバリの技巧派だったんだよ 天才的なレベルのね」

     かつてチャラけていたまいけるは志ん太破門の後変わりました。

    「俺はもう…一番弟子ですから」

     自分をひけらかす事はなくなり、客に尽くし、弟弟子たちに目をかけ…滅私奉公に勤しむ。 自分がしっかりしなければ、という責任感故か。

     蔵住まいで自問自答し、己の行いを反省した若旦那のように。

     志ん太が破門になって、でも自分には何も出来なくて。

     会えない寂しさの余り死んでしまった芸者、小糸の事を今更知ってしまった若旦那のように。

    「なんで…なんて俺ぁバカなんだ」

     今の俺なら演れると思ったんだ 軽薄 喪失 再生 俺が歩んできた人生を 俺が見せたい噺を

      

     前半の軽さが後悔の念を引き立てる。

     線香が燃え尽き、三味線の音が止むラスト。満場の拍手を得ましたが…。

    「足らんな」

     一生バッサリです。アウェーな状況から掴み返したのは確か。しかし何人か最初から寝たままスルーした者たちがいた。「取りこぼした」。

    「掴み切ったと言えん以上 俺は認めない」

     一生、合格出さず! …いや流石に厳しすぎやしませんか?

     しかし審査は合議制。一生といえど一票は一票。一剣と泰全は賛成。残る全生は…。

    「如何も何も…まあいいけと 別にいいけど」

     泣きながら、心底嫌そうにしながら。唇噛んで血を流しながら。

    「認”め”る”っ」

     我が儘無頼やりたい放題。故に全生に嘘はない。嫌いなまいけるにであっても心動かされた事実を曲げる事は出来ない…。

     つまり賛成3、反対1。

    「でっ…では改めて審査結果を発表します 今回の真打昇進試験 賛成多数により 阿良川まいけるっ!!真打昇進決定!!」

     まいける兄さんの葛藤と再生、成長がよくわかる1巻でした。 己の感情の全てを懸けた最高の一席。多芸でも技巧派でもない感情剥き出しの演技は、おそらくまいけるにとってこれが初めて。これはかれにとっても大きな成長だったのでしょう。 

     そういえば「推しの子」でもそんなエピソードがありましたね。演技に感情を乗せることで爆発力が

    上がる、というような。舞台に上がる者たちの共通認識なのかも知れませんね。

     しかしここで思わぬ株価急騰があったのが全生師匠w 好きにやっているだけに自分に嘘がつけない…逆方向に筋が通っています。 こういう人って却って小賢しい事が出来なかったりするので主人公側に嫌々ながら協力するハメになったりして味わい深いんですよねw

     「大谷日堂」って言うとわかる人にはわかるw

  • HUNTER×HUNTER 38巻

     一冊まるまる出ていない主役wゴンさんが表紙を飾っています。 B・Wに乗っていないので仕方がないのですが…クラピカも出てきたのは最後の一コマ。レオリオに至っては乗り込んでいるはずなのに医療部門の使いっ走りで忙しく出番なし!w

     なのに面白いから始末が悪いw

     船内のマフィア3組織の抗争。不文律を破り好き放題しようとするエイ=イ組を排除しようとするシャ=ア一家とシュウ=ウ一家。

     シュウ・エイ・シャ…マンガ家という人種はどうして出版社をヤクザにしたがるのかw

     エイ=イは全員念能力者、という触れ込みだったので相当強いかと思っていましたが、よく考えたらこの世界、一定以上の強者はだいたい念能力者な訳で…。 他の2組織も相当数の能力者を抱えており、その上モレナがエイ=イの構成員をまるごと入れ替えてしまったせいでチームワーク皆無! 能力の取捨選択もできる様子でかなり有利なはずなのに、シュウ=ウの若頭ヒンリギと相対するとほぼ手も足も出ず。 軍とのコネも駆使して(これも今のエイ=イにはない)追い詰めて行きます。

     ヒソカを追う幻影旅団。フェイタン、ノブナガ、フィンクスの3人は利害の一致からシャ=ア一家の食客となっています。てか裏の世界では旅団はアイドル扱いなんで、なんだかちょっとややこしい事になっていたりw

     詰所にエイ=イの能力者が襲ってきますが…。

    「お前等が世界を壊すって言うなら オレがお前等を壊すよ」

     …分かってた事ですがまるで相手になりません。

    「さっき決めた エイ=イ一家はオレらが潰す」

     しかもヒソカ探しが目的だった旅団がエイ=イも的にしてしまってるし。

     そのヒソカはシュウ=ウに見つかり、ヒンリギが直接交渉に。

    「単刀直入に言おう…頼みがある エイ=イ一家とシャ=ア一家の悶着が納まるまでの間…第一層の娯楽エリアで遊んででくれ」

     要するにシャ=アと手を組んだ幻影旅団がエイ=イを潰すまで大人しくしていてほしい、と。

    「一つ…聞いていいかい? ボクと旅団 どっちが勝つと思う?」

    「悪いな オレは旅団派だ」

    「推しは?」

    「箱だな アンタは?」

     …何の話してんでしょうかコイツらは。

     下手したらその場でサックリ殺されてた危険な交渉はどうやら成功したようです。「正直者も嫌いじゃない」らしい。

    「但し…旅団(アチラ)から売ってきたら拒めないよ…?」

     この情報をすっかり飲み込んでシュウ=ウはシャ=アと手を結びます。シャ=アの若頭オウがヒンリギと揃ってエイ=イの隠しアジトを狩り立てて行きます。

     「扉同士の繋がりを変える」念能力で2組織を翻弄するエイ=イ。痺れを切らした旅団がアジトに突っ込みます。

    「『罠とか関係ない』そうだ」

     この過程でヒンリギが発信機飲み込んで自らオトリになる展開になり、なんだかノブナガに気に入られたり…w 「ノブナガ敵に惚れすぎね」

     

     さて、その一方で王位継承戦も進んでいる訳ですが、割と意外なのが第4王子ツェリードニヒ。学生時代の友人が護衛軍に入ってまでも彼のために動こうとしている。

    「ツェリ…お前ホントにそれでいいのかよ…!?」

     「権力を持った最悪の殺人鬼」という印象でしたが、それだけの単純な人物でもなさそうです。

     この継承戦、割と順当に「王に相応しくない者」から脱落している感じです。薄っぺらな「タイソン教」を広めることで信者を増やす能力の第6王子タイソンも状況を読む能力はかなり高かったりしますし。

     問題はその手の能力がない第11王子フウゲツ。第10王子カチョウの方が政治感覚はあったのですが脱出事件で死亡…カチョウそっくりの念体がフウゲツの側に出現している状態。

    「今までずっとずっとカーちんが私を護ってくれてたの知ってるよ…? 今度は私の番…! 何でもやるよ!! やりたいの!!」

     センリツの見るところ、フウゲツは”絶“並にオーラが弱くなって邪霊がまとわりついている状態。このままだと命も危ない! …カチョウの念体を作っているせいじゃないのかなぁ…?

     どこまで想定通りかはわかりませんが、ナスビ国王の考えている通りの展開なんじゃないでしょうか。

     この巻でもうひとつわかったのが幻影旅団設立の経緯。 最初は流星街で拾ったビデオを元に劇をする“劇団”だったんですね。

     普通の少年だったクロロが、皆を楽しませる為に虐められながらも作り上げた。

     世界中のゴミが集まってくる流星街。そこに住むものたちも「存在しない=人間ではない」扱いで人攫いは当たり前。 

     クロロたちと一緒に劇をやっていた少女サラサが姿を消し、哀れな姿で発見され…。

    「3年…待ってもらえる? 僕が14歳になるまでに全部整える 自分の力も…流星街のシステムも…」

     サラサの仇を探す、と逸るウボォーをクロロが止めます。

     通信インフラの急速な発展で個人の情報発信のハードルが下がっている。サラサを殺した奴らは必ず手元に映像を残している。しかしそれを発表して自慢するにはアングラなネットワークでないと難しい。それを流星街に作ってやれば犯人は必ずそこを経由する…!

     罠を張ると同時にしなければならない事がある。

    「これ以上流星街でサラサ達みたいな犠牲者を出さないようにする為に 自分の人生を捧げる覚悟…!」

     3年経ったらたくさんの人間を殺す。

    「僕は残りの人生を悪党として生きる 世界中の人間が恐れ慄く程の 小悪人共が震え上がり決して流星街に近づかない様 この街と自分をデザインする」

     「幻影旅団」とは流星街を守るための壮大な演劇だったんですね。多分演者が誰一人幸せになれない。クロロからして現在の人格は演技であるのですから。 

     冨樫先生によれば幻影旅団とヒソカは「最終的に全員死ぬ」と言う事です。それ自体は因果応報ではあるのですが…その背景を見ればやりきれないものがあります。 人に様々な側面があるのなら、最悪の殺人鬼にも救いの一つくらいはあってもいいのではないか? そんな風にも思います。

  • アラフォーになった最強の英雄たち、再び戦場で無双する!! 3巻

    「25年前…『七英雄』どもが七つの石に施した忌まわしい封印…『皇華六芒星封陣』 そのうち2つを破壊すれば封印の効力は失われ究極の『災厄』を解き放つことごできる そうすれば人間どもは確実に滅ぶ」

     七つの王国へ一斉に真・暗黒七星を送り込もうとする魔王ベルゼビュート。

    「その必要は…無ぇ!!! この俺が一人行きゃあ人間共など…皆殺しだからだ!!!」

     抜け駆け…と言うにはあまりにあからさまな物言いは真・暗黒七星の一人“暴虐龍”ゲオルギウス。

     そのまま手下を連れて人間界へ向かいます。目的地は第2王国『砂漠の正教国』。『怪力聖女』ドーラの国!

     娘シーラが臨月を迎えたその時、ドーラの特殊能力『妖精の耳(フェアリーセンス)』は隣の小都市ネクロポリスが襲撃される音を聞きつけます。…いや遠すぎない?!

    「でもこういう時だからこそシーラと皆を守るよ」

     『殺し尽くし』『奪い尽くし』『壊し尽くす』勢いで王城へ襲いかかるゲオルギウス軍。

     対してドーラは準備不足のまま兵を出しても犠牲が増えるだけ、と…。

    「いいや奴らは アタシ一人で迎え撃つ」

     巨大な斧一本で襲いかかるドラゴンをぶった斬る!

    「ここに『線』を引いたよ この『線』から先へはアンタ達…一歩も行かせないよ!!」

     宣言の通り、手下の竜人たちを苦も無く排除していくドーラ。

    「お前らじゃ時間の無駄か!!」

     進み出てくるゲオルギウス。トップ同士のタイマンだ!

    「今からこの俺を一発殴ってみろ」

    「何だいそりゃ…??」

    「『ハンデ』をやると言ってるんだ でなきゃ勝負にもならねェ」

     ならば、とドーラが振り上げた斧は無防備なゲオルギウスに降ろされる…余波で周りの魔族が吹き飛ぶ衝撃! しかし…。

    「こいつは参ったね…」

    「わかったか? この世にゃ二種類のイキモノしか居ねェ 俺か 俺以外か」

     まるで傷ついていない! 反則能力『超竜靭』!

    「俺の体は首筋だろうが目ン玉だろうが…絶対に壊せねェ!!」

     神魔だけが持つといつ固有能力『反則能力』!

     要するにゲオルギウスは『この世で一番頑丈』である、と保証されている!

     防戦一方に追い込まれるドーラ。しかしゲオルギウスが人間界に興味があるわけではなく、ただ破壊と殺戮を楽しみたいだけ、と分かり…。

    「俺は俺様が気持ち良くなるためだけにここに居んだよ!!」

    「そう…かい… ーーならなおさら負けるわけにはいかないねェ!!!」

     雰囲気が変わるドーラ。

    「小細工はやめたよ 力には力 真っ向からアンタを倒す!!」

     ゲオルギウスの腕にヒビが入る!

    「ダイヤモンドでもオリハルコンでも脆く割れる叩き方や角度がある そのポイントを聞き分けさせてもらったよ 私の…『妖精の耳』でね」

     おお…超聴力をそう使うか…。

    「アンタはもう”無敵“じゃあ…なくなった!!!」

     しかしゲオルギウスにはまだ隠し玉がありました。

     巨大化し堅いウロコが全身を覆う。 『暴虐龍』の本当の姿…! それは今まで以上の暴威!

    「“技”なんてのはなァ!!! 所詮…力も速さも無ェ…雑魚が!!すがるモンなんだよ!!! 力と…速さこそが…『暴力』!! そして『暴力』こそが…!! 強さだ!!!」

     ボディに一撃もらい、ついに膝をつくドーラ。

    「がんばれーーーっ ドーーラさああん!!」

     その時ドーラの耳に入って来るのは夫・モーリス国王始め国民たちの声援。危険を冒しても応援に来る彼らに

    「…まったく馬鹿な子たちだよ そんな風に応援されちゃ まだ倒れるワケにはいかないね!!!」

     守る為、戦い続けるドーラ。それを『弱さ』と言い切るゲオルギウス。しかし彼もまたくすぶっていた『竜人』たちをまとめ上げ引っ張ってきた…守るべき者を持つ者でした。

     ドーラの斧も壊れ、残るは互いに拳のみ。素手ゴロタイマン勝負!!

     しかし体力ではゲオルギウスに分がある!(ドーラは齢が齢だし…)

     ゲオルギウスの最後の一撃がドーラに決まらんとする時、ドーラの耳が声を拾います。

    「オギャアッ!!」

     シーラが出産した!おめでとうおばあちゃん!

     一瞬復活したドーラはカウンター気味にゲオルギウスの拳を迎え撃ち…ひと欠片残っていた斧の破片はゲオルギウスの体を粉砕する!!

     消滅するゲオルギウスと共に配下の魔族も塵となって消滅。ドーラも立つことは出来ませんが生き残った。人類側の勝利です!

     圧倒的に強かったゲオルギウスをドーラが下したのは、やはり守るべき者があったからでしょうか。更に守る対象が増えたと知ったとき、正に火事場の馬鹿力が宿った。

     しかしゲオルギウスも配下たちに情のようなものは感じていたようです。これを自覚したら彼の方も踏ん張れたのではないでしょうか。実は見た目より更に厳しい…紙一重の勝負だったんじゃないでしょうか。

     さて、同じ所に『門』は連続して開けないとのことでしばらくは第2王国は安泰。神魔は共闘を嫌うそうで一人づつ攻めて来る様子…飛んで火に入る夏の虫って奴では?

  • ウイングマン

     本日、桂正和先生の「ウイングマン」実写ドラマ化が発表されました。連載開始が1983年ですので、実に40年越しのメディア化です!

     「電影少女」「I,s」「ZETMAN」等ヒットを飛ばし続けた桂先生の初連載作品にして、おそらくご自身の「好き」を全部ぶち込んだ意欲作でした。

     それはぶっちゃけて言ってしまえば「特撮ヒーロー」と「美少女」w

     中学生になっても特撮ヒーローが好きで、好きが講じてオリジナルのヒーローコスチュームを作ってしまった少年、広野健太。

    「先生、広野くんなら変身しに出ていきました!」

     風紀取り締まりみたいな事をする…要するにヒーローごっこをしていた健太が、突然空中から降ってきたほぼビキニ姿の女の子、アオイと出会うところから始まる「ウイングマン」。

     アオイがもたらした、書いた事が現実になるノート「ドリムノート」の力でウイングマンに実際に変身できるようになった健太は、特殊な出自が何一つないのにスーパーパワーを手にできる…という当時の少年たちの憧れの的でした。 …仮面ライダーとかは(当時は)改造手術とか受けないといけなかったし、特殊な訓練を積んで技術を身につけるか先祖代々の血筋で能力が保証されている等、何か特別な事がなければいけなかった。そういうのが無くてもポンと変身能力を手にしてしまった健太は、当時まだ影も形もありませんでしたが所謂「なろう系」的立ち位置であったかもしれません。

     いわんや理解者のお姉さんまでついてくる、となったらw

     ただ、そのまま上手くいく訳でもなく。

     ドリムノートによる強化は言ってしまえばガワの強化。健太本人の基礎体力がなければ十二分にウイングマンの力を発揮する事はできない事が分かります。ど素人がレーシングカーに乗っても振り回されるだけ、ということでしょうか。

     結局健太は地味な体力づくりから始めていくこてになります。

     同時にヒーローである事の悲しさ、辛さも知り、健太は真のヒーローへと成長していく事になります。

     いや、別口で戦隊ヒーロー「セイギマン」をやったり、意中の人…美紅ちゃんを含めた事情を知った女の子たちでサポートチーム「ウイングガールズ」を結成したり、結構楽しそうにもやっていましたがw

     ここらへんは特撮ヒーローにかぶれたクソガキの魂を撃ち抜いた要素でしたが、もう一つ、もう少し広い範囲のガキどものハートを鷲掴みにした要素が「美少女」と「パンチラ」でした。

     まだそこまで過激化はしていないジャンプのエロ要素は、金井たつお先生に代表される「パンツの書き込み」がメインだった訳ですが、桂先生の登場で画力が大きくアップ! 可愛らしいキャラクターにリアルなパンチラ(女体)という、後の美少女ブームに繋がる戦術ドクトリンがここに完成したのです。 …地獄の釜が開いた、とも言いますかw

     実際、「ウイングマン」終了後の桂先生はヒーロー要素は抜きにして恋愛要素をメインに持ってきた「電影少女」でヒットを飛ばす訳で。時代的にもヒーローではメジャーに行けなかったのですねぇ…。

     ただ、その後もアニメ「TIGER&BUNNY」に関わる等、先生のヒーローものとの関わりは続いています。

     最後に健太は人々の応援を受け、真の正義の味方として立ちます。正しく夢物語であり理想に過ぎませんが、それを若さと熱さで描き切る姿には感動を覚えます。

     あの熱気をドラマでどう再現してくれるのか、楽しみに待ちたいと思います。

     そしてできれば再アニメ化も…期待しています!

     チェイング! …悪!裂!ウイングマン!

  • 灰燼巫覡 1巻

     大暮維人先生最新作は変わってしまった日本でバケモノ退治する少年たち。「灰燼巫覡(カイジンフゲキ)」です。

     概要書いちゃうとよくあるバトルマンガなんですが、そこは大暮ギミック満載w 独特の世界観が早くも出来上がっています。

     前作「化物語」では原作者西尾維新先生の独特な…何?…との相乗効果で逆に分かりやすくなっていました。 前々作「エア・ギア」では圧倒的な描画とキャラクターの掛け合いは面白かったのですが、メインストーリーに少々分かりづらいところがありましたので…。

     ソイツらが顕れるようになったのは昔だ ーーずっと昔

     時はおそらく遥か未来。 “天災”が形を成して顕れ、人に害を加えるようになった時代。 台風やら洪水やらが明確に人を襲いにやって来る。 その名を”夜“。

    「いいか?ここ大切なとこだぞ 大雨が山に降るからヤロカ様が里に来るんじゃねぇんだよ… 逆だわ 逆 里のモンがヤロカ様をバチクソ怒らせっから雨が降るんだ」

     …因果が逆になってますね。災害が起きるからその理由や原因を自分の分かる範囲で規定して無理矢理納得する…という科学発展前のプロトコルを、「それが正しい」として法則がまるごと入れ替わっている。 この辺後でも説明があるんですが…。

     この世界において軍とは“夜”に対抗する為の存在。主人公の一人ガオの母は軍を指揮する立場でしたが”颱の夜・キャサリン“との戦闘時に神降ろしを行い死亡。その時彼女はガオに日本へ行け、と言い残します。彼女の故国、日本。

    「しょぼくれてんなガオ アンタの未来はきっとすんげーなんかが待ってんよ」

     日本に辿り着いたガオ。しかし彼の乗ってきた空中戦艦はキャサリンの追撃を受け墜落…。 キャサリン撃退の後、墜落した戦艦の下を掘り返す少年がいました。

    「何をする現地人ッ!!!」

    「ここは我が母の墓だ!!!」

    「この辺にゃ僕のかーちゃんが埋まってんだよっ!!!」

     これがもう一人の主人公、仭(ジン)とガオの出会いでした。

     最悪の出会い方であり、そのまま殴り合いになる二人。 ひとしきり殴り合って落ち着いたガオは仭に謝罪します。戦艦の指揮官は自分であり、彼の母は自分が殺したも同然だ、と。

    「…僕は母ちゃんが死んだのは僕のこの…理不尽を引き寄せる巫覡魂とかいう霊質のせいじゃないかって思ってる」

     “夜”に対抗するため人間は霊の力を再発見し、体系立てて技術としていました。人呼んで”霊磁力学“。強力な霊力を持つ者は“夜”と戦わねばならない状況にも追い込まれるでしょうし…いろいろ当たりも強い事でしょう。

    「アンタと殴り合ってたあいだーー夢中だったからさぁ…そん時だけかーちゃんのこと忘れることができた 今はあの日から初めて…今日の晩メシ何にすっか考えてンよ」

     自身にわだかまりのある二人がぶつかり合い、無二の友となりました。

    「母上…すごいかどうかはまだ判らないが 日本には私が信頼すべき男がいました」

     仭は”夜“に対抗する力、“祟り刀”の巫覡(パイロット)。

    『懸けまくも畏き畏み畏み御申す』

     燠火の神楽兵”祟り刀“起動に必要なのは巫覡二人と…おそらく祝詞を上げる巫女二人。 おそらく、としたのは実際祝詞を上げてるのが御陵ナツとフユという…双頭人の女の子だから。下手するとコンプライアンス案件になりそうなところを破格の可愛さwと圧倒的なクリーチャーデザインセンスで存在を保証されています。さすが大暮先生。

     巫覡が舞い、降ろした神が祟り刀を振るい“夜”を断つ。

     ”夜”とは怒る神。鎮める為に、人が神を纏わんと舞う。

     神を喰らうか喰われるか。

     大筋とは別に、非常に細かいところまで設定が作り込まれているようですね。

     現代の電子工学基礎の時代から霊磁力学主体に移った証拠のように「デジカメ」が時代遅れの遺物として出て来たり。なんでも”写らないもの“がいっぱいあるとか。デジタルは霊的存在に反応しない、ということで。

     ここから“夜”に対して電子兵装がまったく意味がない、という事実が類推できます。

     他にも失せ物探しの”ハサミさん“の儀式の禹歩が何故か坂道バリのダンスになったりw やはり大暮センス爆発です。

     とはいえやはり大事なのはキャラクター。仭の全てを救わんとする大きな優しさ、ガオのあらゆる者を護ろうとする責任感。大分度外れてる特徴はこれからのドラマを想像させます。 …そうは言ってもタンポン盗難疑惑を黙って受け入れるのはちょっと自分を捨てすぎだと思いますよ仭くん…。

     早速1巻最後で“夜”の子供とされたメリメリの扱いで二人対立してますが。

    「見ろ アレはどう見ても人間に仇なす”夜“だ 日本人(おまえたち)は なぜ庇う」

  • 天幕のジャードゥーガル 4巻

     全てはボラクチンの計略でした。

     偶然から猛毒「砒霜」…砒素の事ですかね…を手に入れたボラクチン。大カァンオゴタイの命令にもなかなか従わないトルイ家の力を削ぐためトルイを毒殺、残されたソルコクタニ・ベキは…。

    「大カトゥンはドレゲネ様の身をあなた様へお預けしてもよいと仰せです」

     暗殺の首謀者疑惑がかけられているドレゲネの息子グユクに声がかかります。

    「グユク様にはソルコクタニ様と結婚していただきます」

     息子グユクにソルコクタニを娶らせる事で完全にトルイ家を大カァンの下風に立たせる、という事か。 どうでもいいですが夫婦間の年齢差凄そうですねw 権力の為には小さな事なのか。そもボラクチンがチンギス・ハンの后だったのですからオゴタイとは親と子くらい離れているはずですし…。

     いきがかり上話を聞いてしまったファーティマとシラ。

    「どうかドレゲネ様をお救いください お願いします!」

     ファーティマからすればドレゲネが助かればOKなのでグユクが承諾すれば解決です。問題は何もかもボラクチンの掌の上だった事と…グユクが大分臆病者…というか鬱病なんじゃないか、という事ですね。

     ソルコクタニへの使者に名乗りを上げるファーティマ。

    「私が会いに行ったらどんな顔をなさるのかしら?さすがに怒る?私を責める?」

     しかしソルコクタニの反応は薄く。

    「大カトゥンはソルコクタニ様と大カァンのご長男グユク様とのご結婚を…」

    「大分カトゥンのご意向に従います」

    「え…」

     あのソルコクタニが諦めている?

    「私から全てを奪ったあなたが その傲慢なあなたが 『大切な人を失って絶望した』っていうの!?」

     ファーティマにとっては願ったり叶ったりの状況のはずですが、そんな覇気のない彼女を見たくなかったのでしょうか…。

    「もうあなたを守る人はいません 考えるのをやめて屈するならご勝手に でも私は考え続けますから」

     捨て台詞を残して去るファーティマ。

     しかしその後の廷臣たちが集まる会合。グユクとソルコクタニの再婚を正式に発表する場。

    「そのお話 進める必要はありません」

     会合の場に乗り込むソルコクタニ!

    「申しわけございません大カァン大カトゥン この結婚やはりお断りさせていただきます」

     オゴタイ家とトルイ家は既に固い絆で結ばれている、オゴタイ家を支える為にトルイ家のまだ若い者たちを育てなくてはならない…。

     トルイ家は呑まれはしない、という決意表明。ファーティマの言葉に動かされたか。

    『ねえトルイ 私初めて失うことを知ったわ あの子もそうだったのかしら?』

     モンゴル中枢から少し距離を取ることになるソルコクタニですが、ファーティマたちに情報を残して行きました。 ドレゲネはオゴタイの側近イルケ将軍のところにいる、と。

     正面からグユクとカダクがイルケに直談判に向かう間にファーティマとシラがドレゲネを探しに紛れ込む…果たしてドレゲネの天幕を見つけるファーティマ。

    「私…あなたを裏切ってしまった」

     ドレゲネに「原論」を見せる。

    「あなたは守ってくださった 私の一番大切な想いを…いえ私たちの想いを」

     この時点でファーティマに何もお咎めがないのはファーティマ…シタラの正体をボラクチンには話していない、ということ。最後の一線を守り通した証拠ですね。

     ボラクチンはドレゲネと同族でチンギス・カンに嫁いだクランに仕えていた、という話でドレゲネを絆したようでした。クランの無念を晴らす為に言う通りにしろ、と。

     …あぁ、「なんでドレゲネがボラクチンに従ったのか」の謎が解けました。

    「ドレゲネ 邪魔するよ」

     その場に突然現れるオゴタイ!

     大カァンはドレゲネに息子グユクの領地で暮らせ、と勧めます。

    「そうしてくれたらこれ以上は何も言わない 君には幸せになってほしいんだ」

     これでドレゲネとソルコクタニがモンゴルの政治の中枢から消え、オゴタイとボラクチンは何の憂いもなく権力を振るう事ができるようになります。

     オゴタイ政権が盤石になる現場に居合わせてしまったファーティマ。

     さらにオゴタイはファーティマに声をかけます。

    「俺とひとつ勝負しないか?」

     自分はモンゴルをチンギスやトルイとはちがうやり方で豊かにしていく。ファーティマやドレゲネが幸せになれるように。

    「お前だって故郷や家族を失ってきたんだろう さっきのお前の目…あの日のドレゲネとよく似てたもの その目で俺のやることを見ていなさい お前たちがここで幸せになったら俺の勝ちだ」

     まさに王者がすべき戦い。オゴタイの見ているものと器が他とは違う事の証左です。

     しかし、戻ってきたファーティマにドレゲネは言います。 グユクのところへは行かない、と。

    「だって…このままじゃあいつの言いなりだもの そんなの…悔しい ファーティマ もう一度…私と戦ってくれる…?」

    「…私 ちっとも賢くありませんよ?」

     手をつなぐ二人。

    「この国を…私たちから全てを奪ったモンゴルを…『良かったこと』なんかにさせるものですか」

     二人はなんと政敵…ボラクチンの元に庇護を求めます。裏の裏まで知っている腹心…場合によっては汚れ仕事まで引き受ける手下として。

     ペルシアからの使節がオゴタイの元に朝貢し、ペルシアにモンゴルの総督府が置かれる事になった頃、ファーティマがまた策を張り巡らせ始めます。 

     ボラクチンの側仕えの奴隷の少女が「砒霜を作る現場を見た」という情報をつかみ、またその少女の一族…オイラト族を圧迫するために宮廷がオイラトの娘たちを宮廷に召し上げてしまうつもりだ、という噂を利用して。

    「トルイを毒殺したのは大カトゥンである」

     …という噂をトルイ家と関係の深いオイラト族を宮廷が根絶やしにしようとしている、という噂と組み合わせて真実味を与えて広める…策士だ。

     ボラクチンからファーティマがこの噂を流した当人だろう、と疑われると

    「…それでは 私を信じていただくために この噂を流した犯人を捕らえるよう私にお命じください」

     …最終的にあの奴隷の子を突き出すつもりだな…。

     見えない戦いが展開していきます。ソルコクタニも一旦舞台を離れる感じですが、また戻ってくるのでしょうか。

     ファーティマがオゴタイと星の話をしたとき、天動説の説明をしたファーティマに対し、オゴタイは原始的ながらも地動説を出しました。

     ファーティマは書物に書いてあることが証明された事実で

    「それが真理です それ以外はまやかしです!」

     …と激しく抵抗します。 

     この場面、最初の頃のシタラなら頭ごなしに否定せず、地動説の可能性を考えたと思うんです。 ソルコクタニの時と同じく、モンゴルに対するバイアスがかなりかかっているんじゃないでしょうか? 

     彼女ほどの才女をしても偏見から自由になるのは難しい…これがファーティマの瑕疵になるのではないでしょうか。

  • The JOJOLands 4巻

    「理不尽」もしくは「不条理」。かつてドラゴナとジョディオの兄弟にふりかかったものはまさにそういったものでした。イジメにあっていたドラゴナをスタンド能力で助けたはずが回り回って父母が離婚することに…。

    「不条理は『おまえはちっぽけなカス野郎だぜ!』といつフザけた悪魔のささやきと共に 決して自分には責任がないのに最も重要な出来事として襲ってくる でもそこには不条理の為に破壊される心がある 弟のジョディオはひと言も発しなかったが『その事が許せない』」

     ジョディオの上昇志向の元はここなのでしょうね。どんな不条理にも負けない存在になりたい…。

     チャーミング・マンを仲間に加え、校長に「溶岩」の事を説明するジョディオたち。

    「良し(グッド)! この『溶岩』はカネになるわ というよりカネの流れの『システム』になる」

     チャーミング・マンの弟が消えた…そして露伴先生が「溶岩」を見つけた「フアラライ山」。 そこにはもっと大きな「溶岩」の塊もあるかも…。

    「山ごと全部頂こう! この『溶岩』でね…『権利』という概念がある この『溶岩』をその『権利』に近づけよう」

     …すごいなこの人。スタンドに関する知識があるとはいえ、「溶岩」のシステムを短時間で推測し活用しようとしている。頭もいいし胆力、判断力も高い。 …関係ないけどこの人もスタンド持ってたりするんですかね?

     ドラゴナ、ウサギ、チャーミング・マンの3人が向かったのは「土地登記所」。土地の譲渡証書…DEEDの原本が保管されている所。

    「DEEDの原本は近づいて『溶岩』に触れさせる その『土地』はどうなるか?…だよ」

     土地の所有者はインフラ整備会社HOWLER。その所有地を全て頂く!

    「中途半端に残すのは駄目だよ これは社会に繋がっているシステムなんだからね こいつらのものは全部奪う! 砂つぶ一個残さず頂くんだ 価値は500億ドル」

     スムース・オペレイターズで身分証明書を偽造、チャーミング・マンのスタンド「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」で顔を変え、THE MATTEKUDASAIで監視カメラをいじくる…。極力証拠を残さないように立ち回る。

     DEED原本に首尾よく「溶岩」を触れさせ退散する3人。

    「『溶岩』!振動するみたいに…動いたわ…反応よ!」

     しかし逃げる途中でウサギが昏倒!

    「息が…息が ガボッ 助けて… 出来ない…ガッ」

     まさか何者かのスタンド攻撃? 自分たちが土地登記所に行くと決めたのはついさっき…ありえない!

    「これは『肺水腫』ってやつで肺に水が溜まっている 原因の可能性が高いのは薬物中毒! こいつジャンキーだ」

     病気なのか攻撃か?

     呼吸の確保の為にTHE MATTEKUDASAIで作り出したストローを胸に刺すウサギ。

    「体内のこの辺りに敵のスタンドがいる!小さく攻撃していた 見えたんだよォォォーー」

     パコとジョディオも合流し、車でその場を離れる。

    「スタンドのタイプは『自動追跡』だ! …それならありえる」

     地雷のように紙の原本に既に仕掛けられていて「土地」を調べようとする者を無差別自動的に攻撃する…遠隔操作型スタンド!

     チャーミング・マンが砂のようなスタンドをストローからウサギの体内へ。

    「君のその『ストロー』自分で自分の肺に突き刺して空気を確保した 他人の助けを借りずにな なかなかやるなぁ クズ野郎にしては根性が入ってると思ってね そうだろ 孤独に立ち向かうヤツってのは好きだぜ」

     ウサギの体内で暴れる小さなスタンドを引き摺り出そうとするチャーミング・マン。

    「まさかその眼は〜!? チャーミング・マン!?」

     「ラヴァーズ」みたいに体内で暴れるだけではなく触れるだけで病気になるのか!? 更にドラゴナにも同じ症状が…!

    「兄さん!聞こえるかッ!オレだッ!ジョディオだッ!」

     スムース・オペレイターズで自身の体内を探させ、位置を特定しようとする。

    「合図をオレにくれ…ドラゴナ 見つけて捕まえたら何か合図…してくれ に 兄さん」

     ジョディオの手を握り返すドラゴナ…合図!

    「『ノーヴェンバー・レイン』 行け」

      一滴だけの雨。ドラゴナの口から侵入し、スムース・オペレイターズに喉まで引きずり出されたスタンドを…貫く!

     ドラゴナは助かりましたがウサギのは脳に向かう動脈の中で見失った…追跡は不可能。

    「パコ 向かう場所は病院だ」

     MRIで病巣を特定すれば、そこがスタンドの居場所。場所さえわかれば「とっ捕まえて引きずり出せる」。

     一方、登記所でDEEDを閲覧する時に付き添っていた職員のお姉さん。この人もスタンド攻撃を受け、病院に運び込まれていました。その父親は下院議員。かねてからHOWLER社の土地の不正を追求していました。

    「これは私への攻撃なんだッ!」

    「HOWLERの土地不正!その調査を遅らせる為のテロ行為だ」

     証拠がない、として土地を差し押さえての強制調査までは踏み切れない状態だったようですが、脅迫のため娘を害された(と思っている)議員はその怒りのあまり差し押さえを執行する書類にサイン…。

     土地がHOWLERから引っ剥がされようとしています。明らかに「溶岩」の効果です。 不条理がこちらに向いて来ていますね。

     ジョディオ達に有利な事ばかりではありません。スタンドの持ち主が病院に向かっています。 引退した捜査官ボビー・ジーンと少女ルル。ルルのスタンド「バグズ・グルーヴ」は自動追跡型。起動した事とやられた事しか分からない。HOWLERの土地に手を出した者を突き止めるため、追手が動き出します…。

     誰かにとって価値ある物の流れを変える…システムに干渉する「溶岩」。「ジョジョリオン」に出てきたスタンド「ミラグロマン」と似ています。あちらは「とにかく金を増やす」という呪いでしたが、「溶岩」の方はコントロールが効くようです。

     こういう目に見えない何かの流れを操る、的な能力は「ジョジョ」にはちょくちょく出てきますね。大体はラスボス的立ち位置に納まり物語の終盤に出てくるのですが、今回最初から出てきました。

     おそらくは「運命」のメタファーであり、これを超克する事が歴代「ジョジョ」に通じるテーマなのでしょう。

     ジョディオ達は運命を超えていく事が出来るのでしょうか?

  • ドッグスレッド 3巻

    「山王神社の坂道ダッシュである 2分以内に社殿にタッチすること 一年生のおぼっちゃま達全員で行け!! 誰か一人でも2分を切れば…全員に水をやる!!」

     狼之神高校陸トレ…なんとまだ一日目w

     壁みたいな斜度の坂を登ると二、三年生が上から邪魔する!

    「オフェンスとディフェンス!! 負けたほうはペナルティだ 先輩だろうが遠慮なくぶちかませ!!」

     源間弟が全体を見て指示を出し、ロウが隙をついて社殿に触れようとしますが…失敗!

     負けたほうはデカいボッコ「鬼ボッコ」かついでスクワット!

     そしてようやくリンクへ。水を得た魚…というか雪の日の犬のように喜んで駆け回るロウw

     しかしロウはただの犬ではありません。スティックでキチンとパックをレシーブ…! ただそこまで。パスは明後日の方へ飛んでいくw

     揉めるロウと源間に割って入る二瓶監督。

    「アイスタイム」

    「いまこの氷に乗っている時間は 親御さんたちと狼之神OBが負担する貸し切り代のおかげである」

    「そして 東北の選手たちは今もまだ氷に乗れていないぞ 氷の時間を無駄にするな」

     震災の影響の抜けない時期です…。立ち直れていない者もたくさんいます。 またそこに思い至れる二瓶監督、指導者として得難い才能をお持ちのようです。

     一対一の実戦型訓練。ロウ対源間。スティック捌きも様になってきたロウ。しかし源間に一発でふっ飛ばされる!

    「やっぱりお前…『軽い』んだよ 『戦士』じゃない『踊り子』なんだ 踊り子のスケーティングが染みついてる」

     しかしロウはその軽さを逆手に取ります。フィギュアのような回転するスケーティングで源間のディフェンスを抜く!

    「なんか今のオレ…美しかった」

     源間兄はこの回転しながら相手を抜く技を「スピナラマ」だと教えます。試合でこれ決めて得点しようものならめちゃくちゃ盛り上がる、と。

     次のメニュー、五対五でも当然決めようとするロウですが…

    「必殺!!スピ…なまらッ」

     …まぁそう簡単に決まりゃしませんw

     更に練習終わりかけ

    「次のメニューは『峠』」

     リンク一往復を一合目として山頂十合目まで全力ダッシュ!

    「マジで?まだやるの?」

     終わりだと思っていたところに強烈なメニューを出されて尻込みする一年生。キレる監督!

    「今この瞬間がインターハイの決勝戦だと思えと言ってますよね? 決勝戦の途中でも疲れたら帰るんですか?」

    「俺は魔法使いだッ お前たちを可憐なお嬢様から棒を持ったゴリラに変身させる魔法使いだ!!」

     名言多いなこのオッサンw

    「一合目 登ります!!」

     ボロボロで走る部員たち。 ようやっとこなした十合目…。

    「十合目 下ります」

    「下ります?」

    「峠は下りないと遭難して死ぬだろうが」

     何うまいこと言ってんだ。

     これを一番で駆け降りるロウ。スケーティングの速さはパワーではなく技術!フィギュアの技術を遺憾なく発揮するロウ!

     水を飲ませてもらう…「ピヨピヨ」がある意味栄誉になっているので監督にねだってピヨピヨして貰うロウ…絵面は完全にギャグです。 

     その途中でロウの母アキコと監督が大学時代同期だった…という話にw

    「清いお付き合いをした」

    「清いとはどこまでの関係ですか?」

    「手をつないだ」

     …ガキですか…。

     帰り道でクマに襲われ、二瓶監督のワゴンぶつけてなんとか追い払ったり…波乱万丈の一日目でした。 …これで一日? イベントありすぎだろ!?

     翌日、朝練に出てきた一年生はロウ含めて9人。

     これで「結構残ったな」とか言ってる辺り、毎年こうして篩にかけてるようですね。

     ロウはオリンピックに出るために狼之神を踏み台にする、とかまた傍若無人な事言ってますw

    「母から教わったこのスケーティング技術で白川朗は日本の高校アイスホッケーに大旋風を巻き起こすのだ!!」

     その後ろから二瓶監督がボッコ持って追いかけて来たりするんですがw

     狼之神も追いかける立場ですが、王者の方も安穏としてはいられません。 

     八戸鮫王高校。震災をまともに喰らった街。ホッケーどころではなかった部員たちもようやく部活動が出来るように。

     主将兜森の家は漁師の網元。

    「10億円の損害だそうです」

     …誘われていた東京の大学チームを辞退して家業を助けたい。 うまくすれば実業団に入ってプロまである道を諦める…おそらくもうアイスホッケーは出来ない。 

     大惨事によって未来まで歪められた者たちが再びリンクに集う。涙をふきながら。

    「震災は言い訳にしね!!全国大会2連覇だ わーんど(俺たち)はそれしかいらねぞ」

    「どうか最高のまま わぁ(俺)のアイスホッケーを終わりにさせでください」

     堕ちた王者と自然の猛威に晒された覇者。 譲れない勝負が迫ります。

     …そんな中で一人ノリが違うロウですがw、ゴチャゴチャ言いつつも仲間になっていくものと思います。 多分それで「フィギュアを諦めた」と思われた妹と確執が深まって…て感じの話になるのかな〜。

     小ネタをいちいち拾ってられないのが惜しい!書いてたら文字数いくらあっても足らないですからw

  • 機動戦士ガンダム ピューリッツァー -アムロ・レイは極光の彼方へ- 3巻

     ベルトーチカ・イルマへのインタビューは続きます。

    「私がアムロ・レイと初めて会ったのは今のあなたとそう変わらない年頃だったわ」

     巨大輸送機アウドムラに複葉機で乗り込んできたお嬢様。その実、コロニー落としで両親を失い、資産家の義父母に引き取られたみなし子。

     全てを失った幼いベルトーチカにとって、新型モビルスーツを駆ってジオンと戦うアムロはまさしく「英雄」。

     その英雄が戦後7年の幽閉生活で変わってしまった姿を見た時、彼女は思う。

    「私が助けるんだって 英雄である彼が戦えないほどに疲れているなら私が元気にしてあげよう 『女』を使ってでも…」

     果たしてアムロは立ち直ります。 カミーユやクワトロが宇宙に戻った後、鬼神の如き活躍を見せ、カラバの勢力拡大、ティターンズを追い詰める決め手となったのでした。

    「だとしても…それは『愛』と呼べる関係なんですか?」

     キッカのツッコミ。おそらくそういう次元の話ではないのですが…。 男としてのアムロと英雄としてのアムロ、どちらも必要だったのでしょうし。

     そしてそんなアムロとベルトーチカが別れた理由。 言葉を超えて要求してくるところがあった。アムロにはその経験があったから。一切の誤解なく分かり合う…ララァ・スンとのニュータイプの繋がり…。

     更に戦いの中、日々増えていく自らに掛かる重圧。ニュータイプだなんだとおだてられても戦争にまむわる悲劇を止めることもできない。 まだ若いベルトーチカには受け止めきれない悩みに二人の距離は開いていった、と。

     さて、以後しばらくアムロは存在が大きくなりすぎ、動向が機密扱いされるようになっていきます。

     …メタ的には「ΖΖ」でアムロに目立った動きがなかった事の理由付けw

     キッカはMS開発方面からこの時期のアムロにアプローチしていくことになります。

     アナハイム・エレクトロニクスから供給を受けたゼータタイプに新型サイコミュシステムを載せて試験運用とか。コードネーム「ホワイト・ユニコーン」とか、「evolve」のエピソードまで拾ってますね。

     そのサイコミュシステムの進化の結実…サイコフレーム。現在の時間軸(UC0095)ではアナハイム内で開発が凍結されてしまっている。

    「ひとつだけ言えることがあるとすれば サイコフレームに関わるのは危険だということだけ 私はもうこりごりなんですよ」

     νガンダムの開発に関わり、その後中枢から外されてしまった人物、オクトバー・サランの言です。

     アクシズショックとかワケのわからん事態を起こした大元なので、そりゃ製造元としては面倒事を起こしたくないし関わり合いたくないだろうなぁ…とは思います。

     しかしどうにも諦めきれない勢力が存在するようで。

    「助手席は空いたままで?」

    「前に乗せた子とは馬が合わなくて でも私のプロジェクトに参加してくれるつもりなら乗せてもいいわよ?」

     ベルトーチカの車に乗ってきたのはボッシュ・ウェラー少尉!

     カラバでアムロと出会い、そのままアムロに従い続け、ロンド・ベルまでついて来てアクシズ押し返しをしようとするアムロに従ったという、もうアムロ信者と言ってもおかしくない!

     状況証拠的にはほぼ確定ですが、「プロジェクト」とは闇に葬られようとしているサイコフレームの実物と実戦データの回収。つまりνガンダム機体の捜索、確保。発起人はルオ商会とピスト財団でしょうか。UCやNTに繋げられますね。

     で、νガンダムを探すということはもちろんアムロの行方を探す事になる訳で、そこにカイ、ベルトーチカ、ボッシュが乗ってきた、と。

     キッカも宇宙へ…月面フォン・ブラウンへ向かいます。アナハイムの本丸。いよいよ陰謀と無関係ではいられなくなるか…?